志賀町町長「原発再稼働には慎重にならざるを得ない」

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能登半島には、志賀原発があり、地元の志賀町町長はこれまで推進の立場でしたが、能登半島地震で至る所で道路が分断され、救援物資どころか、被災者が逃げることもできない状況を目のあたりにし、東京新聞のインタビューに応えて原発再稼働には慎重にならざるを得ない、と初めて表明しました。

日本各地には、半島振興法の適用地域が23箇所あり、面積は全体の約1割を占めます。半島は三方を海に囲まれ、災害の際の避難経路の確保が困難なことから、所在の県には道路の強靱化など特別な対策が義務付けかられていますが、石川県は何もしていなかったことがわかっています。

テレビ画面からは1ヶ月が過ぎても体育館や集会所でプライバシーも確保されない中、身を寄せ合って寒さに震えている姿が映し出されます。災害大国でありながら、防災対策、被災者対応が一向に改善しないのに、防衛費ばかりが膨らんでいく政策に怒りしか感じません。

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お待たせしておりました、まんが紙芝居「原発と人類」が完成しましたのでお披露目いたします。是非拡散してください。
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まんが紙芝居「日本の進むべき道」
2019年4月に行われた小泉純一郎元首相の「日本の歩むべき道」講演を元に構成しました。(データは2023年7月現在のものです)是非SNSなどで拡散してください。
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*『なぜ日本は原発を止められないのか?:「安全神話」に加担した政・官・業・学そしてマスコミの大罪』青木美希著 文藝春秋 (送料含め1100円)
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*「原発と人類」:副会長の中川秀直元科学技術庁長官が5月に講演したものを映像と豊富な資料でまとめた冊子です。(送料含め1000円)

*「隠されたトモダチ作戦―ミナト/ヨコスカ/サンディエゴ」
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被災者置き去りの能登半島地震──即刻見直すべき「原子力災害対策指針」

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地震と共に2024年が始まりました。能登半島の先端珠洲市は最も被害が大きく、道路も分断され孤立した集落が多い地域でした。珠洲原発が建設されていなくて良かったと、真っ先に思いました。

身を寄せ合って暮らしていた地域の人びとを分断し、挨拶もし合えない憎しみを残した28年間の闘い。NNNドキュメントの映像をご覧ください。
https://www.dailymotion.com/video/x2e3fj8

全国には珠洲をはじめ、原発建設を拒否した、拒否し続けている町が64箇所もあります。原発は建設されても、建設が中止されても放射能の被害の前に地域の人びとの心を蝕んでしまうのです。「地域振興・地域発展・生活向上」という美辞麗句で。

3.11直後原発事故の被災地で闘った双葉郡の消防士たちを取材した書籍「孤塁」で日本ジャーナリスト会議賞を受賞した吉田千亜さんから記事
被災者置き去りの能登半島地震──即刻見直すべき「原子力災害対策指針」

をいただきましたので、お読みください。最後に吉田千亜さんの書籍もご紹介いたします。2月には子ども向けの書籍も出版されますので、是非お子さんやお孫さんへ手渡してください。

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被災者置き去りの能登半島地震──即刻見直すべき「原子力災害対策指針」

能登半島地震で亡くなられた被災者のご冥福をお祈りし、被災された方にお見舞いを申し上げたい。
2024年は悲しい災害からはじまったが、東日本大震災や熊本地震などと比べても、政府の災害対応が劣化している。災害や原発への危機感、被災者への共感力も乏しくなったように感じる。まず、時系列に見ていきたい。

致命的だった初動の遅れ
1月2日、自衛隊派遣は初動でわずか1000人。航空局が早々に能登半島全体を緊急用務区域に指定し、ドローンが飛ばせなくなった。3日からは関東圏ではテレビが報じなくなった。正月の番組編成のせいかL字テロップすら消えた。
4日頃から報道が少しずつ戻る。石川県と北陸地方整備局は被災地での人命救助や復旧作業を進めるため、能登地方への一般車両の移動を控えるよう協力を呼びかけ。この頃からSNSでは「ボランティアは能登半島に行くな」「迷惑だ」の嵐。一方、岸田首相は『BSフジLIVE プライムニュース』に出演し、総裁選について笑顔で語った。

