最近の原発裁判に見る司法の後退

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トルコの原発とヨルダンの「神」         近江屋信広

最近の原発裁判に見る司法の後退                山崎久隆

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トルコの原発とヨルダンの「神」
                                                                                                  近江屋信広

3月、トルコとヨルダンを訪れました。
トルコで、荘厳なイスラーム・モスクを数多く見学し、その間、大統領肝いりの初の原発を見ました。原発には国民の猛反対があり稼働していません。トルコの自然エネ電源は、水力、風力、太陽光、地熱で41%(23年末)に達しており、原発なしで経済社会が回っている状況にあります。

19日、エルドアン大統領の政敵のイスタンブール市長が汚職等の口実で警察に拘束されたと報じられました。学生の抗議行動が起こり、それを鎮圧するため機銃を持った黒ずくめの治安部隊が走っていくのを車中から目撃しました。現地の女性ガイドは、「これで『共和国』と言えるのか。世界に恥ずかしい。私も黙っていません」と怒っていました。

帰国後、彼女に手紙を書きました。「ジーン・シャープ著の『独裁体制から民主主義へ』(権力に対抗するための教科書)を参考に、戦略的・計画的な非暴力闘争を展開し、独裁体制を打倒してください。あわせて原発ゼロの徹底を祈ります」と。

ヨルダンで、モーセの終焉の地とされるネボ山の山頂から、ユダヤ人にとっての「約束の地」エルサレムを眺め、「十戒」に違反するジェノサイドの現場、ガザの方向を確認しました。

日本の弥生時代にあたる2千年以上前、ナバタイ王国の首都だったペトラの遺跡も巡りました。いちばん印象に残ったのは、目はあるが口も手もない「神」の彫像です。「神」は人間の行いをじつと見ているが、口も手も出さない。ナバタイ人の「神」は「全知ではあるが全能ではない」と言い得るものであり、この「神」観念は正しいと思いました。

「人間の行い」と言えば、日本における世界史上最悪の原爆被害と原発事故はどちらも「人災」です。本来、倫理的にも能力的にも不完全な存在である人間が、二度と核をめぐる暴走を生じさせないためには、核兵器を廃絶し原発を廃止するほかありません。

日本は国連において31年連続、核兵器廃絶決議案を提出し採択されてきましたが、核兵器禁止条約には後ろ向きです。政府はこのような矛盾した態度を止め、条約締約国の一員になり、率先して核保有国を説得する活動などに力を尽くすべきです。

また、国内において南海トラフ大地震が予想される中、国会・内閣は、さらなる原発事故を回避するべく、一刻も早く原発ゼロ・自然エネルギー中心への転換を宣言するべきです。

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最近の原発裁判に見る司法の後退
                                                山崎 久隆

1 国の原発推進政策に呼応した司法
震災から14年が経過しようとする今、2025年2月から3月にかけて立て続けに、原発に関連した司法判断が出された。しかしそれは全て、原発推進政策に大転換した国の行政に追従する司法の姿勢を露わにするものだった。問題となる司法判断は次の5つだ。

◎川内原発差止訴訟での鹿児島地裁判決(2月21日)
鹿児島地裁(窪田俊秀裁判⻑)は川内原発の運転差し止めを求めた訴訟で、差し止めを認めない判決を言い渡した。このケースも、裁判所は、新規制基準適合性審査に適合していると原子力規制委員会が判断した場合には、社会的に許容される程度の安全性が確保されていることが推認されるとし、住⺠側が主張した安全対策の不備についても、九州電力が過⼩評価していることはなく、規制委の審査判断が合理性を⽋くとはいえないと結論付けた。

◎伊方原発差止訴訟での広島地裁判決(3月5日)
広島地裁(大浜寿美裁判長)は伊方原発の運転差し止めを求めた訴訟で、差し止めを認めない判決を言い渡した。規制委が定めた規制基準が原発の安全性確保の指針として有効であること、被告四国電力の安全対策が合理的であることを前提にし、伊方原発3号機が原告らの生命・身体・健康等を侵害する具体的な危険性を引き起こすおそれは認められない、として原告の主張を容れなかった。

◎東電元副社長の刑事裁判無罪確定(3月6日)
最高裁判所第二小法廷(岡村和美裁判長)は福島第一原発事故をめぐる刑事責任(業務上過失致死傷の罪で検察審査会により強制的に起訴)について、長期評価は当時の国の関係機関の中で信頼度が低く、行政機関や自治体も全面的には取り入れていなかった。10mを超える津波を予見できなかったとして、裁判官全員一致の意見で上告を退ける決定をし、武黒一郎元副社長と武藤栄元副社長の無罪が確定した。なお、勝俣恒久元会長については昨年10月に死亡したため起訴が取り消されていた。

◎老朽原発差止訴訟での名古屋地裁判決(3月14日)
名古屋地裁(剱持亮裁判長)は、高浜原発1、2号機及び美浜原発3号機の運転期間延長認可処分等の取消等を求めていた事件で、これら老朽原発の規制委による審査に問題はないとし請求を棄却した。

◎伊方原発差止訴訟での松山地裁判決(3月18日)
松山地裁(菊池浩也裁判長)は運転の差し止めを求めた住民の請求を退ける判決を下した。新規制基準に適合していれば安全だという結論ありきの判決。

これらに共通する判断根拠について、どう考えたらいいのだろうか。
まず、最高裁第二小法廷では、いかなる論理で取締役2名は無罪とされたのだろうか。

2 科学的根拠とリスク評価の判断基準の劣化
福島第一原発事故に関連して業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判では、検察側(指定弁護士)と被告側の主張に対して最終的に最高裁は被告人側の主張を支持した。
津波の予見可能性では、検察側は2008年から2009年にかけて政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が公表した「長期評価」に基づき、最大15.7mの津波が福島第一原発を襲う可能性を東電が試算していたと指摘した。

この試算結果は、当時の経営陣に報告されていたことから、経営陣は津波リスクを予見し防止措置を講じる義務があったと主張した。
適切な対策を怠った結果、2011年3月11日の東日本大震災に伴う地震と津波で原発事故を引き起こし、避難中の双葉病院の患者ら44人が死亡するなどの重大な被害が生じた。これらは経営陣の過失によるものであるから業務上過失致死傷罪が成立すると主張した。

一方、被告人側の主張は、まず長期評価の信頼性について、長期評価が科学的根拠の不十分なもので信頼性に欠けるとした。
そのため、この評価に基づいて具体的な対策を講じる義務は東電経営陣にはなく、当時の科学的知見や技術的限界から、15.7mの津波を具体的に予見することは困難であり、したがって結果回避義務も存在せず、過失は成立しないと主張した。

最高裁第二小法廷の判断は、まず長期評価の信頼性と予見可能性に関して、政府の「長期評価」は「信頼度も低く、10mの高さを超える津波が襲来する現実的な可能性を認識させる情報だったとまでは認められない」と判断した。これで、事故の結果回避可能性も否定され、被告人ら経営陣を無罪とした一、二審判決を支持する結論とされた。
科学的根拠の信頼性やリスク評価の判断基準が刑事責任の有無に直結することを示した今回の判決は、今後の原発事故への対応や防災体制全体について禍根を残す後退を意味し、大きな問題である。

3 地震本部の長期評価を無視する判決は何をもたらすか
地震本部による長期評価は、現在も継続して行われている。昨年8月には2024年1月の能登半島地震を受け、作業を早めて「兵庫県沖から新潟県上越沖」までのものを公表した。
ところが最高裁によれば、こうした長期評価には信頼性がなく、これに基づいた対策は何ら必要ないというのだ。ではいったい何のために、日本で最高水準の研究者が集まって議論し、評価書を作り続けているのか。全く無駄だというのか。
もちろん、地震や津波評価の正確性は未だ途上である。どこで、いつ、どれだけの規模の地震や津波が発生するかを当てることなど不可能である。しかし相当の確からしさを持って、地震や津波の規模や時期を、できうる精度で絞り込み、地震、津波防災に資するために多くの予算をかけて行っている事業ではないか。これを無視して防災体制も地震・津波対策も取らない行政(自治体)や企業があり、評価のような地震や津波災害が実際に起きて市民の命が奪われたら、その責任は追及されるべきではないのか。最高裁は「そんなことは必要ない」という。地震・津波防災をも妨害する暴挙だ。
行政機関だけではない。大勢の人命に影響を与える原発についても同様である。

