能登半島地震と原発リスク

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┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓     第94号 2024/02/20
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能登半島の先端の珠洲市に住み、原発の危険性を古くから訴えていらした北野進さんに原稿をお寄せいただきました。
北野進さんは、19日に日本外国特派員協会で、記者会見を行っています。
録画はこちらからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=UimKI4tdTVo

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能登半島地震と原発リスク

志賀原発を廃炉に!訴訟原告団北野 進

1.阻止できて本当によかった「珠洲原発」
元日に発生した能登半島地震によって奥能登の風景、人々の暮らしは一変してしまいました。珠洲市や輪島市では多くの地域が壊滅状態です。さらに被害は中能登地域から金沢市内へ、さらには富山県、新潟県にまでも拡大しました。

マグニチュード7.6、最大震度7という今回の大地震の震央は、かつての珠洲原発の予定地・高屋のすぐ近く、関西電力が立地可能性調査を計画していたエリアの裏山です。高屋では激しい揺れに加え、がけ崩れも多数発生し、多くの住宅が倒壊しました。

港の岸壁にも多数の大きな亀裂や陥没が生じ、原型をとどめていません。何より驚くのは地盤の隆起です。予定地前の海岸にはきれいな遠浅の海が広がっていましたが、今そこには岩場が広がっています。防波堤を見れば隆起が約2mにも及んでいることが確認できます。

いうまでもなく、隆起したのは海域だけではありません。原発が建設されたであろう陸域にまで及んでいることは間違いありません。かつて、原発計画があった当時、電力会社や国は「原発は強固な岩盤の上に建てるから大きな地震が来ても大丈夫。万が一大きな地震が起きたら発電所構内に逃げ込んでもらえば一番安全だ」などと豪語していました。当時の知見では、高屋の沿岸域に大断層が走っていることを把握できておらず、調査する気もありませんでした。地盤の隆起など想像すらしていなかったのではないでしょうか。

高屋の集落は地震後孤立し、その後もしばらくは自衛隊の車両しか入れない状況が続きました。高屋の西方約8kmにある中部電力の予定地・寺家(じけ)でも1m程度の隆起がありました。近くの集落では激しい揺れに加え、津波が襲い、沿岸部の家並みは見る影もありません。

現在の防災計画ではPAZ(原発から5km圏内)に該当する地域であり、「全面緊急事態で即時避難」ですが、住民は高台に駆け上がるのが精一杯です。高屋、寺家に限らず奥能登全体が地震後はほぼ孤立状態でしたから、もし原発が立地されていれば、重大事故でも避難すらできず、福島以上に悲惨な原発震災となっていたかもしれません。珠洲原発の反対運動を応援していただいた全国の皆さんにあらためて感謝申し上げたいと思います。

2.止まっていて幸運だった「志賀原発」

今回の大地震は、まったく予想されていなかったわけではありません。珠洲を中心とした奥能登では3年前から群発地震が続き、一昨年は震度5強、昨年5月5日には震度6強の揺れが市内を襲いました。専門家からは「さらに大きな揺れに警戒を」との声が上がっていました。マグニチュード7クラスの地震を引き起こす大断層が能登半島の北部沿岸を走っていることが今では明らかとなっており、一連の群発地震がこの断層を刺激し、大地震の引き金となる可能性を指摘していたのです。

北陸電力が志賀原発2号機の適合性審査のために原子力規制委員会に提出している資料によれば、「能登半島北部沿岸域断層帯」として長さ96km、想定マグニチュード8.1とされていました。今回の地震は、マグニチュードは北電の想定を下回りましたが、動いた断層は約150kmとされ、北電の想定を大き
く上回りました。

北電が想定していなかった断層の連動があったと言わざるをえません。どの断層が動いたのかは今後の分析を待たなければなりませんが、佐渡方向ではNT2、NT3という2つの断層の存在が知られており、今回の震源域に含まれます。北電は審査会合の中で連動の可能性すら検討しておらず、規制委も検討すべきとの指摘すらしていませんでした。全くのノーマーク状態です。