5日、岸田首相は防災服にバラを付けて3つの新年会(経済3団体、連合、時事通信社)に参加。同日、馳浩石川県知事は県災害対策本部員会議後の取材に「親戚を見に行きたい、炊き出しに行きたい気持ちはわかるが、車で駆けつけることはやめてほしい」と強調。また「県道国道のひび割れで段差が10センチから1メートルくらいあって進めない」「自衛隊のヘリの、空の部隊で運ばざるを得ないということがよくわかりましたので」とテレビ金沢が報じると、「(把握が)遅すぎる」とSNSで批判された。

6日、自衛隊派遣人数は5400人。熊本地震では発災5日後には2万人を超えていた。自衛隊幹部は「一番起きてほしくない場所で起こった」と毎日新聞に語ったが、対応の遅れは、地形だけのせいではないように思えた。

7日、本来予算対応に動くべき与党・小泉進次郎衆議院議員が街頭募金活動のパフォーマンス。千葉県では、陸上自衛隊第1空挺団が8カ国合同で「降下訓練始め」を実施。まさに空からの支援こそが被災地で求められていたが、「貴重な訓練機会だから中止せず実施した」という。

8日には、なぜこれほど道路復旧が遅れているのかと問われた七尾市の建設業者が「行政から発注を受けないと工事ができない。公の道だから自分たちで勝手なことはできない」とNHKの取材に答え 、発注が後手に回っている可能性も示唆された。

9日、ようやく閣議で今年度の予備費から47億3790万円を支出することを決定(後に1000億円)。発災13日後になり岸田首相が被災地を視察、馳知事すら初の訪問だった。1月23日時点で死者233人、災害関連死は15人。安否不明者は19人と発表された。

ここまで被災地の人々が初動から見捨てられるとは思わなかった。これらを踏まえ、原発避難について考えたい。

不信つのる志賀原発の対応
東北大学災害国際研究所が9日、緊急開催した令和6年能登半島地震に関する速報会では、能登半島真下の活断層群が動き土地が4m隆起したことについて「3〜4千年に1度の大ごと」と発表された。今回の津波は陸地の近いところで発生し、珠洲市では、地震発生の1分後に第1波が押し寄せるなど、到達が早かった。津波は能登半島を回り込むように伝わり、弧を描く終着が志賀原発付近となるシミュレーションも披露された。

能登半島の大地震と聞き、人々は当然志賀原発を案じた。今回の震源はまさに志賀原発直近。地震から1時間半後に3メートルの津波が襲来も、9日まで「水位上昇」の言葉でごまかし、漏れた油は3500リットルから5倍強の約2万リットルと修正。10 日には新たな油漏れも報じられた。直後は計測不能のモニタリングポストも14ヶ所に上った。

幸い稼働していない原発であったため現時点で事故の報道はない。しかし放射能漏れを起こすような原発事故が起きた場合、避難は相当厳しい。

9日時点で22地区、3千人以上が孤立し、例えば石川県珠洲市大谷町では、携帯電話の通信状況の改善にはほど遠く、防災無線もラジオの電波も届かないと報じられた。情報もなく、道を寸断されている地域は、文字通りの「孤立」だ。

原発からの避難は不可能
避難はまず「情報」だ。携帯電話は、一部エリアでは復旧したところもあるが、発災9日後の10日午後になっても通信障害が継続している(ケータイWatch)。
次に「移動」だが、図に示した通り、道路の通行止め、しかも主要幹線道路の寸断が激しく、志賀原発だけでなく、柏崎刈羽原発も厳しい状況があった。

さらに避難計画では、UPZ(30キロ圏内)の住民は、PAZ(5キロ圏内)の住民が避難するまで、「屋内退避」で待て、とされている。いま能登半島で「屋内」を確保できている人がどれほどいるだろうか。

ちなみに、奥能登の高齢化率は高く、令和2年で48・9%。令和4年度のUPZの住民を調査したところ、避難時に福祉車両を要する避難行動要支援者数(推計値)は、車いす用で1236人、寝台用で340人とある。一般住民ですら避難が不可能なのに、避難行動要支援者の福祉車両がくるとは思えない。