4 各地裁、高裁の差止却下判決に見る行政への迎合
福島第一原発事故のような過酷事故が発生した場合、事業者と国の責任が問われる。
これらの判決は、国(規制委)の審査により安全性が確保されているとの前提に立っており、事故発生時の事業者および国の責任について十分な検討をしていない。
福島第一原発事故の教訓を踏まえれば、事故を起こせば国と事業者に極めて大きな責任が及ぶことは自明であり、それについて触れていないこと自体が、3.11を経た現代において批判に耐える判決とは到底言えない。以下、具体的に指摘する。

(1)事業者(被告)の責任
①原子力損害賠償の無限責任は今も存在する
日本では「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」により、原発事故による損害賠償責任は原則として電力会社(事業者)が無限責任を負うとされている(原賠法第3条)。
これは福島第一原発事故を基本に置いて考えるべきである。過酷事故後の東電の実態を見れば明らかなとおり、実際には事業者が単独で事故の損害を賠償することなど極めて困難(不可能)であり、最終的に税金(公的資金)による救済、すなわち巨額の税金投入が必至の事態になる。福島第一では新たな法律「原子力損害賠償支援機構法」(現在は原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)を定め損害賠償を行うことになった。現在まで賠償や廃炉に、ざっと23兆円の費用がかかると見積もられているものの、これらの費用を東電が全部負担することなど到底不可能である。また他の原発でも同様の事故が発生すれば、電力各社が事故に伴う損害賠償を単独で全て負担できるとは到底考えられず、結局は国民負担となる。

②事業者はリスク認識が決定的に欠如している
事業者は「規制基準に適合している」として、地震・津波・火山リスク評価を審査会合等において国に提出し、または規制庁に対して説明し、これらの対策を十分行っている旨説明している。しかし事業者は自然現象をあまりに過小評価している。例えば福島第一原発事故では「想定外の津波」が原因で過酷事故が発生した。
事業者がリスクを十分に認識せず、コスト優先で安全対策を怠った場合、その責任は極めて重大である。

③被害者への賠償の不確実性
福島第一原発事故では、被害者への賠償が長期化し、多くの被害者が十分な補償を受けられていない。
電力会社が賠償責任を負うとしても、経営が破綻すれば、被害者が適切な賠償を受けることができなくなる可能性が高い。そして東電はいま、実質経営破綻状態である。

(2)国の責任
①規制機関の監督責任
規制委が「基準を満たしている」と判断しても、事故が起こればその責任は国にある。
福島第一原発事故では、国(旧原子力安全・保安院、経済産業省)が事業者の安全対策を適切に監督しなかったことが事故を招いた要因の一つとされている。
最高裁判決(2022年6月17日)でも、「国は東京電力に対し、福島第一原発の防潮堤設置を指示できたのにしなかった」として、一部の責任を認めた。
他の原発でも、国が「基準を満たしている」との判断で再稼働を認めた後に過酷事故が発生すれば、福島と同じ過ちを繰り返すことになる。

②事故後の責任回避の可能性
福島第一原発事故では、税金で事業者の賠償を肩代わりする一方で、刑事、民事共に現在まで、政府関係者の責任が追及されることはなかった。
これらの判決が示すように「規制委の判断が不合理でなければ原発は安全」という考え方では、将来事故が起きた際も国は責任逃れをする可能性が高い。
国が原発の安全性を保証する以上、事故時には、許可した政府関係者は全面的に賠償・補償責任を負うべきである。

(3)責任の所在が不明確なまま原発を運転するリスク
裁判所は、事業者が「原発は安全であり、事故は起こらないように国の規制に沿っている」と主張し、国が「規制基準を満たしているから問題ない」と判断して再稼働を認めたことで、差し止める根拠はないとしているに過ぎない。
その評価や判断が妥当かどうかを再度審理し判断するのが裁判所の役目であるはずが、まったく審理していない。これでは「国の指示通りの事業者には問題がない」と言っているに過ぎない。訴えた意義さえも無駄だと言っているに等しい。
福島第一原発事故が「想定外」の地震・津波で発生したように、どれほど厳格な基準を設けてもリスクをゼロにはできない。そのことを裁判所は認定した上で、そのリスク評価の妥当性を判断しなければ、裁判の意味がないのである。
原発の運転により将来起こり得る甚大な被害と国民負担を「仕方がない」ものとするのか、それとも「そうした危険性はない」と判断するのか、根拠を挙げて判決するべきである。
これらの判決は、1992年の伊方原発差止訴訟の最高裁判決にも抵触すると考える

(参考)伊方原発訴訟最高裁判決(1992年10月29日)
「現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」

(4)人格権・生存権についての問題点
これらの判決では、原告の人格権・生存権に基づく訴えを退けている。しかし、過去の判例と照らし合わせても、人格権・生存権の保護が不十分と言わざるを得ない。

①大飯原発差止福井地裁判決(2014年5月21日・樋口英明裁判長)との乖離
福井地裁樋口裁判長は次のように述べている。
「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。」「具体的危険でありさえすれば万が一の危険性の立証で足りるところに通常の差止訴訟との違いがある。」「この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、その侵害の理由、根拠、侵害者の過失の有無や差止めによって受ける不利益の大きさを問うことなく、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できる。」
加えて、原発は代替性のある発電手段(電気を生み出すための一手段たる経済活動)に過ぎず、他に代替が効かない人格権の侵害とは比較できない(憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきもの)としている。
これに対し、最近の判決は「規制委の判断が不合理でない限り、人格権侵害の危険はない」としているが、これは大飯原発差止判決と乖離する考え方である。原発事故のリスクがある限り、人格権を侵害する可能性があるという判断がより妥当である。

②生存権を否定する判決
高浜原発差止仮処分大津地裁決定(2016年3月9日・山本善彦裁判長)
大津地裁山本裁判長は、原発の運転と生存権(憲法25条)について、地震や津波などの自然災害、及び人為的な事故のリスクを詳細に評価し、住民の生命・身体の安全を脅かす要因となり得ると判断した。決定では、基準地震動を超える地震動が高浜原発を襲う可能性があること、基準地震動以下の地震動によってすら、外部電源や主給水ポンプが破損し、原子炉の冷却ができなくなる可能性があること、使用済み核燃料が堅固な容器で覆われていないことで、住民の生存権を脅かす危険性があると判断した。
また、前述の伊方原発訴訟の最高裁判決との関連では、原発の安全性について、被告である行政側に「判断に不合理な点のないことを相当の根拠・資料に基づき主張・立証する必要」があるとしており、「立証を尽くさない場合」には、「判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべき」と判断した。
これに対し、最近の判決は「生存権に具体的権利性が認められない」としているが、原発事故が起これば住民の生存が脅かされるため、生存権を無視すべきではないのは自明のことだ。これらの判断も大津地裁決定から乖離し、大きく後退している。