西側(志賀原発沖合側)では、2007年の能登半島地震の震源となった笹波沖断層帯との距離が近いことから、北電は連動の可能性を検討し、「連動しない」との判断を示していました。規制委もその判断を追認する方向で議論は進んでいました。今回の地震は、事実をもって北電、規制委の活断層評価能力を否定したと言えます。

昨年の北電株主総会で私は、笹波沖断層帯との連動の可能性や、志賀原発のリスクについて問いました。これに対して北電の小田常務は「設備に影響を及ぼす可能性のある断層を確実に把握し、耐震設計に反映している」として笹波沖断層帯の連動を否定し、能登半島北部沿岸域断層帯でマグニチュード8.1の地震が発生しても志賀原発は大丈夫と答えたのです。

ところが実際は活動域はさらに東西に広がり、しかもマグニチュード7.6の規模でしたが、1系統2回線で外部電源が受電できなくなり、非常用ディーゼル発電も一台が自動停止するなど、発電所内では多数のトラブルが発生したのです。

今年の株主総会では北電の能力・資質についてさらに追及しなければなりません。原発の防災対応でも欠陥や限界が露呈しました。今回、志賀町は震度7、そして大津波警報が発令されたことから、志賀原発は警戒事態に至りました。

原子力規制庁と内閣府は合同警戒本部を立ち上げ、志賀現地では石川県も加わり現地警戒本部が立ち上がりました。しかしそれは形だけで、その対応はお粗末極まりありません。石川県など地元自治体は地震対応だけで大混乱で、原子力災害に手が回らないことは明らかでした。

北電の危機管理能力のなさは一連のプレス発表の混乱からも明らかです。迅速・正確な情報発信は到底期待できません。原子力防災は初動対応の段階ですでに破綻です。いずれにしても、このように原発を運転する資格のない北陸電力ですが、志賀原発は1、2号機ともに2011年3月から停止中だったことから、今回は幸運にも危機的な事態は回避することができました。再稼働を許さず今日までこられて本当によかったと思います。

3.能登半島地震は最後の警告

一方、北電には「幸運だった」との認識が全くなく、1月31日、能登半島地震後初の記者会見に臨んだ松田光司社長は「志賀原発の安全確保に問題はなく、原子力の重要性は変わらない」と強気の姿勢を貫きました。こうした中、私が地震の翌日から心配しているのは「果たして今回の大地震で、3年前から続く一連の地震活動は収束するのだろうか。

次の大地震へのカウントダウンが始まったのではないか」ということです。今回の地震が周辺断層の新たなひずみを生み、新たな地震のリスクが高まっているとの指摘も専門家から相次いでいます。

北陸電力が志賀1、2号機の設置許可を申請した当時は、能登半島周辺には大きな活断層はないとされていました。しかし、現在、北電が規制委に提出している資料を見ると、能登半島周辺には能登半島北部沿岸域断層帯以外にも、マグニチュード7クラスの大地震が想定される活断層が何本も走っています。

連動すればさらに大きな揺れとなります。また志賀原発の10km圏内に絞ってみれば、東側にはわずか1kmに福浦断層、西側には兜岩沖断層、碁盤島沖断層、そして北側には富来川南岸断層と、志賀原発は三方が活断層に囲まれていることがわかります。

基準地震動を引き上げればいいという次元ではなく、地表の変位が心配されます。再稼働を許さず、一日も早く廃炉に追い込まなければなりません。能登半島地震は地下の流体が原因とされる一連の群発地震が引き金となり、大きな断層の連動につながったと見られていますが、群発地震や断層の連動は、現在の地震学でも知見の積み重ねが少ない分野です。

原発に内在する莫大なリスク、リスクを回避できない地震学の限界、そして原子力規制委員会の限界を直視すれば、国内すべての原発の再稼働はありえません。再稼働した原発の運転継続もありえません。被災地を抱え、地元の運動は遅れ気味ですが、東電株主運動の皆さんはじめ全国の脱原発の運動に後れを取らぬよう、私たちも頑張りたいと思います。

(「脱原発・東電株主運動ニュース325号」より転載)

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「核や原発の『囲い込み』からの帰還」
―大江健三郎「恢復する家族」を読むー