また、地震直後はガソリンがないというSNSの投稿も多かった。10日時点で7割のガソリンスタンドが回復したというが、大型タンクローリーによる燃料の輸送が始まったのは5日からだ。

原子力規制委員会の山中伸介委員長は、10日、原発で重大な事故が起きた際の対応を定めた「原子力災害対策指針」を見直す必要があるか検討する、と記者の質問に答えた。悠長に「見直しの検討」などと言っている場合ではなく、根本から見直すべきだ。

そもそもこれほど災害の多い日本で原発の存在自体が無理だ。それは、13年前にすでに明らかになっていたのではなかったのか。
(『女のしんぶん』 2024年1月31日号より転載/ライター・吉田千亜)

吉田千亜さんの書籍
*『孤塁 双葉消防士たちの3.11』岩波書店、岩波現代文庫もあり
*『ルポ母子避難―消されゆく原発被害者』岩波新書
*『その後の福島:原発事故を生きる人びと』人文書院
*『原発事故、ひとりひとりの記憶―3.11から今に続くこと』岩波ジュニア文庫2/22発売

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前回ご案内しましたまんが紙芝居「日本の進べき道」に続き中川秀直さんの「人類と原発」は現在製作中です。近日中にお届けできると思います。

まんが紙芝居「日本の進むべき道」
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*『なぜ日本は原発を止められないのか?:「安全神話」に加担した政・官・業・学そしてマスコミの大罪』青木美希著 文藝春秋
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汚染水の海洋放出を中止し、汚染水を増やさない、流さない方法を!

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久々の配信になります。メルマガ配信のシステムが変更になり、前回配信されなかった方が大勢いたため、何度も配信するなどの不手際がありました。その後名簿の整備をしていただきました。ご心配をおかけしました。

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まんが紙芝居「日本の進むべき道」

関東大震災から100年。9月1日が「防災の日」になったのは関東大震災に起因すると知らない人が43%もいるという報道に驚きました。戦争も震災も、そして原発事故も風化させてはいけません。語り継いでいくのは体験した者たち、残された者たちの使命です。

原自連では、毎月幹事会を開催、専門家をお招きしての学習会や議論を行なっておりますが、わかりやすい発信をしていくために、「まんが紙芝居」を順次発表していくことにしました。

まずは、顧問である小泉純一郎元首相にとる2019年4月に行われた講演会「日本の歩むべき道」講演を元に構成しました。(データは2023年7月現在のものです)是非SNSなどで拡散してください。
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汚染水の海洋放出を中止し、汚染水を増やさない、流さない方法を

木村結

東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質は、気体状のものを除いて52京(京は1兆の1万倍)ベクレルと推定されている。風で陸側へ飛んだ放射性物質の約7割は、福島周辺の森林に降り注いだ。森林は大部分が「除染」されていない。放射性物質は自然に「崩壊」しつつも一部は樹木や土、水、動植物の間を循環しており、住民の生活にも影響を残している。

これは、読売新聞オンラインの2021年3月4日の記事ですが、私たちは常に「福島原発事故は続いている」という認識に立っていなければいけません。原子力非常事態宣言は発令されたままです。

東電は、40年で廃炉を完了するという工程表を見直していないため、「40年廃炉」が既成事実であるかのように報道されており、後30年で廃炉が完了すると信じている方もいるようです。「アルプス処理された処理水」を30年間海洋放出すると発表し、地元の住民や世界各国の市民の反対を無視して強行しました。

30年間で放出が終了する、海洋放出しか方法がない、トリチウムは基準値以下であるとメディアは報道していますが、地下水とデブリの接触を食い止めるために地下水バイパスを作ることもせず、アメリカの核施設で実績のあるモルタル固化などの方法も検討せず、安易にコストの安い海洋放出に固執しているのです。