5 原発事故の責任を問い続けよう
原発事故は、そうした災害対策をしなかった東電が引き起こした人災であり、損害賠償請求では全ての裁判所が責任を認め、賠償を命じている。
株主代表訴訟でも2022年7月の判決で、今回の刑事裁判で無罪とされた2名を含む4名に、13兆3210億円の賠償を命じている。
民事では全て責任を認めているのに、刑事裁判だけが無罪とされた。その根拠は、判決文を読んでもわからない。
民事では、長期評価を無視して地震・津波対策が行われず、3基の原発をメルトダウンさせたことが事実認定されている。さらに、結果回避義務(原子炉を破壊されないよう建屋を水密化するなどすること)も果たしていない。これらは原発事故を引き起こした要因になると認定している。
ところが最高裁第二小法廷は、長期評価を取り入れて原発事故を防ぐ義務もないし、結果回避義務もないとしてしまった。それでは、現在行われている特定重大事故等対処施設の建設も意味がないことになるではないか。
この判決と対照的な、東電株主代表訴訟の朝倉判決では、東電の不作為について、以下のような認定をしている。
『原子力発電所において、一たび炉心損傷ないし炉心溶融に至り、周辺環境に大量の放射性物質を拡散させる過酷事故が発生すると、当該原子力発電所の従業員、周辺住民等の生命及び身体に重大な危害を及ぼし、放射性物質により周辺環境を汚染することはもとより、国土の広範な地域及び国民全体に対しても、その生命、身体及び財産上の甚大な被害を及ぼし、地域の社会的・経済的コミュニティの崩壊ないし喪失を生じさせ、ひいては我が国そのものの崩壊にもつながりかねないから、原子力発電所を設置、運転する原子力事業者には、最新の科学的、専門技術的知見に基づいて、過酷事故を万が一にも防止すべき社会的ないし公益的義務がある。(中略)
東京電力の取締役であった被告らが、最新の科学的、専門技術的知見に基づく予見対象津波により福島第一原発の安全性が損なわれ、これにより過酷事故が発生するおそれがあることを認識し、又は認識し得た場合において、当該過酷事故を防止するために必要な措置を講ずるよう指示等をしなかったときには、東京電力に対し、取締役としての善管注意義務に違反する任務懈怠があったことになる。』
(民事第8部・朝倉佳秀裁判長、丹下将克裁判官、川村久美子裁判官)
これこそが正しい司法判断である。これからも国と電力会社の責任を追及し続けよう。(脱原発・東電株主運動ニュース第335号より転載)

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政府のエネルギー基本計画に照明、空調の省エネ計画を織り込むべき

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前号でもお知らせしましたが、第7次エネルギー基本計画のパブリックコメントには、かつてない41,421件(2月17日発表)もの意見が集まり、多くの市民が「原発回帰」への政府の計画に異議を唱えました。しかし、エネルギー基本計画(案)から一字一句変えることなく、翌18日閣議決定してしまいました。省エネへの言及もないこのエネルギー基本計画を認めることはできません。これからも声をあげ続けましょう。

政府のエネルギー基本計画に照明、空調の省エネ計画を織り込むべき

越智 文雄

『達磨さんが転んだ』の悪夢
〜私の転倒体験が反原発によせる想い〜

小宮 武夫
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政府のエネルギー基本計画に照明、空調の省エネ計画を織り込むべ

越智 文雄

夢のエネルギー原子力
2024年12月17日政府はエネルギー基本計画改訂案を発表した。90ページに及ぶ大冊だが、ここに一貫しているのは原子力再稼働の推進である。

その根拠は生成AIの進展によるデータセンターの増加と半導体産業の工場需要だと言う。本連載では時論、自論と言いながら好きなことを放言させてもらっているが、今回は私の専門であるエネルギーと電気料金の分野の話であるので、参考にしていただきたい。

■根拠を示さない無責任さ

このエネルギー基本計画案では、生成AIを使う人が増えるのでデータセンターが増設される、膨大な電力が使われる、だから原子力発電所が必要、というロジックで訴えている。

日本中のパソコンの台数が100倍になるわけでもなく、働き方改革の中で寝ないで、生成AIを使う人もいないだろう。既に巨額なIT投資がなされて久しく、データセンターは必要十分な設置がされている。今後全国で何箇所にデータセンターが作られて、それが何百万キロワットになるのか数字の根拠が示されていない。半導体工場に至っては北九州と千歳に莫大な政府投資を行っているが、この工場に必要な電力の数字も記載されていない。

さすがにこれ以上、雨後の筍のような立地などあるはずもなく、北九州は稼働しているのだからその契約電力を参考にすれば良い。休止中の原子力発電所は11発電所22基。1基100万キロワットとしてざっくり2000万キロワット。さて、需要の想定をどこまで積み上げることができるのか。

■LED化による膨大な省エネ

政府にとって全く予想もしていなかった方向から、原子力再稼働の需要拡大説が覆ることになりそうである。

本誌で何度も警告しているように、昨年(2023年編集注)11月のスイス・ジュネーブで開催された「水銀に関する水俣条約」において2027年の蛍光管製造禁止が決定した。

この背景には、LED原料のガリウムを98%保有する中国の資源戦略があったようだが、共同議長国である日本も政府、自治体、民間のすべての照明があと3年でLED化しなくてはならなくなった。

昨年来、経産省情報産業課や環境省水銀対策推進室、経産省化学物質管理課に問い合わせているが、この条約締結時において日本の照明需給調査はされていなかった。いまだにLED化が必要な照明の総量調査も行われず、そもそもこの製造終了の決定が民間に発表もされていない。わざと発表しないでいるのか。

あかりみらいの本業である自治体の一括完全LED化事業では、1780都道府県市町村で数億本の蛍光管をLED化する必要があると想定している。仮に40ワットの蛍光管3億本を11ワットのLED蛍光管タイプに交換したならば、安定器の消費電力も含めて、およそ1000万㌗の消費電力が削減される。火力発電所もしくは原子力発電所10基分が不用になる。

これが3億本でなくて、民間や政府施設も含めて10億本だったならばどういう計算になるだろうか。

2011年の東日本大震災の福島原発爆発の時に、当時の菅総理大臣が「日本の照明を全てLEDにすることで原子力がなくても日本経済を復活することができる」と経産省と環境省と日本照明工業会で「あかり未来計画」を立案し閣議決定している。今、水銀公害を規制する国際条約という外圧でこの「あかり未来計画」という国策が実現しようとしている。

この国策の名前をいただき12年間実行してきているのが株式会社あかりみらい。皆様のLED化の試算見積りから資材調達、工事までお手伝いするのでご遠慮なくお問い合わせを。

さて、この千万㌗の桁の省エネ実現が間違いない照明の2027年問題をエネルギー基本計画に織り込むことで、政府カーボンニュートラル計画のLED化目標を3年間前倒しし、政府のLEDサプライチェーン対策や財政出動、電気工事士の人手不足問題、アスベスト工事規制の対策などを真正面から解決していこうというアイデアをある国会議員が助言してくれた。

この議員室で行われた勉強会には、経産省、環境省、内閣府から6人の官僚が呼ばれて照明の2027年問題の情報交換を行った。当時の斎藤健経産大臣と高市早苗経済安保大臣に提言書を渡し、高市大臣から引き継いだ城内実大臣と地方創生を担う伊東良孝大臣にもレクチャーさせていただいた。

国会の場でも、12月の環境委員会で川田龍平議員から照明の2027年問題への質問があり、年明けの委員会でも質疑される予定である。政府は認識している。誰も省エネの推進に反対はしない。これをエネルギー基本政策に織り込めば良いのである。

■空調分野での業界利権

また、こちらも業界の利権陰謀だが、現在空調に使われている代替フロンガスも、世界では最新の自然冷媒ガスが採用されるようになって、クーラーの使用電力も30%から50 %の省エネが可能になっている。

日本では大手空調メーカーが一世代前の代替フロンガスを大量に在庫したことによって、在庫のガスがなくなるまではと、この省エネ型冷媒ガスへの転換を妨害しているという。ここ数年の猛暑でへたってしまったクーラーを交換するにも予算がなく、アスベスト工事の規制が天井工事を困難にしている。

この解決策として室外機の冷媒ガスを新世代のグリーン冷媒に変えることで、大きな投資もなく、冷房能力が回復しクーラーの寿命も伸びる。LEDと同じで、大幅な省エネによる電気料金削減分で分割支払いできるというのだから今すぐ取り掛かれる省エネ投資である。

これをやろうとすると、某社から「このガスは火が出る、このガスに入れ替えるならば、クーラー本体の補修はしない」と妨害が入るので日本では空調分野の革命的省エネが封じられているという。ガラパゴス規格である「丸ごと交換」を進めるために「蛍光管タイプのLEDは火が出る」というデマを消防庁を使って全国に流した某業界と同じデマ工作である。それでもこれだけ高騰した電気料金の対策としてデマを信じず事実を確認し、実行する企業や自治体が多く出てきている。

2027年には空調の省エネ基準改正で大きな削減が義務付けられているが、これだけでも30%程度のクーラーの消費電力が減っていく。日本中のクーラーの省エネ性能がさらに進み、冷媒ガスの交換を行うことで3割近く電気使用量が減ったならば、一体何千万㌗の電源が不要になるか、なぜ資源エネルギー庁は試算しようとしないのか。

