漫画紙芝居を公開しました。

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漫画間紙芝居『日本を救った大キリン〜潤龍生さんのお話〜』を公開しました。
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漫画紙芝居の第3弾として幹事会メンバーであり、会社WWBとしても原自連の協賛団体になってくださっている潤龍生さんのお話を作成しました。

龍潤生さんが、福島原発事故の際、東日本壊滅から日本を救ったことは、原自連の幹事会メンバーは存じていましたが、(https://www.recordchina.co.jp/b873103-s28-c30-d0165.html)その事実を日本国民が殆ど知らないことを知り、どうしたら衆知できるかを考えておりました。メディアの方々に何度か話す中でようやく朝日新聞の関根慎一記者が記事にしてくれましたが、(https://digital.asahi.com/articles/ASR9Y6744R9QUTFL01H.html

続いてくれる報道がありません。
福島原発事故を描いた映画やドラマは数多く、日本を間一髪で救った「大キリン」の活躍も描かれているのに、誰がどのように「大キリン」を福島原発に届けたのかは隠されたままでした。Twitter(現X)やfacebookで拡散すると知らなかったとの声が上がります。

原自連メルマガ90号でもお知らせしましたが、(http://genjiren.com/2023/06/25/ml-magazine90/
今回は漫画紙芝居にしましたので、是非多くの方に拡散し、原発事故はまだ終わっていない、原子力非常事態宣言はまだ解除されていないことを知らせていただきたいと思います。政府が、原発が地球温暖化対策の救世主であるかのような誤った情報を振り撒く中、福島原発事故が招いた非常事態を語り続けることが重要です。

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共生の時代を模索するスペイン

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共生の時代を模索するスペイン

自然エネルギーの社会的受容を進めるホルヘ・フェルナンデスさんとスペインの市民団体訪問の報告を聞いて           木村 結

isep(環境エネルギー政策研究所)ソーラーシェアリング推進連盟、全国ご当地エネルギー協会、ソーラーシェアリング総合研究所の協賛をいただいて開催しました講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」は、ハイブリッドでの初めての開催で不慣れな中にも、みなさまのご協力で多くの問題点を共有することができました。

講師のホルヘ・フェルナンデスさんは、EUの現状も丁寧にご紹介くださり、理解を深めることができました。自然エネルギーの設置に関しても前号でお知らせした「やっかいな問題」をどのように分析し解決に向けていくかが模索中のことも含めて丁寧に紹介してくださいました。通訳の藤岡さんは、理解を深めるために細かな説明を入れてくださっています。

詳しくは、原自連のHPで動画を配信していますので、下記のURLをクリックしてください。

私は、ちょうど地域の小さな学習の場で、スペインの市民が、行政を巻き込んだ動きを調査してきた方からの報告を聞く機会がありましたので、ホルヘさんの講演と併せて少し書いてみたいと思います。

スペインでは移民問題を含め社会の分断が進んでおり、デマが横行することが大きな問題になっていました。移民統合政策はフランスに代表される同化政策は移民の文化やアイデンィを排除する点で、そしてイギリスが進めた多文化主義では各地にシリアタウンやトルコタウンを産みこちらもうまくいっていません。

スペインでは、独自の互いの偏見と差別をなくして共生する仕組みを創ろうとするバスク地方のビルバオから始まった「反うわさ戦略」がありました。その動きはバルセロナにも広がります。

うわさに反論しても対立を深めるだけだからと「街中に紙を配って噂や偏見を書いてゴミ箱に捨てるパフォーマンスや、図書館など公共の場で移民がマイクを握って体験談を語り始め、現在は飲食街にも広まって行政のすべての部門で対応するようになりました。病院ではクイズを出題したり、処方箋を出したり、市民も行政も解決に知恵を絞ります。

移民たちが正規労働者になれるよう住民登録を保証したり、相談できる団体やスペースが提供されたり、至る所でお互いに支援しあう場ができているようです。

日本にも全国津々浦々にかつては「寄合」や「講」があり、地域の問題を話し合い経済面でも助け合ってきました。偏見や差別、そして分断の行き着く先は対立と戦争です。国会までもが議論を忘れ、多数決ですべてが決まっているかのような政治が行われていますが、立ち止まって議論を重ねていかなければならないのではないでしょうか。

「欧州連合(EU)における再生可能エネルギーの現状
https://www.youtube.com/watch?v=4riehnIcpCY

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講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」

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*原子力政策に関する所感          村田 光平(元駐スイス大使)

*講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」
(講演会 講演者の詳細な紹介文も加えました。)

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原子力政策に関する所感

村田光平(元駐スイス大使)

皆様

これまでも度重ねて示されてきておりますが、原子力に関しては専門家の知見よりは市民社会の直観の方が信頼できることが、能登地震の震源地近くに建設予定だった珠洲原発を2003年に阻止した市民運動が決定的に立証いたしました。

頻発する能登半島地震が今後の日本の原子力政策に及ぼす影響に関する所感をお届けいたします。
我が国の原子力政策は事故の再発を許すものであり、根底から見直しを行うことを迫るに至りました。

1.      原発はその所在国に向けられた原爆であることがウクライナのザボリ―ジャ原発に加えられている軍事攻撃により立証されております。脱原発は核廃絶の不可欠の要件であり、その前提条件とするべきです。