また、直接核燃料と接触していますので、トリチウム以外の62種類の放射性物質も汚染水には含まれています。世界諸国から反対されているのに海洋放出を強行し、中国からの海産物の輸入禁止などの反発を想定していなかった政府。海洋放出なら34億円で最もコストが安いという計画でしたが、風評対策に既に200億、そして設備費も膨らんで437億(東電2021年)安易な方法は日本の孤立を招き、費用も膨大に膨らみます。

今からでも遅くありません。福島漁業関係者も訴訟に立ち上がります(9月8日予定)海洋放出を中止し、モルタル固化など、研究者や市民が提案している地球環境に配慮した解決策を検討すべきだと思います。メディアも海洋放出が前提のような報道ではなく、汚染水をこれ以上出さないための根本解決策も含め、世界の叡智を集めることに協力して欲しいと考えます。

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*はじめに 3.11で日本を救った大キリンを覚えていらっしゃいますか?
*自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言
を発表し、各社に送付しました。
*「希釈」という汚染水処理の論理はいじめや差別と同じ悪の隠蔽手段だ
*「原発ゼロと人類」講演動画
前号89号(5月29日配信)が配信されなかった方が約160名いらっしゃいますので、その方々のために再掲いたします。

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3.11で日本を救った大キリンを覚えていらっしゃいますか?

最近Netflixで配信されました福島原発事故をテーマにした8話のドラマ「THE DAYS」
ご覧になられた方はいらっしゃいますか?

劇映画として一作年公開された「フクシマ50」は吉田所長をヒーローとして描いておりましたが、今回脚本を書いた増本淳氏が単なるヒーローものにはしたくないと語っていたこともあり、期待して観ました。しかし、参考資料としてエンディングに流れたのは、「フクシマ50」と同じ門田隆將氏の著作と、東電福島原発の記録、吉田調書の3点のみでした。「真実の物語」と8話全ての導入にテロップが入るのに、この12年間で多くの書籍が出され、東電のテレビ会議も公開され、多くの裁判で学者や技師者が証言しているのに、それらをまったく読んでいないのです。

1話57分で8話ですから、作業員の動きなどはとても丁寧に描かれています。例えば燃料プールにあったため燃料棒が剥き出しになる危険性が高まった4号機に自衛隊のヘリコプターが上空から水をかけるシーンは、全く効果がなかったにもかかわらずかなり克明に描かれています。

しかし、事故状況を見ていた当時中国企業の日本代表であった龍潤生さんが、日本にあるアームの長さ54mのコンクリートポンプ車「大象」では足りないと感じ、ドイツに輸出されることになっていたコンクリートポンプ車(アームの長さ62m)が上海港にあったのを急遽日本に輸送し寄付しました。大活躍し「大キリン」と呼ばれ、ニュースでその姿を見た方も多かったと思います。ドラマでは、寄付の経緯などには一切触れず、突然吉田所長役の役所広司が「キリンはどうした」と叫び画面に登場するのです。

「大キリン」の経緯をツイートしましたら「大キリン」は知っていたが、中国企業が日本の窮地を救ってくれたことを全く知らなかったと拡散されました。ネットを見るとこの情報は以下の「華僑報網」たった一つしかないのです。それも2016年に小泉純一郎元総理が龍潤生さんと会食し、龍さんが会計をしようとすると小泉さんが、日本を救ってくださった方に払わせる訳にはいきませんと言ったことが記事になっています。つまり日本の報道機関は日本の半分の土地に人が住めなくなる、約5000万人が移住しなければならなくなる「最悪のシナリオ」を回避してくださったこの話をどこも報道していないのです。

もっとこの事実を多くの人々に知らせなければならないと、改めて思いました。
是非お読みください。

http://wap.jnocnews.co.jp/nshow.aspx?menuId=8&id=55459

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2023年6月8日

自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会長    吉原毅
顧問  小泉純一郎
副会長  中川秀直
幹事長  河合弘之
事務局次長 木村結

自然エネルギー(とくに太陽光発電と風力発電)への大転換は、気候危機、エネルギー自立と安全保障の切り札として、全世界で拡大がますます加速している。当連盟が目指す原発ゼロの実現にも大いに貢献する。