この照明と空調の大改革がもたらす省エネ量はAIやデータセンターの需要増どころではないだろう。都合の悪いところには目をつぶり、根拠のない不安を煽ることで自分たちの政策を作ろうとしている。いつか見た景色である。

元電力会社社員で電気事業連合会の副部長を経験し、全国の自治体に電気料金削減と脱炭素のアドバイスをしている立場として、今回のエネルギー爆増説はあまりにも国民を愚弄したレベルの低いものだと考える。

エネルギー基本計画に現実的な省エネの計画をしっかり位置づけ、照明分野と空調分野の原子力発電所数10基分または火力発電所数10基分にもなるだろう。現実的な可能性を織り込むべきだと主張したい。

※本稿終了間際の12月24日、政府は2027年蛍光管製造禁止の政令を閣議決定した。やはりエネルギー基本計画案を発表するまで控えていたとしか思えない。

(越智文雄氏は危機管理アドバイザー。月刊「クォリティ」2月号から転載)

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『達磨さんが転んだ』の悪夢
〜私の転倒体験が反原発によせる想い〜

小宮 武夫

 昨年の年末に私は転んで骨盤を骨折してしまった。大人気ない話だが、入院中に転ぶという言葉から、子どもの頃遊んだ『達磨さんが転んだ』を何度も思い出した。ジャンケンで負けた子(鬼)が手で目を隠し『達磨さんが転んだ』と叫んでいる内に他の子たちが鬼に近づき頭を叩くというゲームで、動いたのが鬼に見つかれば、鬼に捉えられ、見つからなければゲームを続けられ、鬼に捉えられた仲間を助けることもできる。

大人の世界でも、原発や核兵器でたくさん転んでいるのに、見事に隠して、日常は嘘のように微動だにしない。『達磨さん転んだ』はその代わり周囲の景色に危機をはらみ、私たちも目隠しをしている内にその闇が突然牙をむき、コーンと頭を叩かれこの世から消されてしまう。

例えば「トモダチ作戦」で海上から私たちを援助し、死の灰を浴びてしまった米艦隊の乗組員たち。また、日本のポンプ車では届かなかった原子炉建屋の上部からの放水を間一髪で、航路を変更して日本に世界最長のポンプ車を提供して、福島原発の連鎖壊滅、ひいては東京にまで及ぶ放射能の侵襲を救ってくれた中国の三一重工の人々。こうした決死の動きをまるで「達磨さんゲーム」のように人々に目をつぶらせて「何も変わらない。動かない」と闇に葬るのは、もはやこの国が正常な人間としての感性を失っていると疑っても仕方がないだろう。

かつての大量生産、大量消費のシステムが行き詰まり、作れば作るほどコストが下がり、付加価値が増える情報を商品とする社会が世界を支配するようになった。SNSやゲーム、エンターテイメント、仮想空間。人々は生の人間との接触よりもITを使ってAIが導く自分好みの世界に閉じこもるようになった。こうして富はITシステムの根幹を握る一握りの富裕層に集められる。情報化がもたらす貧困は国境を越え人々を喰いつくすのだ。それでいいのか。

人間性を失わせるグローバルな惨状に反抗するのは私たちだ。かつて「囲い込み運動」で、故郷を追われ裸で都市に逃れた農民たちの末裔だ。労働を切り売りする以外に生きる術がない時に耐えて、今ここに太陽光をエネルギーに自力で変換し生産する力を獲得したのだ。自分の日常を自立させる手立てを得ることができる時代になった。近代科学の頂点と目されていた核や原発は実は大量生産時代の愚かしい遺物であったのだ。自立した市民は、自ら生産する自然エネルギーで市民として生活を建て直す。余剰が生じれば地方の農民と連携し食料の時給を目指して農業をIT化で再生していく。その原動力は「発電市民」であり、「IT農業専門家」たる新企業家だ。彼らこそ旧産業革命で奪われた人間性回復の主体となり、都市から地方へ人々を呼び戻す。心優しいIT共同体を成立させるのだ。落馬しながらキリスト教を掴んだパウロのように「反原発」運動に夢を寄せたい。(了)

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第7次エネルギー基本計画は「原発推進宣言文」

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先日の新聞各紙が報じた「第7次エネルギー基本計画」に愕然とした方も多かったと思います。前々から不穏な空気は報じられていましたが、ここまでの文言になるとは、正直思っていませんでした。
官民あげての「電気が足りなくなる」宣伝も始められていますので、山崎久隆さんの記事を転載させていただきます。原稿が書かれたのは1ヶ月以上前ですが、内容は第7次エネルギー基本計画を察知したものです。

第7次エネルギー基本計画は「原発推進宣言文」   山崎 久隆

「勝俣恒久さんは残念な人」              木村 結

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第7次エネルギー基本計画は「原発推進宣言文」だ

第7次エネルギー基本計画、通称「エネ基」の改定作業が経産省で進行中だ。
10月27日の総選挙で敗北した石破首相はエネ基素案を「今年中に取りまとめるよう」指示したと報じられた。大敗した自公政権に対して、議席数を大幅に増やした国民民主党の声が強まり、原子力利活用の拡大という悪夢の政策が拡大する可能性も出てきた。
第7次エネ基の問題は、原子力の扱いと再生可能エネルギーの位置づけである。
第4次(2013年)から第6次(2021年)のエネ基では、震災の教訓から「可能な限り原発依存度を低減する」としてきた。ところが昨年の岸田政権において「脱炭素電源法」(GX電源法)が成立した際、「原子力の活用」という方針の大転換が行われた。

GX電源法は、具体的には主に次の5つの法令改正により成り立っている。原子力基本法、電気事業法、再エネ特措法、原子炉等規制法、再処理法である。

これらの法令の改正を簡単にまとめると次の通り。
1. 原子力基本法の改正では、原子力利用の目的、基本方針で「地球温暖化の防止」と「事故を防止できなかったことを真摯に反省」との言葉が追加され、安定供給と脱炭素を口実に原発を活用することなどを「国の責務」として規定した。国策としての原子力推進が前面に押し出された。

2.法定期限を40年と定めたのは炉規法だが、例外的に20年の延長運転を許可する権限は炉規法から電気事業法に移された。これは許可をする機関が原子力規制委員会から、推進の経産省に移ることになり、「運転期間は40年」「延長期間は20年」としつつも、経産大臣が許可すれば、事業者が予見しがたい事由(震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更や司法判断など)で停止していた期間を運転期間から排除することが認められ、実質的に60年超の運転が可能になった。

3.既存の原発は運転開始から40年以内に延長が認められなければ廃炉になる制限がなくなり、改正炉規法では、①運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに「高経年化技術評価」を行い、②その結果に基づき長期施設管理計画を作成し、規制委の認可を受けることで60年以上の長期間運転が可能になった。

第7次エネ基を決める前に、エネ基で定めるべき原子力の利活用方針を法律で規定している以上、岸田政権の原発政策の大転換と同様に、石破政権のエネ基においても原子力の利活用推進に大転換する。
今回のエネ基では、何を根拠として原発の比率や発電量を決めるのかが問題になる。

デジタル化が電力需要を爆上がりさせる?
原発推進の理由について、ある人の言葉が経産省の主張を代弁している。その人物とは、河野太郎氏。
もともと自民党内での脱原発派の最左翼と目され、特に核燃料サイクル政策を批判して、自身のブログでも「六ヶ所村の再処理工場の稼働に反対する」と主張していた。ところが今回、総裁選挙に立候補するにあたり「脱原発」の持論を撤回し、超党派の国会議員有志で作る「原発ゼロの会」を立ち上げた立場からも大転換して、「リプレース(建て替え)も選択肢」と語った。変わり身の早さというか、みっともないというか、あまりの変節ぶりにあきれるばかりだ。