2.      日本における原発の安全については総理大臣を含め責任の所在が不明のまま放置されております。原子力委員会もその責任を負わないことを明言しております。
無責任体制が放置されているのが驚くべき悲しい現状です。

3.原発事故の再発が深刻に憂慮されます。稼働中の基準地震動は600ガルから1000ガル程度ですが、能登半島地震では最大で2828ガルが観測されております。
これまでも度重ねて基準地震動が低すぎることが指摘されてきましたが、驚くことにいまだ旧態依然です。南海トラフ地震の接近を前になすすべがないのが現状です。

4.      能登半島地震は改めて再稼働が不道徳・無責任であることを想起させます。今後10年間で20兆円規模の政府支援を行うとされるGX政策(グリーントランスフォーメーション)は当然修正が求められます。同政策は能登半島地震の教訓を踏まえていないのみならず、市民社会は同政策は原子力と化石燃料の延命・推進、再エネ・省エネの妨げになると見ております。原発の増設を見込む同政策のどこがグリーンなのでしょうか。

5.      日本の将来、世界の将来にとり最も懸念されるのは六ケ所村の再処理工場の存在です。ケルンの原子炉研究所によれば同工場で事故が起これば福島1000基分の放射能が拡散し1万キロ四方の住人が急性被曝で死亡するとのことです。
人類の存亡にかかわる問題と言えます。
皆様の御支援を得てこの問題に立ち向かうことが出来ることを祈ってやみません
(了)

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「自然エネルギーを社会に受容させるために」

自然エネルギーの重要性は浸透し、ドイツでは昨年58%に達し、日本でも25.7%になりました。しかし、現実に設置となると景観や環境への影響を懸念する声が多く、事業者も設置自治体も苦労しておられます。スペインの環境団体オケストラのエネルギー分野の上級研究員のホルヘ・フェルナンデス氏を迎えて如何に社会的合意を得るかを学び実践に役立てたいと思います。

講師:ホルヘ・フェルナンデス
期日:9月30日(月)15時から17時

オンライン視聴のみになります。事前にお申し込みください。

山林の斜面を削って設置された大規模な太陽光発電は、森林を破壊し、動物・生物の生息環境に影響を与え、また、土砂崩れや洪水の拡大という副作用をもたらしている。また、高さが数百メートルに及ぶ大規模な風力発電は、その巨大な羽を運ぶために大規模な直線的な林道を必要とし、これもまた、大規模な自然破壊を伴う。大規模な自然エネルギーは、日本全国で、自然破壊という新たな課題をもたらしている。

このような「ある問題を解決しようとするためにエネルギー転換が別の問題を引き起こす可能性がある。こういう性質をもつ課題は『やっかいな問題』と呼ばれている。きれいな答えが見つからず、個別の事例での試行錯誤によってしか回答がみつからないといった問題の性質ゆえに『やっかい』なのである。環境問題にはさまざまなトレードオフがあり、『やっかいな問題』に直面することは珍しくなく、再生可能エネルギーが地域社会や人々の生活、生態系などに影響をもたらす環境負荷の問題も一つの典型例である」(丸山康司・西城戸誠編著『どうすればエネルギー転換はうまくいくのか』(新泉社、2022年、17頁~18頁))

この「やっかいな問題」は、我が国だけの問題ではなく、再生可能エネルギー100%社会を実現しようと本気になって取り組んでいる国が、共通して直面している問題である。EUでは、エネルギーコミュニティの設立や、エネルギーの自家消費、省エネへの取組は、先進的な地域における自発的な取組みを超えて、法律により、各自治体が行政事務として取組まなければならない局面になっており、まさに面的な取組みとなって加速しており、「やっかいな問題」の解決はますます重要となっている。
(もっとも、ドイツなど土地利用規制・自然保護法制が強力な国では、乱開発と言われるような状況にまで至ることは少ないが、それでも、農地などでの開発については「やっかいな問題」は発生しており、共通性がある。)

再生可能エネルギーの社会的受容を高めるためには、どうしたらいいのか?が盛んに議論されており、また、日々実践されている段階である。

この点について、スペイン・デウスト大学(ビルバオ市)の、「オーケストラ研究所」(バスク競争力研究所)では、「地域の再生可能エネルギー事業の社会的受容」(ステファニア・モスケラ・ロペス、ホルヘ・フェルナンデス・ゴメス)を公表し、この問題について、概要、以下のように提言している。
・社会的受容の欠如は、プロジェクトの利益とコストが開発事業体とそれが実施されるコミュニティの間で公平に分配されていないと人々が認識しているという事実に関連している。

→社会と再生可能なインフラが立地する地域の一般的な幸福に貢献する合意に達する必要がある。
・再生可能エネルギーが開発される地域に複数の利益をもたらすという認識がある場合に促進される。プロジェクトに対する「ノー」は、住民の特性と利益に関する十分な情報を提供しないこと、または適切なタイミングで提供しないこと、および参加の機会と代替案の欠如にも関連している。
→プロジェクトの初期段階からの積極的な参加(市民が開発機関や公的機関と協議・協力できる)、プロジェクトのあらゆる側面(技術、経済、金融、環境)に関する効果的なコミュニケーションと情報戦略、各地域の特性やニーズに応じたプロジェクトの設計など、さまざまなメカニズムを通じて達成される。
https://www.orkestra.deusto.es/en/publications-search/publications/reports/orkestra-notebooks/2672-230071-social-acceptance-local-renewable-energy-projects

