自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言

自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言

2023年6月8日

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会  長  吉原  毅
顧  問  小泉純一郎
副会長  中川  秀直
幹事長  河合  弘之
事務局次長 木村  結

自然エネルギー(とくに太陽光発電と風力発電)への大転換は、気候危機、エネルギー自立と安全保障の切り札として、全世界で拡大がますます加速している。当連盟が目指す原発ゼロの実現にも大いに貢献する。

ところが今年に入って、九州電力を筆頭に、ほぼ全ての電力会社による自然エネルギーの出力抑制が一段と激しくなっている。九州電力の今年4〜5月の出力抑制は44回(昨年24回)・抑制率39%(昨年13%)に達した。中国電力の今年4〜5月の出力抑制は36回(昨年7回)・抑制率31%(昨年8%)に達した。6月4日には、ついに関西電力までも出力抑制を開始した。日本全体の自然エネルギー電力比率はまだ22%(2022年末。うち太陽光+風力は12%)に過ぎないのに、これほどの出力抑制は異常である。

この低い自然エネルギー比率の段階でこれほどの激しい出力抑制をしていては、「自然エネルギー100%」どころか、国が掲げる2030年の自然エネルギー導入目標(36〜38%)や「主力電源化」さえ、およそ実現できない。

以下、国と電力会社が自然エネルギー出力抑制の前にすべき7点を提言する。

その1:自然エネルギー(太陽光+風力)を最優先し、原発を停止すべし

自然エネルギー(太陽光+風力)は、原発と比べると、経済的にも限界費用が最も安く、エネルギー安全保障的にも純国産資源であり、環境的にも核廃棄物やCO2などの汚染がないなどから、エネルギーとして最優先されるべきである。事実、欧州や米国など日本以外のほとんどの国や地域で、自然エネルギーは最優先されている。

したがって、国が定める優先給電ルールを「自然エネルギー最優先」に見直すべきであるとともに、そもそも原発はテロや事故があれば国家滅亡の危険があるので、直ちに停止し、廃炉すべきである。

その2:出力抑制に対して経済的補償すること

現在、電力会社が行っている自然エネルギーの出力抑制は需給調整と系統安定化のためであるから、ドイツが行っているように、自然エネルギー発電事業者に対して託送料金を原資として経済的な補償を行うべきである。

なお、系統連系契約時の旧ルール・新ルール・無制限無補償などは、優越的地位を濫用した違法な契約条項であり、直ちに撤廃すべきである。

その3:完全な発送電(所有権)分離と電力市場の抜本的な見直しを行うこと

出力抑制を行っている一般送配電会社は旧一般電気事業者の「子会社」であるため、自然エネルギーの出力抑制をして、自社の火力発電や原発を優先することは、利益相反行為そのものであり、違法である。最近でも不正閲覧問題を起こすなどモラルハザード、違法行為を起こしており、直ちに完全な発送電(所有権)分離を行うことが不可欠である。加えて、卸電力取引所など電力市場に対して圧倒的に市場支配が大きい旧一般電気事業者の自社内取引が有利な構図を廃する電力市場の見直しを行い(内外無差別)、容量市場や需給調整市場も蓄電池による柔軟性向上が進むように見直しを行うこと。

その4:火力発電を出力抑制に使い、かつ最低出力まで落とすことを徹底すること

自然エネルギー(太陽光+風力)は、経済的にも、エネルギー安全保障的にも、環境的にも最優先すべきであり、これを出力抑制するのではなく、電気の需給調整には、火力発電を弾力的に運転し、出力抑制に使うべきである。

我々の調べでは、電力会社は自社の火力や購入契約火力の出力を充分に落としていない状況があると疑われる。電力会社は火力発電毎の運転状況の情報公開をするとともに、既存の優先給電ルールに従うとしても、火力発電はさらに大幅に削減できるはずであり、これを徹底すべきである。

その5:電力会社を超えた広域で自然エネルギーを利用すること

自然エネルギーの出力抑制は、各電力会社の需給調整の都合でしかなく、全国的に電気が不足していても、各電力会社では出力抑制が行われているなど、せっかくのエネルギーを無駄に捨てているのが我が国の実態である。こうした無駄を無くすため、すべての電力会社管内を越えて送電網を開放し、全国レベルで活用すべきである。火力発電の最低出力化や地域関連系線の最大活用、さらに抑制対象外となっていると推測される電源開発の石炭火力(長崎県松島・松浦火力、徳島県橘湾火力など)も抑制すべきである。

その6:系統蓄電池を急速かつ大幅に拡大すること

これから飛躍的に自然エネルギー(特に太陽光と風力)を拡大していくことが必要であることを考えると、本質的には、系統全体の柔軟性が欠けていることが最大の課題である。短期的に系統全体の柔軟性を増すには、系統蓄電池の急速かつ大幅な拡大をすべきである。現在、蓄電池は世界的に爆発的な拡大期に入っており、これは日本でも導入可能であるだけでなく、日本の蓄電池産業や市場を創出するためにも貢献しうる。

具体的には、現状、約10GWの系統蓄電池の計画が把握されているが、これを2030年までに最低でも5倍・約50GW・200GWhの目標を掲げ、普及拡大策を採るべきである。

この系統蓄電池拡大を補完するため、既存のFIT太陽光発電所やFIT風力発電所に対しても、FIT価格を維持したまま、事後的な蓄電池設置を認めるべきである。

その7:需要側でも柔軟性を急速かつ大幅に拡大すること

系統全体の柔軟性を増すには、需要側でも対応することができる。需要応答(DR)も導入されているものの、未だに充分に進んでいない。需要側に蓄電池を設置拡大してこれをアグリゲーション(取りまとめ)して需要応答(DR)に活用することは、系統全体の柔軟性向上に加えて、乱高下する電力市場の安定化にも貢献し、需要家の収益機会にもなるため、ウィン・ウィン・ウィンとなる良策である。

容量市場などでの優遇策や需要側蓄電池の普及拡大策を含めて、需要側でも柔軟性を急速かつ大幅に拡大すべきである。

(以上)