その理由らしきものが記者会見の場で明らかにされたのだが、それが「今後予想される電力需要の急騰に対し既存の原発の再稼働でも足りない」ということらしい。
いかにも経産省による「レクチャー」に「説得」された感が大きいのだが、原発推進側の都合の良い『未来予想』に惑わされるのでは、河野太郎のレベルもその程度かと、残念に思う。
もっとも、デジタル担当大臣としてマイナンバーカードの押しつけ、事実上の強制を推進している姿を見ても、今回の変節は予想できたと思う。
では、本当にそうなるのか。具体的に検証しよう。

電力需要は現状から「激増」する?
データセンターや生成人工知能(AI)などの新たな電力需要が増えていて、「再稼働しても足りない可能性がある」というのは本当だろうか。
電力中央研究所(電中研)による将来予測は、意外な値だ。
将来の電力需要については「基礎的需要について省エネと電化を考慮した結果、2050年度では最小値8290億から最大値1兆750億kWh」とする。なお、中位推計では9230億kWhである(以下、kWhを省略)。現在の値はというと、同じ電中研データでは2010年の最終消費電力量が1兆1237億だったのが、2020年の最終消費電力量は9870億で、約12%も減少している。年率で約1.2%ずつ減少しているのである。

2050年の最小値は8290億。今後40年で1580億減る。年間53億、率で0.6%ずつ減少する。では最大値はどうだろうか。1兆750億だと880億増だが、年間約30億、率にして0.3%程度だ。
報道では、2021年からの比較で最大値が3割以上増加するとし、次のような記事を出したメディアもある。

「膨大なデータ計算が必要な生成AI(人工知能)の利用拡大で電力の消費量が急増する。データの計算や保存を行うデータセンターを新設する企業が相次ぎ、日本では2050年に4割弱増えるとの予測がある。技術革新に伴い、想定以上に電力消費が進む。脱炭素化を進める政府のエネルギー戦略に影響を与える可能性もある。」(日経新聞4月11日)
しかし、最新では2023年度の消費電力量は8020億kWhである。これは前年度比2%減、最近10年間、最小値を更新している。

電中研は原発を推進する電力会社系の研究機関で、平岩芳朗理事長は元中部電力副社長、評議員には東電や原電の社長も名を連ねる。その研究機関の2050年の電力需要見通しは、最小値では「激増」どころか、減少している。
仮に増えるとしても、データセンターだ、AIだからといって、1年で3割も増加するわけではない。

それでも、猛暑に厳冬と、電力の消費量のピークが増大するから電力が逼迫するということだろうか。
しかし現実にはこれも、年々低下し続けている。今年の夏は日本の気温は観測史上最高を記録した。しかし電力消費量は大幅に減っているのである。
日本は少子高齢化が進むと同時に、人口減少時代に入っている。国の人口推計値は2070年に8024万人としている。

さらに、電気料金は高止まりしているため、省エネの努力が一般家庭だけでなく産業規模でも進んでいる。

日経新聞系の「日経クロステック」は、日本の電力エネルギー構造について次のように書いている。
「日本では2010年をピークに年間消費電力がほぼ右肩下がりに低減しているからだ。ちょうどそのころから、地球温暖化の抑制に向けた温暖化ガス削減の世界的取り組みが盛り上がって、LEDや高効率モーター、そして太陽光発電など各種の省エネルギー技術の開発や実用化が進んだ。また、2011年3月には東日本大震災が発生した。これらによって、日本におけるエネルギー消費の“体質”が変わったと考えられる。その意味で2010年は大きな分水嶺になった。(中略)2010年と2022年の日本の年間消費電力を結ぶとその傾きは年率1.2%減。仮にこれが2050年まで続くとすると、電中研がAIデータセンターや水素生産などに必要になる最大電力量の年率増加率1.0%を相殺して、まだお釣りが出る。」
このような視点は、原発推進派には全く理解されていないようだ。

問題はどこにあるのか?
問題は、原発などの大規模な発電所が不足しているのではなく、電力システムの問題だ。
特に、再生可能エネルギーの大きな供給力を有するのは北海道や九州で、消費地から遠い。従って、これらの電力を広域的に融通するシステムを構築すれば有効活用ができる。また、日中に発電する太陽光については、蓄電システム(バッテリーだけではない。物理的な蓄電システムもある)を構築すれば夜間も使える。

電力のリスクは、発電所不足にあるのではない。台風や地震に脆弱な広域に張り巡らされた送電システムや、老朽化した火力、大規模発電所に依存している供給システムにある。
これを解決するには、小規模で環境負荷の少ない発電所と、蓄電システムの接続、コンパクトな送電網の構築が喫緊の課題だ。

日本のように、地震や台風災害の多発する国では、大規模な発電所が停止するリスクが、そのまま大規模停電の引き金になる。北海道で最大震度7の北海道胆振東部地震が起こったのは、2018年9月6日3時7分。この地震にともない、北海道エリアにおいて、3時25分、日本で初めてとなる、エリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生した。

台風被害では、2019年9月9日に千葉で大規模なブラックアウトが発生した。
台風15号は千葉県房総で鉄塔2基、多数の電柱をなぎ倒し、約100万戸の停電が発生。千葉県内では16日になっても6万戸が停電したまま。東電は他電力会社の応援を含め1万6千人で復旧作業を行ったが、完全復旧に3週間を要している。

こうした自然災害に、原発も極めて脆弱である。
原発そのものには重大な損害がなくても、原子炉建屋の基礎版付近で120ガル程度の揺れが観測されれば自動停止する。安全のため自動停止する設計になっているので、安全上止めなければならない。その後点検して安全確認後に運転開始できても、1週間程度は止まっている。地震などの被害で広域停電が発生し、電力が必要な時期に原発は動かない。南海トラフの地震などが発生すれば、西日本全域の原発は止まると考えられる。浜岡や伊方は甚大な被害を受ける危険性が高いし、福井県や九州の原発も止まる上、危険にさらされるだろう。

巨額の原子力予算は、電力システムの強靱化や自然災害対策に使うべきだ。広域的な電力送電システムの構築よりも、地域で電気の地産地消に取り組むことも重要だ。原発や再処理工場など、電気を生むより核のごみを生み出すものこそ、廃止するべきだ。

私たちはどう生きるか
電中研を含めて多くの研究機関やシンクタンクの推計には、最小値と最大値で大きな開きがある場合が多い、これは、省エネの進展や再エネの普及、電気料金の推移、環境問題への取り組みやエネルギー価格の動向など、多くの変数があるからだが、その中では、私たちの「意思」と産業の「思惑」が大きい。

消費者が環境負荷の大きい原発や火力エネルギーを忌避する「意思」を示し、これに応えてエネルギー産業が省エネや再エネへの投資を重視すれば、自ずと低位推計に近い値になっていく。もっと少なくなる可能性だってあろう。これは、意思がいかに大きな影響を与えるかの証左である。

こうした推計値、特に高位推計を元にした報道を鵜呑みにして「電力需要爆上がり」などと信じてしまうことが最も大きな問題だ。
私たちはどう生きるか、それが今問われている。
(脱原発・東電株主運動ニュース331号より転載)

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「勝俣恒久さんは「残念な人」                         木村 結

勝俣さんの死は、冷静に受け止めています。勝俣さんの罪については、書きたいことは山のようにありますが、今回は記憶に残ることを書きたいと思います。

勝俣さんは、2011年6月、原発事故直後の東電株主総会の議長でした。私たちは準備していた数本の提案を急遽引っ込め、「原発廃炉」のたった一つの提案を提出しました。過酷事故を起こした東電も、本気で原発について議論をするだろうと、いえ、しなければならない事態であることをわからせなければ、と考えたからでした。ご記憶の方も多いと思いますが、史上最多の9258人もの株主が詰めかけ、東京プリンスのボールルームから溢れ出た株主は数箇所の部屋に分かれてモニターで視聴しました

脱原発株主の提案議案の採決の際、数を数えろと迫った株主たちに対して勝俣氏は、「私の前におふたりの代理人が座っています。そのおふたりの株数を合わせると107万個(1個は100株)で、過半数に達しています」と宣言したのです。

つまり会場にどれほどの人々が詰めかけようと動議を出そうと、大株主からの委任状を持った代理人がいて、その二人の挙手で全てが決まるのだというのです。すぐさま手許の収集通知を見るとそれは、日生5500万株、第一生命5280万株でした。

勝俣という人は「冷徹な人」だという印象を受けました。地球上に放射能を撒き散らし、16万5千人もの人が避難せざるを得なかった福島原発事故を起こしておきながら、株主総会さえ乗り切れば良いという驕りを隠そうともしなかったのです。株主総会直後、日生も第一生命も株をかなり手放しましたし、第一は今や10位にも入っていません。底値にも関わらず手放したのは、Twitterでしつこく拡散した成果かも知れません。

次に勝俣さんとは、銀座の雑踏で遭遇しました。銀座7丁目でタクシーからひとりで降りた様子。直ぐに近づいて名を名乗って、本人か確認、「幸せですか?」と聞きました。あなたのために多くの人びとが故郷と幸せを奪われたのですよと、それなのにあなたは優雅に買い物ですか?