ホルヘ・フェルナンデス – オルケストラ・バスク競争力研究所 (deusto.es)
(専門分野の内容、HPから引用)

「ホルヘ・フェルナンデスは、2018年3月からオルケストラのエネルギー分野の上級研究員兼コーディネーターを務めています。ジョージタウン大学(ワシントンDC)で経済学の博士号を取得し、エネルギー分野で幅広い専門的経験を持っている。

彼の知識は、経済学、エネルギー市場(電力と天然ガス)の設計と規制、エネルギー市場における取引とリスク管理、物的および金融資産の評価、エネルギー価格と需要のモデリング、応用ミクロ経済学とミクロ計量経済学、卸売市場と天然ガスハブの分野に焦点を当てている。

それ以前は、MIBGASの戦略、規制、市場分析の分野で分析ディレクターを務めていました。イベリア・ガス・ハブのテクニカル・ディレクターとして、イベリア半島のガス・ハブの開発と導入に取り組み、同社の卸売天然ガス市場における仲介サービスを主導しました。Intermoney Energíaの副ゼネラルマネージャーとして、エネルギー市場の規制と機能の分析を専門とするコンサルタントチームを率い、エネルギー市場における取引とリスク管理、電力市場の規制と設計、またはエネルギーと社会プロジェクトに関連するプロジェクトを主導した。また、NERA Economic Consultingのコンサルタントとして、電力セクターにおける規制活動の分析と電力市場の機能に関連するプロジェクトに携わりました。ホルヘは、エネルギー市場の機能と規制に関連する問題に関するさまざまな専門誌や書籍に記事を発表している。さらに、彼はスペインのエネルギー部門に関連する多数のコース、会議、専門会議で講演者を務めてきた。」
申込:genjiren2017@gmail.com
主催:原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 http://genjiren.com
協賛:isep特定非営利法人環境エネルギー政策研究所
https://www.isep.or.jp
ソーラーシェアリング推進連盟
https://solar-sharing.jp
全国ご当地エネルギー協会
https://communitypower.jp
ソーラーシェアリング総合研究所
https://iriss.tokyo/

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福島原発周辺を視察してきました!

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・講演会「自然エネルギーを社会に受容させるために」のお知らせ

・福島原発周辺を視察してきました

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幹線道路からの道には柵があり施錠されています

双葉病院の敷地内は雑草が生い茂っています

福島原発を見下ろせる中間貯蔵施設の見晴台。大きく掘られた中にはフレコンバックに詰められた汚染土や焼却灰

サンライトおおくまの職員室

大熊小学校1年生の机には分厚い辞書が置かれたまま

津島地区特有の通り門

壁一面の神棚。美しく磨き上げられている。隣の部屋は囲炉裏が切ってあった

ソーラーパネルが至る所にあるが、人が住めない期間困難区域

「自然エネルギーを社会に受容させるために」

自然エネルギーの重要性は浸透し、ドイツでは昨年58%に達し、日本でも25.7%になりました。しかし、現実に設置となると景観や環境への影響を懸念する声が多く、事業者も設置自治体も苦労しておられます。スペインの環境団体オケストラのエネルギー分野の上級研究員のホルヘ・フェルナンデス氏を迎えて如何に社会的合意を得るかを学び実践に役立てたいと思います。

講師:ホルヘ・フェルナンデス
期日:9月30日(月)15時から17時
会場:河合弘之宅 地階会議室
(JR&地下鉄四ツ谷駅徒歩5分:新宿区四谷本塩町4−12)
収容人数:約50名
Webにての視聴も可能です。どちらも事前にお申し込みください

申込:genjiren2017@gmail.com 集会参加かWeb視聴かご明記ください。
主催:原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 http://genjiren.com
協賛:isep特定非営利法人環境エネルギー政策研究所
https://www.isep.or.jp
ソーラーシェアリング推進連盟
https://solar-sharing.jp
全国ご当地エネルギー協会
https://communitypower.jp
ソーラーシェアリング総合研究所
https://iriss.tokyo/

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「福島原発周辺を視察してきました」  木村 結

福島原発事故から13年が経ち、東電は株主総会でも福島原発の事故には触れないようにしています。ただ、柏崎刈羽原発の再稼働を目指して周辺住民への説明会を実施している政府は、住民からの質問「事故が起きたら賠償はどうなるのか?」に対して「東京電力が無限の責任を負う」と答えているのです。福島原発事故による賠償を打ち切り、法廷で被災者の人権を蹂躙する発言を繰り返している東電の実態を伝えていかなければならないと感じています。

2年前、東電株主代表訴訟は第一審で「13兆3210億円を支払うよう」東電の元取締役4人に命じる歴史的な判決をいただきましたが、現在控訴審が行われ、11月27日に最終弁論が行われ、今年度中に判決が出されると思われます。10月25日には裁判官と弁護士が現地進行協議を実施するのですが、原告が主張している原発周辺の状況については、別途調査し写真や動画で報告することになりました。