ところが今年に入って、九州電力を筆頭に、ほぼ全ての電力会社による自然エネルギーの出力抑制が一段と激しくなっている。九州電力の今年4〜5月の出力抑制は44回(昨年24回)・抑制率39%(昨年13%)に達した。中国電力の今年4〜5月の出力抑制は36回(昨年7回)・抑制率31%(昨年8%)に達した。6月4日には、ついに関西電力までも出力抑制を開始した。日本全体の自然エネルギー電力比率はまだ22%(2022年末。うち太陽光+風力は12%)に過ぎないのに、これほどの出力抑制は異常である。

この低い自然エネルギー比率の段階でこれほどの激しい出力抑制をしていては、「自然エネルギー100%」どころか、国が掲げる2030年の自然エネルギー導入目標(36〜38%)や「主力電源化」さえ、およそ実現できない。

以下、国と電力会社が自然エネルギー出力抑制の前にすべき7点を提言する。

その1:自然エネルギー(太陽光+風力)を最優先し、原発を停止すべし
自然エネルギー(太陽光+風力)は、原発と比べると、経済的にも限界費用が最も安く、エネルギー安全保障的にも純国産資源であり、環境的にも核廃棄物やCO2などの汚染がないなどから、エネルギーとして最優先されるべきである。事実、欧州や米国など日本以外のほとんどの国や地域で、自然エネルギーは最優先されている。
したがって、国が定める優先給電ルールを「自然エネルギー最優先」に見直すべきであるとともに、そもそも原発はテロや事故があれば国家滅亡の危険があるので、直ちに停止し、廃炉すべきである。

その2:出力抑制に対して経済的補償すること
現在、電力会社が行っている自然エネルギーの出力抑制は需給調整と系統安定化のためであるから、ドイツが行っているように、自然エネルギー発電事業者に対して託送料金を原資として経済的な補償を行うべきである。
なお、系統連系契約時の旧ルール・新ルール・無制限無補償などは、優越的地位を濫用した違法な契約条項であり、直ちに撤廃すべきである。

その3:完全な発送電(所有権)分離と電力市場の抜本的な見直しを行うこと
出力抑制を行っている一般送配電会社は旧一般電気事業者の「子会社」であるため、自然エネルギーの出力抑制をして、自社の火力発電や原発を優先することは、利益相反行為そのものであり、違法である。最近でも不正閲覧問題を起こすなどモラルハザード、違法行為を起こしており、直ちに完全な発送電(所有権)分離を行うことが不可欠である。加えて、卸電力取引所など電力市場に対して圧倒的に市場支配が大きい旧一般電気事業者の自社内取引が有利な構図を廃する電力市場の見直しを行い(内外無差別)、容量市場や需給調整市場も蓄電池による柔軟性向上が進むように見直しを行うこと。

その4:火力発電を出力抑制に使い、かつ最低出力まで落とすことを徹底すること
自然エネルギー(太陽光+風力)は、経済的にも、エネルギー安全保障的にも、環境的にも最優先すべきであり、これを出力抑制するのではなく、電気の需給調整には、火力発電を弾力的に運転し、出力抑制に使うべきである。
我々の調べでは、電力会社は自社の火力や購入契約火力の出力を充分に落としていない状況があると疑われる。電力会社は火力発電毎の運転状況の情報公開をするとともに、既存の優先給電ルールに従うとしても、火力発電はさらに大幅に削減できるはずであり、これを徹底すべきである。

その5:電力会社を超えた広域で自然エネルギーを利用すること
自然エネルギーの出力抑制は、各電力会社の需給調整の都合でしかなく、全国的に電気が不足していても、各電力会社では出力抑制が行われているなど、せっかくのエネルギーを無駄に捨てているのが我が国の実態である。こうした無駄を無くすため、すべての電力会社管内を越えて送電網を開放し、全国レベルで活用すべきである。火力発電の最低出力化や地域関連系線の最大活用、さらに抑制対象外となっていると推測される電源開発の石炭火力(長崎県松島・松浦火力、徳島県橘湾火力など)も抑制すべきである。