私の質問には答えず、裁判で忙しいと言うので、株主代表訴訟には出席していないではないですかと言い、写真を撮らせてと聞きましたら足早に逃げてしまいました。その時は、異様なほど白い顔だったな、と言う印象でした。

そして、東電株主代表訴訟の被告人尋問に現れた勝俣さんは、小さくてオドオドしている可哀想な老人でした。何を聞かれても自分は知らなかった、自分のところには上がってこなかったと言い逃れを繰り返します。怒りを通り越して呆れるばかりでした。
カミソリ勝俣との異名を取り、日本最大の電力会社の社長会長、電事連の会長を歴任した頃の面影もなく、全ての肩書や虚飾が剥がれ落ち、ただの被告となってしまうと、人はこんなにも小さくちっぽけにしか見えないのかと感じました。

今回、福島民友新聞社から取材を受けましたので、「残念な人」でした。と答えました。記者は、亡くなって残念なのかと聞き返しましたので、最高責任者でありながら、決断すれば津波被害を防ぐことが可能であったし、原発事故を防ぐことができた、そのような立場だったのに決断をせず、津波対策を先送りした上、事故を起こしてからも責任を取らず、部下のせいにし、法廷でも嘘をつき、逃げ続けた「人間として残念な人」だと。

更に勝俣さんへ送る言葉は?と「ご冥福を祈ります」と言わせたい様子でしたので、「私は宗教を信じていませんし、あの世があるとは思っていないので、誰が亡くなってもご冥福は祈らないのです」と。冥福とは、仏教用語で冥土での幸福を祈ると言う意味ですから言わなくてもいい言葉だと考えています。
(脱原発・東電株主運動ニュース331号より転載)

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欧州連合(EU)における再生可能エネルギーの現状」

原発をゼロにするためにも、自然エネルギーを推進しなければならない、と思ってはいてもいざ自分の居住地域に太陽光パネルや、巨大風車が設置されるとなると、簡単にはYESとは言えません。日本のように規制がなく山を切り開くような大規模開発に反対するのは当然ですが、他の国はどうしているのでしょうか?
この度、スペインの環境団体で自然エネルギーの社会的受容について研究されているホルヘ・フェルナンデス・ゴメスさんに講演していただくことができました。EUの自然エネルギーの状況なども含めてご覧ください。

ホルヘ・フェルナンデス氏講演「欧州連合(EU)における再生可能エネルギーの現状」

<2024年9月30日 UPLANによるYoutube録画です>

講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」

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*原子力政策に関する所感          村田 光平(元駐スイス大使)

*講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」
(講演会 講演者の詳細な紹介文も加えました。)

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原子力政策に関する所感

村田光平(元駐スイス大使)

皆様

これまでも度重ねて示されてきておりますが、原子力に関しては専門家の知見よりは市民社会の直観の方が信頼できることが、能登地震の震源地近くに建設予定だった珠洲原発を2003年に阻止した市民運動が決定的に立証いたしました。

頻発する能登半島地震が今後の日本の原子力政策に及ぼす影響に関する所感をお届けいたします。
我が国の原子力政策は事故の再発を許すものであり、根底から見直しを行うことを迫るに至りました。

1.      原発はその所在国に向けられた原爆であることがウクライナのザボリ―ジャ原発に加えられている軍事攻撃により立証されております。脱原発は核廃絶の不可欠の要件であり、その前提条件とするべきです。

2.      日本における原発の安全については総理大臣を含め責任の所在が不明のまま放置されております。原子力委員会もその責任を負わないことを明言しております。
無責任体制が放置されているのが驚くべき悲しい現状です。

3.原発事故の再発が深刻に憂慮されます。稼働中の基準地震動は600ガルから1000ガル程度ですが、能登半島地震では最大で2828ガルが観測されております。
これまでも度重ねて基準地震動が低すぎることが指摘されてきましたが、驚くことにいまだ旧態依然です。南海トラフ地震の接近を前になすすべがないのが現状です。

4.      能登半島地震は改めて再稼働が不道徳・無責任であることを想起させます。今後10年間で20兆円規模の政府支援を行うとされるGX政策(グリーントランスフォーメーション)は当然修正が求められます。同政策は能登半島地震の教訓を踏まえていないのみならず、市民社会は同政策は原子力と化石燃料の延命・推進、再エネ・省エネの妨げになると見ております。原発の増設を見込む同政策のどこがグリーンなのでしょうか。

5.      日本の将来、世界の将来にとり最も懸念されるのは六ケ所村の再処理工場の存在です。ケルンの原子炉研究所によれば同工場で事故が起これば福島1000基分の放射能が拡散し1万キロ四方の住人が急性被曝で死亡するとのことです。
人類の存亡にかかわる問題と言えます。
皆様の御支援を得てこの問題に立ち向かうことが出来ることを祈ってやみません
(了)

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「自然エネルギーを社会に受容させるために」

自然エネルギーの重要性は浸透し、ドイツでは昨年58%に達し、日本でも25.7%になりました。しかし、現実に設置となると景観や環境への影響を懸念する声が多く、事業者も設置自治体も苦労しておられます。スペインの環境団体オケストラのエネルギー分野の上級研究員のホルヘ・フェルナンデス氏を迎えて如何に社会的合意を得るかを学び実践に役立てたいと思います。

講師:ホルヘ・フェルナンデス
期日:9月30日(月)15時から17時

オンライン視聴のみになります。事前にお申し込みください。

山林の斜面を削って設置された大規模な太陽光発電は、森林を破壊し、動物・生物の生息環境に影響を与え、また、土砂崩れや洪水の拡大という副作用をもたらしている。また、高さが数百メートルに及ぶ大規模な風力発電は、その巨大な羽を運ぶために大規模な直線的な林道を必要とし、これもまた、大規模な自然破壊を伴う。大規模な自然エネルギーは、日本全国で、自然破壊という新たな課題をもたらしている。

このような「ある問題を解決しようとするためにエネルギー転換が別の問題を引き起こす可能性がある。こういう性質をもつ課題は『やっかいな問題』と呼ばれている。きれいな答えが見つからず、個別の事例での試行錯誤によってしか回答がみつからないといった問題の性質ゆえに『やっかい』なのである。環境問題にはさまざまなトレードオフがあり、『やっかいな問題』に直面することは珍しくなく、再生可能エネルギーが地域社会や人々の生活、生態系などに影響をもたらす環境負荷の問題も一つの典型例である」(丸山康司・西城戸誠編著『どうすればエネルギー転換はうまくいくのか』(新泉社、2022年、17頁~18頁))

この「やっかいな問題」は、我が国だけの問題ではなく、再生可能エネルギー100%社会を実現しようと本気になって取り組んでいる国が、共通して直面している問題である。EUでは、エネルギーコミュニティの設立や、エネルギーの自家消費、省エネへの取組は、先進的な地域における自発的な取組みを超えて、法律により、各自治体が行政事務として取組まなければならない局面になっており、まさに面的な取組みとなって加速しており、「やっかいな問題」の解決はますます重要となっている。
(もっとも、ドイツなど土地利用規制・自然保護法制が強力な国では、乱開発と言われるような状況にまで至ることは少ないが、それでも、農地などでの開発については「やっかいな問題」は発生しており、共通性がある。)