そこで、原告と弁護士4名が8月12日13日と福島原発周辺を調査し、木村も原告として同行しましたので、報告を致します。12日は、台風5号が福島県直撃との予報でしたが、弁護士の日程と報告書を裁判所に提出するためには、この日程しか空いていないと決行しましたが、台風は北に外れてくれたため、用意した雨具はバッグから出さずに済みました。

先ず郡山からジャーナリストの藍原寛子さん等の車に乗り換え大熊町に入りました。中間貯蔵施設を管理している環境庁や、地元自治体は、視察の許可を出すために名簿の事前提出や、申請書などを求め、手続きなどは藍原さんが行ってくださいました。

<大熊町の個人宅>

大熊町の帰還困難区域に入るために、タイペックスに着替えて個人のご自宅付近に行きましたが、幹線道路から自宅までの道の入り口には柵がされ、鎖には鍵がかけられています。自分の家であっても申請をし、役場の担当者に鍵を持ってきてもらわなければ入ることはできません。この日、時間に遅れたためか担当者と連絡が取れず、家に近づくこともできず、鬱蒼と繁る木々と竹で家の屋根すら確認することはできませんでした。

尚、家に入るには2人以上でないといけないというルールがあるようです。一時帰宅で自死した方がいらしたからの対策ではないかと思っています。大熊町でもう一軒のご自宅の周辺も見せていただきました。ご本人は新潟に避難されていて中に入れませんでした。木をふんだんに使った自慢の家は建てたばかりで原発事故のため一度も住むことは叶いませんでした。彼女のことは父親と一緒に脱原発の集会に来ていた中学生の頃から知っているので、無念が募ります。

<双葉病院>

原発から4.5キロの双葉病院は介護施設と併せて436名の患者がいましたが、227人はバスに乗れず、そのまま放置されました。更に大渋滞の中を転々と避難せざるを得なかったために45名が命を落としたのです。玄関先にたくさんのベッドが放置されていた写真が脳裏に浮かびましたが、門の中は何処もかしこも鬱蒼と草が生い茂り、白い姥百合が咲いていました。内科と精神科の病院だっためか、奥の病棟のベランダには鉄柵が施されていました。大きくて立派だった病院は壁も剥がれ落ち、朽ち果てるのを待っているようでした。双葉病院の置き去り事件はネットメディア「Tansa」をお読みください。https://tansajp.org/investigativejournal/7759/

<中間貯蔵施設>

福島原発を囲う、大熊町と双葉町の広大な敷地を環境省が中間貯蔵施設として購入。2割の敷地は地権者が首を縦に振らないため、その土地を避けて利用しているとのこと。中間貯蔵30年の期限までに残すところ12年、「最終処分場を確保しなければならないが、不可能ではないか?このまま最終処分地にするしかないのでは?」と問うと「確保するのが私の仕事です」と、環境庁の職員は危険なほど前向きな方でした。福島原発が見下ろせるよう展望台が設置され、汚染土や10万Bq/を超える焼却灰をシートで何重にも保護して埋めていると説明しますが、日の出処分場の汚染実態を知っているだけに、全く信用できません
https://josen.env.go.jp/chukanchozou/

<サンライトおおくま>

中間貯蔵施設の敷地内に残された特養老人ホームです。地方には姥捨山のように老人ホームが林の中や海岸線にたくさんあります。ここは、原発から2キロの至近距離だったため、避難が早く死亡者はゼロでした。しかし、慌てて逃げた様子は館内全域に見てとれ、一時帰宅を利用して職員か管理会社の方かが個人情報だけはなんとかしなければと大きなフレコンバックに入れてはみたものの、結局捨て置くしかないと判断されたカルテの山がありました。個人の尊厳も根こそぎ奪うのが原発事故なのだと改めて感じました。ネズミなどの小動物に食い荒らされた薬の袋、職員室の廊下には剥がれ落ちた標語が。「逃げない、ごまかさない。嘘をつかない」東電役員に見せたいと写真に収めました。

<熊町小学校>

敷地内の線量計は2.159μSvを示し、雨樋の水が落ちる箇所は持参したシンチレーションカウンターで12.2μSvでした。二つ並ぶ一年生の教室には分厚い国語辞書が各自の机に置かれたまま。びっしりと付箋が貼られている。机の脇には色とりどりのランドセルが捨て置かれて、大事なランドセルも持たずに逃げなさいと指示された子どもたちは今20歳。どうしているのでしょう。下駄箱には靴がきちんと並んでいて上履きのまま逃げたこともわかります。自転車置き場には自転車が捨て置かれて朽ちようとしています。避難解除された少し離れた所にはピカピカの小学校が建てられ、避難解除されたがために補償も打ち切られた家族は子どもたちを此処で育てる選択を強いられているのです。

<浪江町の状況>

津波に襲われ、その後避難指示が出たために助けられなかった多くの犠牲者を出した浪江町。「東日本大震災・原子力災害伝承館」では本当の原発事故の被害は隠されているとして市民の手で建てられた「俺たちの伝承館」にも立ち寄り、被災直後と数年経っての街の写真などを見せていただきました。