小宮 武夫

北辰居其所
而衆星共之
―論語―  井上 靖

まだ四十代の頃、赴任していたブラジルで日系人の友達に頼まれ、日本出張の合間に手紙と土産品を井上靖のご自宅へ届けに伺ったことがある。ほんの短い会話であったが、別れ際に彼が最近出版した小説「孔子」をとり出し、記念にその本の内扉に上の文字を記して私に手渡してくれた。

それは大切な宝物として本棚に仕舞い込み、その内にきっと読む時が来ると思っていた。実は若い頃、彼の詩集「北国」の中の一篇、戦災を受けた街の天空に冬の北極星が静かに輝いている情景をうたった詩が気に入っていて、そのイメージに捉えられたまま齢八十を越してしまった訳だ。ところが最近、友に勧められて大江健三郎の「恢復する家族」を読むうちに、井上靖と「孔子」の話がでてくるのを見つけ、何かのめぐり逢わせを感じ、四十年ぶりに予感が現実のものになった。

お目にかかった時、彼が大病の後とは露知らず、「ブラジルにまたいらっしゃいませんか」とお誘いした。今にして思えば彼の微笑みは、苦難の果てに面会を目指す昭王の死に接し、帰郷を決断した孔子の風貌を想像させる。丁度孔子が「帰らんかな」と発した様に、その時彼の体には「北辰」に導かれる様にブラジルで味わった生命力が再び呼び戻されたのではないだろうか。大江が文中で「孔子」を取りあげたのも、障害を持つ家族の閉塞感を打破る気迫をその帰還に見たからだ。私もあの時、日本での会議から任地ブラジルへ単身で戻るというのに、サンパウロの空港で何故か不思議な安堵の感情が突如沸いたのを憶えている。危険や死と裏腹に再生への高揚感が三者三様、体に湧き出たのだ。

「恢復する家族」で大江は発達障害のある長男光と家族のやりとりを描くのだが、家族それぞれの日常の振舞いに危険や困難が隠れていて、それを跳びこえながら生きていく。そんな中で「仕方がない、やろう!」ともっと大きな再生に大江がステップを切れたのは孔子が「帰らんかな」と帰還を決意した骨太の思念に自分を投企したからだ。

しかし、大江の死後も世界の戦場化は益々拡大し、ウクライナ、パレスチナ、ミャンマーに留まらず日本の極東の戦場化に巻き込まれた。一月の能登半島地震では志賀原発の存在を疑うほどの危機も明るみに出た。

だが、核や原発を脅しに使う「新・囲い込み」で人々を死に追い込む権力にどう対抗すればよいのか。大江の家族の苦難同様、高齢の苦渋を背負う私には、あの北国の北辰が静かな抵抗の力を与えてくれる予感がする。北辰を戴く天空の“星の子”たる太陽、風や水や地熱など自然が供するエネルギーこそ古来から人々を支えた。そのエネルギーを自給することは「発電市民」として原子力や核を持つ権力に抗し自立する一歩となる。また「発電市民」は耕作放棄地からパネルでエネルギーを獲得し、ITによる食糧自給基地を育てていける。するとそこには、かつて「囲い込み」で農地を追われた人々の末裔が都市から戻ってくる。まさに孔子が発した「帰らんかな」以来の帰還である。

こうして大江の家族のような、障害を抱たり、AIから排除され差別を受ける人も、「衆星共に」新しい故郷をつくることができるのだ。

今や核や原発の闇と虚偽が世界を揺るがしている。死に頻した私達だからこそ一枚の太陽光パネルを梃子に囲いの外に身を投企し、グリーンな故郷を拡大すれば核や原発はやがてゴミと化す。「北辰」(太陽光パネル)が「衆星」(世界や歴史)を動かすのだ。               (了)

為政以徳
北辰居其所
而衆星共之
(旺文社版「論語」による口語訳)

徳によって政治を行えば、たとえば北極星が自分の場所にじっとしていて、多くの星がその方に向いて周囲をめぐるように、人民が心から帰服するようなものである。
(事務局注)

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