再生可能エネルギーの社会的受容を高めるためには、どうしたらいいのか?が盛んに議論されており、また、日々実践されている段階である。

この点について、スペイン・デウスト大学(ビルバオ市)の、「オーケストラ研究所」(バスク競争力研究所)では、「地域の再生可能エネルギー事業の社会的受容」(ステファニア・モスケラ・ロペス、ホルヘ・フェルナンデス・ゴメス)を公表し、この問題について、概要、以下のように提言している。
・社会的受容の欠如は、プロジェクトの利益とコストが開発事業体とそれが実施されるコミュニティの間で公平に分配されていないと人々が認識しているという事実に関連している。

→社会と再生可能なインフラが立地する地域の一般的な幸福に貢献する合意に達する必要がある。
・再生可能エネルギーが開発される地域に複数の利益をもたらすという認識がある場合に促進される。プロジェクトに対する「ノー」は、住民の特性と利益に関する十分な情報を提供しないこと、または適切なタイミングで提供しないこと、および参加の機会と代替案の欠如にも関連している。
→プロジェクトの初期段階からの積極的な参加(市民が開発機関や公的機関と協議・協力できる)、プロジェクトのあらゆる側面(技術、経済、金融、環境)に関する効果的なコミュニケーションと情報戦略、各地域の特性やニーズに応じたプロジェクトの設計など、さまざまなメカニズムを通じて達成される。
https://www.orkestra.deusto.es/en/publications-search/publications/reports/orkestra-notebooks/2672-230071-social-acceptance-local-renewable-energy-projects

ホルヘ・フェルナンデス – オルケストラ・バスク競争力研究所 (deusto.es)
(専門分野の内容、HPから引用)

「ホルヘ・フェルナンデスは、2018年3月からオルケストラのエネルギー分野の上級研究員兼コーディネーターを務めています。ジョージタウン大学(ワシントンDC)で経済学の博士号を取得し、エネルギー分野で幅広い専門的経験を持っている。

彼の知識は、経済学、エネルギー市場(電力と天然ガス)の設計と規制、エネルギー市場における取引とリスク管理、物的および金融資産の評価、エネルギー価格と需要のモデリング、応用ミクロ経済学とミクロ計量経済学、卸売市場と天然ガスハブの分野に焦点を当てている。

それ以前は、MIBGASの戦略、規制、市場分析の分野で分析ディレクターを務めていました。イベリア・ガス・ハブのテクニカル・ディレクターとして、イベリア半島のガス・ハブの開発と導入に取り組み、同社の卸売天然ガス市場における仲介サービスを主導しました。Intermoney Energíaの副ゼネラルマネージャーとして、エネルギー市場の規制と機能の分析を専門とするコンサルタントチームを率い、エネルギー市場における取引とリスク管理、電力市場の規制と設計、またはエネルギーと社会プロジェクトに関連するプロジェクトを主導した。また、NERA Economic Consultingのコンサルタントとして、電力セクターにおける規制活動の分析と電力市場の機能に関連するプロジェクトに携わりました。ホルヘは、エネルギー市場の機能と規制に関連する問題に関するさまざまな専門誌や書籍に記事を発表している。さらに、彼はスペインのエネルギー部門に関連する多数のコース、会議、専門会議で講演者を務めてきた。」
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主催:原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 http://genjiren.com
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〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7装美ビル602
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福島原発周辺を視察してきました!

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・講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」のお知らせ

・福島原発周辺を視察してきました

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幹線道路からの道には柵があり施錠されています

双葉病院の敷地内は雑草が生い茂っています

福島原発を見下ろせる中間貯蔵施設の見晴台。大きく掘られた中にはフレコンバックに詰められた汚染土や焼却灰

サンライトおおくまの職員室

大熊小学校1年生の机には分厚い辞書が置かれたまま

津島地区特有の通り門

壁一面の神棚。美しく磨き上げられている。隣の部屋は囲炉裏が切ってあった

ソーラーパネルが至る所にあるが、人が住めない期間困難区域

「自然エネルギーを社会に受容させるために」

自然エネルギーの重要性は浸透し、ドイツでは昨年58%に達し、日本でも25.7%になりました。しかし、現実に設置となると景観や環境への影響を懸念する声が多く、事業者も設置自治体も苦労しておられます。スペインの環境団体オケストラのエネルギー分野の上級研究員のホルヘ・フェルナンデス氏を迎えて如何に社会的合意を得るかを学び実践に役立てたいと思います。

講師:ホルヘ・フェルナンデス
期日:9月30日(月)15時から17時
会場:河合弘之宅 地階会議室
(JR&地下鉄四ツ谷駅徒歩5分:新宿区四谷本塩町4−12)
収容人数:約50名
Webにての視聴も可能です。どちらも事前にお申し込みください

申込:genjiren2017@gmail.com 集会参加かWeb視聴かご明記ください。
主催:原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 http://genjiren.com
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「福島原発周辺を視察してきました」  木村 結

福島原発事故から13年が経ち、東電は株主総会でも福島原発の事故には触れないようにしています。ただ、柏崎刈羽原発の再稼働を目指して周辺住民への説明会を実施している政府は、住民からの質問「事故が起きたら賠償はどうなるのか?」に対して「東京電力が無限の責任を負う」と答えているのです。福島原発事故による賠償を打ち切り、法廷で被災者の人権を蹂躙する発言を繰り返している東電の実態を伝えていかなければならないと感じています。

2年前、東電株主代表訴訟は第一審で「13兆3210億円を支払うよう」東電の元取締役4人に命じる歴史的な判決をいただきましたが、現在控訴審が行われ、11月27日に最終弁論が行われ、今年度中に判決が出されると思われます。10月25日には裁判官と弁護士が現地進行協議を実施するのですが、原告が主張している原発周辺の状況については、別途調査し写真や動画で報告することになりました。

そこで、原告と弁護士4名が8月12日13日と福島原発周辺を調査し、木村も原告として同行しましたので、報告を致します。12日は、台風5号が福島県直撃との予報でしたが、弁護士の日程と報告書を裁判所に提出するためには、この日程しか空いていないと決行しましたが、台風は北に外れてくれたため、用意した雨具はバッグから出さずに済みました。

先ず郡山からジャーナリストの藍原寛子さん等の車に乗り換え大熊町に入りました。中間貯蔵施設を管理している環境庁や、地元自治体は、視察の許可を出すために名簿の事前提出や、申請書などを求め、手続きなどは藍原さんが行ってくださいました。

<大熊町の個人宅>

大熊町の帰還困難区域に入るために、タイペックスに着替えて個人のご自宅付近に行きましたが、幹線道路から自宅までの道の入り口には柵がされ、鎖には鍵がかけられています。自分の家であっても申請をし、役場の担当者に鍵を持ってきてもらわなければ入ることはできません。この日、時間に遅れたためか担当者と連絡が取れず、家に近づくこともできず、鬱蒼と繁る木々と竹で家の屋根すら確認することはできませんでした。

尚、家に入るには2人以上でないといけないというルールがあるようです。一時帰宅で自死した方がいらしたからの対策ではないかと思っています。大熊町でもう一軒のご自宅の周辺も見せていただきました。ご本人は新潟に避難されていて中に入れませんでした。木をふんだんに使った自慢の家は建てたばかりで原発事故のため一度も住むことは叶いませんでした。彼女のことは父親と一緒に脱原発の集会に来ていた中学生の頃から知っているので、無念が募ります。

<双葉病院>

原発から4.5キロの双葉病院は介護施設と併せて436名の患者がいましたが、227人はバスに乗れず、そのまま放置されました。更に大渋滞の中を転々と避難せざるを得なかったために45名が命を落としたのです。玄関先にたくさんのベッドが放置されていた写真が脳裏に浮かびましたが、門の中は何処もかしこも鬱蒼と草が生い茂り、白い姥百合が咲いていました。内科と精神科の病院だっためか、奥の病棟のベランダには鉄柵が施されていました。大きくて立派だった病院は壁も剥がれ落ち、朽ち果てるのを待っているようでした。双葉病院の置き去り事件はネットメディア「Tansa」をお読みください。https://tansajp.org/investigativejournal/7759/