その後原発直後に軽トラに牛を載せて何度も霞ヶ関や東電に抗議に来ていた吉沢さんの「希望の牧場」の看板を眺めながら牧場を見渡しましたが、暑いためか牛の姿は見えませんでした。パイナップルの皮とレタスを工場から届けてもらって食べている牛たちは甘くて肉質は柔らかいはずと案内してくれた今野寿美雄さん。放射能は怖くないと言っている人たちはこの牛の肉を食べられるのでしょうか。

持ち主が放棄した高濃度に汚染された山々は黄色い土を剥き出しにするほど剥ぎ取られ、原型を留めぬほど削り取られています。地盤沈下した請戸の浜の嵩上げに使われていると言います。幹線道路からは見えない所で里山の姿は変貌させられています。道路脇にも川にもフレコンバッグが積み上げられています。高濃度に汚染された津島地区の人々はクネクネと曲がった一車線の道を何時間もかけて避難しましたが、その道は事故後フレコンバッグを運び出すため真っ直ぐに整備されたのです。なんという皮肉。

風光明媚な山々。放射能さえなければドライブには最適な場所。8000bq/kg以下の汚染土はコンクリートに混ぜられ建築資材や舗装に使われています。被災者アパートに避難してきた子どもたちのガラスバッチ(簡易放射能測定器)の数値が余りに高いので調査すると汚染土コンクリートからの被ばくだと判明。そのアパートは取り壊されたと親戚が実際にそこに住んでいたと案内をしてくれた今野寿美雄さんは話してくださいました。環境省とは名ばかりの組織を使って利権の虜になった人々が全国津々浦々に汚染を拡散しているのです。

<残された民家>

菅野みずえさんのご自宅にも案内していただきました。菅野さんの家は大きく半年前にリフォームをしたばかりでした。1万人近くもの浪江町の住民が津島地区に分散して避難していました。しかし、NHKの「ネットワークでつなぐ放射線地図」の取材班によって線量が高いことを知らされ、避難したのです。菅野さんの家も避難者を大勢受け入れていました。

家の前には大きな通り門(長屋門)があり、2階は家を出るまでの次男三男が暮らすためのもの。大きな通り門は他には2軒しかなかったのに既に取り壊され、この素晴らしい通り門も壊すことになっているとのこと。修繕するには作業員の膨大な被ばくを伴うため苦渋の決断だとのこと。

母屋には目を見張る壁一面の古い神棚があり、これだけは残すことに決まったとのこと。その土地独特の建物や文化にも放射能は容赦なく襲いかかり絶滅させていくことに改めて怒りが沸いた。隣の長い長い間口の壮観な家も取り壊しが決まっているといいます。

<終わりに>

福島原発事故で汚染された土地にはソーラーパネルがあちこちに見られました。首都圏の電力確保のために原発を受け入れて事故を起こされ、故郷を泣く泣く追い出された人びとの土地が、ソーラーパネルしか受け入れられない土地になっていることはなんとも皮肉な話。本来なら地産地消で、人びとの豊かな営みと一体でなければならないものなのに。

福島現地を12年ぶりで見て周り、原発事故は、人々の生活はもちろん、その土地の文化、独特の風俗、伝統をも奪い取ってしまったのだと深く心に刻みました。
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「発電市民」が都市を変える

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戦時下のウクライナからの詩          藤木 八圭

「発電市民」が都市を変える          小宮 武夫

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戦時下のウクライナから詩を3編紹介します。
連日、報道されている「ウクライナ戦争風景」とは異なるでしょうが、
これが市井の現実ですし、これが“戦争”です。
私もかつて、これと似た現実を見ました。 ビアフラで・・
藤木八圭

詩編1 『食べ物』 名前:サーシャ  リヴィウ在住

うちに一人のおじいちゃんがきていました。
「どうぞ召し上がれ!」。
何度言っても断ろうとするのです。
そこでわたしは、この国の高齢者に必ず効くと、ある方便を使います。
「召し上がってくださいね、どうせ捨てることになるんですから」
すると彼曰く「分かりましたいただきます」
ちょうどナイフとフォークを切らしていたから、急いで取りに行ったんです。
戻ってくると、おやまあ、おじいちゃんはもう素手で食べているんではありませんか。

詩編2 『妊娠』  名前:ターニャ  ドネツク在住

2014年の夏に赤ん坊を抱いてドネツクから脱出しました。
それ以来、わたしはひどく妊娠を恐れていました。
妊娠すると、そのとたんにまたすべてが始まってしまうんじゃないか、と。
ことろでキーウ郊外から逃げようとした時点ですでに妊娠2か月でした。
チェルニウツイに着いたところでわたしの妊娠はぴたりと終わりました。
医者に聞いたけれど、戦争が始まったときから診ている妊婦の3人に1人は、
同じように、先にこの世を去ると決めた赤ちゃんを身ごもっているそうです。
医者になって30年間、こんなことは見たことがないそうです。

詩篇3  『痛み』  名前:アンドリー   リビウ在住:
痛みはどんな臭いががするか、って?
臭いのバリエーションは、一時緊急避難車に乗ればたいがい分かるもんだ。
まず何よりも、市場の精肉の臭い。
血液の、甘く、わずかに金属っぽさの混じった臭いだな。
痛みは、汗とか、何日も洗っていない体の臭いもするし、アルコール、ヨウ素溶液、
塩素の臭いなんかも付け加えられるね。
この臭いの束を仕上げるのは、戦場の煙とコーヒー、そしてタバコの臭い。
痛みの臭いは、忘れられるもんじゃない。

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「発電市民」が都市を変える
―浪江のちち牛が伝えるものー
小宮武夫

朝日新聞(2024年3月11日朝刊文化面)によれば、ハンガリーの巨匠タル・ベーラ監督の指導で内外の映像作家が福島で創った作品の上映会がこのほど開かれ、日本の作品では福永壮志監督の「浪江ちち牛物語」が注目された。

この映画は、原発事故で住民が避難した後の浪江町で、残された乳牛を安楽死させる酪農家が作った紙芝居が元になっている。手塩に掛けて育てた牛が「一瞬にして奪われてしまった」事に福永監督は「大変なことが起こった」と伝えている。

“牛を殺す”と云うのは酪農家にとって宿命的な“聖なる儀式”である。
生計のために、我が子のように育てた牛の未来を奪うことで一人前の酪農家が誕生する。職業とは本来、自分の未来のさまざまな可能性をあたかも手塩に掛けた無垢の子を殺すように“聖なるもの”に捧げ、代わりに冷酷な現実から糧を得る“鬼の宿業”なのだ。

浪江の大量な安楽死とは、そうした人間の聖なる儀式とは縁もゆかりもない、ナチスの“ホローコスト”と同類の、核の本質がもつ暴力の現れだ。放射能と同様、目には見えないこの暴力は、希釈された汚染水が海の魚に潜り込むように私達の日常に滲透して権力に対する無気力や暮らしの息苦しさの素になっているのではないか。

異常気象や地震など科学である程度予測されうるものなら打つ手はある。例えばかつてニューヨークでハリケーンの高潮被害の経験から住民の合議で実施された沿岸地域の都市改造などよい例だ。

それに較べ日本でここ数年来、専門家が警告する首都直下型地震に対する東京下町区部の対応はどうだろう。東日本大震災をはるかに超える死者が予測されているのに組織も個人も人ごとの様に、丁度福島原発事故で知らぬ振りをしてやり過ごした同じ冷血さと付合してはいまいか。

しかし、変化の兆はあるのだ。東京の新築住宅に課される太陽光発電パネルの設置義務化がそれだ。人々はエネルギーを自前で自宅生産する事になるから、もはや他人ごとではない。すると地震で壊れるような家では投資の意味がないし、自分の街が壊滅しても更に共に困難が増す。都市改造の問題に必ずや議論が拡がる筈だ。人々のそれぞれの発電が公共の街造りの問題に進化していくのだ。

今起こっている戦争や紛争はエネルギーと食糧が原因であり、武器にもなっている。だから核で威嚇する権力者にこの二つを頼ってはならない。甘い補助金で核のホローコストに誘い込む黒い牛(原発)にトドメを刺し、鬼の宿業を背負った若者のように太陽光発電で自立しなければならない。そこから発電市民と云う新時代のプロフェッショナルが誕生するのだ。

民主主義は言葉による口先の遊びとは訳が違う。情報社会の栄養素であるエネルギーという生産要素が市民の小さなプロダクツとしてそれぞれの家庭で自給できるようになったことが大きい。この産物の小さなやりとりから花咲か爺のように民主主義という大きな花が咲くのだ。

浪江の牛もただでは死なない。こうして映像となって原発という冷血と戦っているのだ。発電市民は消された乳牛のためにも聖なる祈りを込めて、一枚の太陽光パネルに思いを託さねばならない。それがプロフェッショナルの秘密。新しい発電市民の熱血の秘密なのだ。今、監督が云うように「大変なことが起きている」のだ。
2024年3月11日

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能登半島地震と原発リスク

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能登半島の先端の珠洲市に住み、原発の危険性を古くから訴えていらした北野進さんに原稿をお寄せいただきました。
北野進さんは、19日に日本外国特派員協会で、記者会見を行っています。
録画はこちらからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=UimKI4tdTVo

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能登半島地震と原発リスク

志賀原発を廃炉に!訴訟原告団北野 進

1.阻止できて本当によかった「珠洲原発」
元日に発生した能登半島地震によって奥能登の風景、人々の暮らしは一変してしまいました。珠洲市や輪島市では多くの地域が壊滅状態です。さらに被害は中能登地域から金沢市内へ、さらには富山県、新潟県にまでも拡大しました。

マグニチュード7.6、最大震度7という今回の大地震の震央は、かつての珠洲原発の予定地・高屋のすぐ近く、関西電力が立地可能性調査を計画していたエリアの裏山です。高屋では激しい揺れに加え、がけ崩れも多数発生し、多くの住宅が倒壊しました。

港の岸壁にも多数の大きな亀裂や陥没が生じ、原型をとどめていません。何より驚くのは地盤の隆起です。予定地前の海岸にはきれいな遠浅の海が広がっていましたが、今そこには岩場が広がっています。防波堤を見れば隆起が約2mにも及んでいることが確認できます。

いうまでもなく、隆起したのは海域だけではありません。原発が建設されたであろう陸域にまで及んでいることは間違いありません。かつて、原発計画があった当時、電力会社や国は「原発は強固な岩盤の上に建てるから大きな地震が来ても大丈夫。万が一大きな地震が起きたら発電所構内に逃げ込んでもらえば一番安全だ」などと豪語していました。当時の知見では、高屋の沿岸域に大断層が走っていることを把握できておらず、調査する気もありませんでした。地盤の隆起など想像すらしていなかったのではないでしょうか。