<中間貯蔵施設>

福島原発を囲う、大熊町と双葉町の広大な敷地を環境省が中間貯蔵施設として購入。2割の敷地は地権者が首を縦に振らないため、その土地を避けて利用しているとのこと。中間貯蔵30年の期限までに残すところ12年、「最終処分場を確保しなければならないが、不可能ではないか?このまま最終処分地にするしかないのでは?」と問うと「確保するのが私の仕事です」と、環境庁の職員は危険なほど前向きな方でした。福島原発が見下ろせるよう展望台が設置され、汚染土や10万Bq/を超える焼却灰をシートで何重にも保護して埋めていると説明しますが、日の出処分場の汚染実態を知っているだけに、全く信用できません
https://josen.env.go.jp/chukanchozou/

<サンライトおおくま>

中間貯蔵施設の敷地内に残された特養老人ホームです。地方には姥捨山のように老人ホームが林の中や海岸線にたくさんあります。ここは、原発から2キロの至近距離だったため、避難が早く死亡者はゼロでした。しかし、慌てて逃げた様子は館内全域に見てとれ、一時帰宅を利用して職員か管理会社の方かが個人情報だけはなんとかしなければと大きなフレコンバックに入れてはみたものの、結局捨て置くしかないと判断されたカルテの山がありました。個人の尊厳も根こそぎ奪うのが原発事故なのだと改めて感じました。ネズミなどの小動物に食い荒らされた薬の袋、職員室の廊下には剥がれ落ちた標語が。「逃げない、ごまかさない。嘘をつかない」東電役員に見せたいと写真に収めました。

<熊町小学校>

敷地内の線量計は2.159μSvを示し、雨樋の水が落ちる箇所は持参したシンチレーションカウンターで12.2μSvでした。二つ並ぶ一年生の教室には分厚い国語辞書が各自の机に置かれたまま。びっしりと付箋が貼られている。机の脇には色とりどりのランドセルが捨て置かれて、大事なランドセルも持たずに逃げなさいと指示された子どもたちは今20歳。どうしているのでしょう。下駄箱には靴がきちんと並んでいて上履きのまま逃げたこともわかります。自転車置き場には自転車が捨て置かれて朽ちようとしています。避難解除された少し離れた所にはピカピカの小学校が建てられ、避難解除されたがために補償も打ち切られた家族は子どもたちを此処で育てる選択を強いられているのです。

<浪江町の状況>

津波に襲われ、その後避難指示が出たために助けられなかった多くの犠牲者を出した浪江町。「東日本大震災・原子力災害伝承館」では本当の原発事故の被害は隠されているとして市民の手で建てられた「俺たちの伝承館」にも立ち寄り、被災直後と数年経っての街の写真などを見せていただきました。

その後原発直後に軽トラに牛を載せて何度も霞ヶ関や東電に抗議に来ていた吉沢さんの「希望の牧場」の看板を眺めながら牧場を見渡しましたが、暑いためか牛の姿は見えませんでした。パイナップルの皮とレタスを工場から届けてもらって食べている牛たちは甘くて肉質は柔らかいはずと案内してくれた今野寿美雄さん。放射能は怖くないと言っている人たちはこの牛の肉を食べられるのでしょうか。

持ち主が放棄した高濃度に汚染された山々は黄色い土を剥き出しにするほど剥ぎ取られ、原型を留めぬほど削り取られています。地盤沈下した請戸の浜の嵩上げに使われていると言います。幹線道路からは見えない所で里山の姿は変貌させられています。道路脇にも川にもフレコンバッグが積み上げられています。高濃度に汚染された津島地区の人々はクネクネと曲がった一車線の道を何時間もかけて避難しましたが、その道は事故後フレコンバッグを運び出すため真っ直ぐに整備されたのです。なんという皮肉。

風光明媚な山々。放射能さえなければドライブには最適な場所。8000bq/kg以下の汚染土はコンクリートに混ぜられ建築資材や舗装に使われています。被災者アパートに避難してきた子どもたちのガラスバッチ(簡易放射能測定器)の数値が余りに高いので調査すると汚染土コンクリートからの被ばくだと判明。そのアパートは取り壊されたと親戚が実際にそこに住んでいたと案内をしてくれた今野寿美雄さんは話してくださいました。環境省とは名ばかりの組織を使って利権の虜になった人々が全国津々浦々に汚染を拡散しているのです。

<残された民家>

菅野みずえさんのご自宅にも案内していただきました。菅野さんの家は大きく半年前にリフォームをしたばかりでした。1万人近くもの浪江町の住民が津島地区に分散して避難していました。しかし、NHKの「ネットワークでつなぐ放射線地図」の取材班によって線量が高いことを知らされ、避難したのです。菅野さんの家も避難者を大勢受け入れていました。

家の前には大きな通り門(長屋門)があり、2階は家を出るまでの次男三男が暮らすためのもの。大きな通り門は他には2軒しかなかったのに既に取り壊され、この素晴らしい通り門も壊すことになっているとのこと。修繕するには作業員の膨大な被ばくを伴うため苦渋の決断だとのこと。

母屋には目を見張る壁一面の古い神棚があり、これだけは残すことに決まったとのこと。その土地独特の建物や文化にも放射能は容赦なく襲いかかり絶滅させていくことに改めて怒りが沸いた。隣の長い長い間口の壮観な家も取り壊しが決まっているといいます。

<終わりに>

福島原発事故で汚染された土地にはソーラーパネルがあちこちに見られました。首都圏の電力確保のために原発を受け入れて事故を起こされ、故郷を泣く泣く追い出された人びとの土地が、ソーラーパネルしか受け入れられない土地になっていることはなんとも皮肉な話。本来なら地産地消で、人びとの豊かな営みと一体でなければならないものなのに。

福島現地を12年ぶりで見て周り、原発事故は、人々の生活はもちろん、その土地の文化、独特の風俗、伝統をも奪い取ってしまったのだと深く心に刻みました。
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自然エネルギーの出力抑制を直ちに止めなさい!

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「自然エネルギーの出力抑制は直ちに止めること」

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「自然エネルギーの出力抑制は直ちに止めること」を3団体連名で発表し、資源エネルギー庁長官、と9電力各社の社長宛送付しました。

みなさまもお知り合いの報道機関などにご送付いただき、脱炭素社会に逆行するような化石燃料・原発依存のエネルギー政策を転換させましょう。

資源エネルギー庁長官 村瀬 佳史 殿

2024年5月31日

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
全国ご当地エネルギー協会
自然エネルギー市民の会

「自然エネルギーの出力抑制は直ちに止めること」

世界は太陽光、風力などの自然エネルギーが爆発的に増えている。自然エネルギ ーのコストは最も安い。そして日本はドイツの9倍もの自然エネルギー資源があり、日 本経済は大きな発展のチャンスがある。COP28(2023年ドバイ)では、「2030 年までに 自然エネルギーを3倍にする」宣言がなされ、日本も合意している

しかし、日本の現実を見ると、数年前から電力会社が出力抑制をし、自然エネルギ ーの発展は妨げられている。このままでは化石燃料を27兆円(2023年)も輸入する日本経済は沈没する。我々は、政府のエネルギー政策を直ちに転換させ、日本経済の拡大、成長を実現することを強く求めていく。

1)完全な発送電分離を行い、自然エネルギーを最優先すること
電力会社が太陽光発電の出力抑制を行い、貴重な自然エネルギーを大量に捨てているのは、自社の火力発電や原発を優先しているためである。これは利益相反行為 そのものであり、明らかな違法行為であり、直ちに完全な発送電分離を行うべきであ る。

2)蓄電池を急速かつ大幅に拡大し、出力抑制を直ちに止めること
自然エネルギーを無駄なく活用するためには、政府が主導して、国内に蓄電池を 急速かつ大量に設置すべきである。
特に、既存の FIT 太陽光発電所や FIT 風力発電所の電力を無駄なく使うために、 FIT 価格を維持したまま、新たに補助金を支給して、蓄電池を設置させ、同時に、出 力抑制をやめるべきである. (以上)

******* 事務局 原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
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原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)
事務局次長 木村結
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7-装美ビル602
TEL 03-6709-0718 FAX03-6709-8712
ただいまリモート勤務につき、お急ぎの方は、
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