高屋の集落は地震後孤立し、その後もしばらくは自衛隊の車両しか入れない状況が続きました。高屋の西方約8kmにある中部電力の予定地・寺家(じけ)でも1m程度の隆起がありました。近くの集落では激しい揺れに加え、津波が襲い、沿岸部の家並みは見る影もありません。

現在の防災計画ではPAZ(原発から5km圏内)に該当する地域であり、「全面緊急事態で即時避難」ですが、住民は高台に駆け上がるのが精一杯です。高屋、寺家に限らず奥能登全体が地震後はほぼ孤立状態でしたから、もし原発が立地されていれば、重大事故でも避難すらできず、福島以上に悲惨な原発震災となっていたかもしれません。珠洲原発の反対運動を応援していただいた全国の皆さんにあらためて感謝申し上げたいと思います。

2.止まっていて幸運だった「志賀原発」

今回の大地震は、まったく予想されていなかったわけではありません。珠洲を中心とした奥能登では3年前から群発地震が続き、一昨年は震度5強、昨年5月5日には震度6強の揺れが市内を襲いました。専門家からは「さらに大きな揺れに警戒を」との声が上がっていました。マグニチュード7クラスの地震を引き起こす大断層が能登半島の北部沿岸を走っていることが今では明らかとなっており、一連の群発地震がこの断層を刺激し、大地震の引き金となる可能性を指摘していたのです。

北陸電力が志賀原発2号機の適合性審査のために原子力規制委員会に提出している資料によれば、「能登半島北部沿岸域断層帯」として長さ96km、想定マグニチュード8.1とされていました。今回の地震は、マグニチュードは北電の想定を下回りましたが、動いた断層は約150kmとされ、北電の想定を大き
く上回りました。

北電が想定していなかった断層の連動があったと言わざるをえません。どの断層が動いたのかは今後の分析を待たなければなりませんが、佐渡方向ではNT2、NT3という2つの断層の存在が知られており、今回の震源域に含まれます。北電は審査会合の中で連動の可能性すら検討しておらず、規制委も検討すべきとの指摘すらしていませんでした。全くのノーマーク状態です。

西側(志賀原発沖合側)では、2007年の能登半島地震の震源となった笹波沖断層帯との距離が近いことから、北電は連動の可能性を検討し、「連動しない」との判断を示していました。規制委もその判断を追認する方向で議論は進んでいました。今回の地震は、事実をもって北電、規制委の活断層評価能力を否定したと言えます。

昨年の北電株主総会で私は、笹波沖断層帯との連動の可能性や、志賀原発のリスクについて問いました。これに対して北電の小田常務は「設備に影響を及ぼす可能性のある断層を確実に把握し、耐震設計に反映している」として笹波沖断層帯の連動を否定し、能登半島北部沿岸域断層帯でマグニチュード8.1の地震が発生しても志賀原発は大丈夫と答えたのです。

ところが実際は活動域はさらに東西に広がり、しかもマグニチュード7.6の規模でしたが、1系統2回線で外部電源が受電できなくなり、非常用ディーゼル発電も一台が自動停止するなど、発電所内では多数のトラブルが発生したのです。

今年の株主総会では北電の能力・資質についてさらに追及しなければなりません。原発の防災対応でも欠陥や限界が露呈しました。今回、志賀町は震度7、そして大津波警報が発令されたことから、志賀原発は警戒事態に至りました。

原子力規制庁と内閣府は合同警戒本部を立ち上げ、志賀現地では石川県も加わり現地警戒本部が立ち上がりました。しかしそれは形だけで、その対応はお粗末極まりありません。石川県など地元自治体は地震対応だけで大混乱で、原子力災害に手が回らないことは明らかでした。

北電の危機管理能力のなさは一連のプレス発表の混乱からも明らかです。迅速・正確な情報発信は到底期待できません。原子力防災は初動対応の段階ですでに破綻です。いずれにしても、このように原発を運転する資格のない北陸電力ですが、志賀原発は1、2号機ともに2011年3月から停止中だったことから、今回は幸運にも危機的な事態は回避することができました。再稼働を許さず今日までこられて本当によかったと思います。

3.能登半島地震は最後の警告

一方、北電には「幸運だった」との認識が全くなく、1月31日、能登半島地震後初の記者会見に臨んだ松田光司社長は「志賀原発の安全確保に問題はなく、原子力の重要性は変わらない」と強気の姿勢を貫きました。こうした中、私が地震の翌日から心配しているのは「果たして今回の大地震で、3年前から続く一連の地震活動は収束するのだろうか。

次の大地震へのカウントダウンが始まったのではないか」ということです。今回の地震が周辺断層の新たなひずみを生み、新たな地震のリスクが高まっているとの指摘も専門家から相次いでいます。

北陸電力が志賀1、2号機の設置許可を申請した当時は、能登半島周辺には大きな活断層はないとされていました。しかし、現在、北電が規制委に提出している資料を見ると、能登半島周辺には能登半島北部沿岸域断層帯以外にも、マグニチュード7クラスの大地震が想定される活断層が何本も走っています。

連動すればさらに大きな揺れとなります。また志賀原発の10km圏内に絞ってみれば、東側にはわずか1kmに福浦断層、西側には兜岩沖断層、碁盤島沖断層、そして北側には富来川南岸断層と、志賀原発は三方が活断層に囲まれていることがわかります。

基準地震動を引き上げればいいという次元ではなく、地表の変位が心配されます。再稼働を許さず、一日も早く廃炉に追い込まなければなりません。能登半島地震は地下の流体が原因とされる一連の群発地震が引き金となり、大きな断層の連動につながったと見られていますが、群発地震や断層の連動は、現在の地震学でも知見の積み重ねが少ない分野です。

原発に内在する莫大なリスク、リスクを回避できない地震学の限界、そして原子力規制委員会の限界を直視すれば、国内すべての原発の再稼働はありえません。再稼働した原発の運転継続もありえません。被災地を抱え、地元の運動は遅れ気味ですが、東電株主運動の皆さんはじめ全国の脱原発の運動に後れを取らぬよう、私たちも頑張りたいと思います。

(「脱原発・東電株主運動ニュース325号」より転載)

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「核や原発の『囲い込み』からの帰還」
―大江健三郎「恢復する家族」を読むー

小宮 武夫

北辰居其所
而衆星共之
―論語―  井上 靖

まだ四十代の頃、赴任していたブラジルで日系人の友達に頼まれ、日本出張の合間に手紙と土産品を井上靖のご自宅へ届けに伺ったことがある。ほんの短い会話であったが、別れ際に彼が最近出版した小説「孔子」をとり出し、記念にその本の内扉に上の文字を記して私に手渡してくれた。

それは大切な宝物として本棚に仕舞い込み、その内にきっと読む時が来ると思っていた。実は若い頃、彼の詩集「北国」の中の一篇、戦災を受けた街の天空に冬の北極星が静かに輝いている情景をうたった詩が気に入っていて、そのイメージに捉えられたまま齢八十を越してしまった訳だ。ところが最近、友に勧められて大江健三郎の「恢復する家族」を読むうちに、井上靖と「孔子」の話がでてくるのを見つけ、何かのめぐり逢わせを感じ、四十年ぶりに予感が現実のものになった。

お目にかかった時、彼が大病の後とは露知らず、「ブラジルにまたいらっしゃいませんか」とお誘いした。今にして思えば彼の微笑みは、苦難の果てに面会を目指す昭王の死に接し、帰郷を決断した孔子の風貌を想像させる。丁度孔子が「帰らんかな」と発した様に、その時彼の体には「北辰」に導かれる様にブラジルで味わった生命力が再び呼び戻されたのではないだろうか。大江が文中で「孔子」を取りあげたのも、障害を持つ家族の閉塞感を打破る気迫をその帰還に見たからだ。私もあの時、日本での会議から任地ブラジルへ単身で戻るというのに、サンパウロの空港で何故か不思議な安堵の感情が突如沸いたのを憶えている。危険や死と裏腹に再生への高揚感が三者三様、体に湧き出たのだ。

「恢復する家族」で大江は発達障害のある長男光と家族のやりとりを描くのだが、家族それぞれの日常の振舞いに危険や困難が隠れていて、それを跳びこえながら生きていく。そんな中で「仕方がない、やろう!」ともっと大きな再生に大江がステップを切れたのは孔子が「帰らんかな」と帰還を決意した骨太の思念に自分を投企したからだ。

しかし、大江の死後も世界の戦場化は益々拡大し、ウクライナ、パレスチナ、ミャンマーに留まらず日本の極東の戦場化に巻き込まれた。一月の能登半島地震では志賀原発の存在を疑うほどの危機も明るみに出た。

だが、核や原発を脅しに使う「新・囲い込み」で人々を死に追い込む権力にどう対抗すればよいのか。大江の家族の苦難同様、高齢の苦渋を背負う私には、あの北国の北辰が静かな抵抗の力を与えてくれる予感がする。北辰を戴く天空の“星の子”たる太陽、風や水や地熱など自然が供するエネルギーこそ古来から人々を支えた。そのエネルギーを自給することは「発電市民」として原子力や核を持つ権力に抗し自立する一歩となる。また「発電市民」は耕作放棄地からパネルでエネルギーを獲得し、ITによる食糧自給基地を育てていける。するとそこには、かつて「囲い込み」で農地を追われた人々の末裔が都市から戻ってくる。まさに孔子が発した「帰らんかな」以来の帰還である。

こうして大江の家族のような、障害を抱たり、AIから排除され差別を受ける人も、「衆星共に」新しい故郷をつくることができるのだ。

今や核や原発の闇と虚偽が世界を揺るがしている。死に頻した私達だからこそ一枚の太陽光パネルを梃子に囲いの外に身を投企し、グリーンな故郷を拡大すれば核や原発はやがてゴミと化す。「北辰」(太陽光パネル)が「衆星」(世界や歴史)を動かすのだ。               (了)

為政以徳
北辰居其所
而衆星共之
(旺文社版「論語」による口語訳)

徳によって政治を行えば、たとえば北極星が自分の場所にじっとしていて、多くの星がその方に向いて周囲をめぐるように、人民が心から帰服するようなものである。
(事務局注)

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