その6:系統蓄電池を急速かつ大幅に拡大すること
これから飛躍的に自然エネルギー(特に太陽光と風力)を拡大していくことが必要であることを考えると、本質的には、系統全体の柔軟性が欠けていることが最大の課題である。短期的に系統全体の柔軟性を増すには、系統蓄電池の急速かつ大幅な拡大をすべきである。現在、蓄電池は世界的に爆発的な拡大期に入っており、これは日本でも導入可能であるだけでなく、日本の蓄電池産業や市場を創出するためにも貢献しうる。
具体的には、現状、約10GWの系統蓄電池の計画が把握されているが、これを2030年までに最低でも5倍・約50GW・200GWhの目標を掲げ、普及拡大策を採るべきである。
この系統蓄電池拡大を補完するため、既存のFIT太陽光発電所やFIT風力発電所
に対しても、FIT価格を維持したまま、事後的な蓄電池設置を認めるべきである。
その7:需要側でも柔軟性を急速かつ大幅に拡大すること
系統全体の柔軟性を増すには、需要側でも対応することができる。需要応答(DR)も導入されているものの、未だに充分に進んでいない。需要側に蓄電池を設置拡大してこれをアグリゲーション(取りまとめ)して需要応答(DR)に活用することは、系統全体の柔軟性向上に加えて、乱高下する電力市場の安定化にも貢献し、需要家の収益機会にもなるため、ウィン・ウィン・ウィンとなる良策である。
容量市場などでの優遇策や需要側蓄電池の普及拡大策を含めて、需要も柔軟性を急速かつ大幅に拡大すべきである。                     (以上)

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「希釈」という汚染水処理の論理はいじめや差別と同じ悪の隠蔽手段だ

小宮武夫

希釈という言葉を辞書で引くと「溶液に水や溶媒を加えて薄めること」(岩波国語辞典)と書いてある。放出時には基準値をクリアーして安全と見せかけるが、子ども騙しに過ぎない。膨大な放射性物質が海洋に堆積されることは馬鹿でもわかる。

私たち老人世代は親に「たとえ一銭なりとも人の金をくすねれば盗人となって刑務所に入るんだよ!」と厳しく社会生活のモラルを躾られた。今度の汚染水の希釈は海という偉大な「他者」からコッソリ一銭くすねることではないか。もはや東北の大地は原発事故で大量にくすねられたのだから一銭ぐらいと希釈を大目に見る向きもあるが、最低限のモラル(一銭のゴマカシ)が崩れることで嘘が嘘を呼び、世界はとめどなくモラルの退廃が進むのだ。そもそも核という未完成の科学を人間の倫理のチェックなしに権力と富への欲望に利用をまかせたところから騙しが始まった。人を欺くのに「希釈」という子ども騙しを使うのも権力者の悪を隠蔽する常套手段のひとつだ。

一方、私たちの心の内にも騙されやすい誘因が芽生えている。本来人は他者と直に向き合うことで、ひとりの人間としてその存在を認められる。他者とは現存の人ではなくても死者でも身近な自然であっても良い。他者と向きあうことで相手から承認の反応が来る。ところが情報社会に入って膨大な情報が人々をとり囲む今日、もはやプライベートも仕事もインターネットの処理に忙殺される。本来人間が発するえもいえぬ臭いや背負っている影は消えない、誰かが使い古した情報に「いいね」のお世辞を交換し合う。やがて情報が溶解して希釈し、処理する個人の自我も失われ全体(システム)に埋没する。むしろそうなった方が安全無害で居心地が良いのだ。心の異分子を希釈して有害な放射性物質を海に隠蔽するのと同じプロセスだ。行き着くところは差別といじめ。異分子は仲間から汚物として冷たく扱われる。

世界の二極化構造も同じ希釈の論理で廻る。経済危機が起こるやドルをつぎ込み、底辺にマネーが届くように赤字財政もいとわない。まさに通貨の大量発行、価値の希釈であり、財政規律(モラル)の死滅である。

原発被災地の漁師たちが希釈に反対するのは「大切な海を汚されることに、変わりはないからです」(5月27日朝日新聞朝刊オピニオン)その海から希釈という取引で金銭をかすめとるのは大切な海に対する冒涜、ひいては漁師としての誇りと自我を失うことだ。

原発反対は単に補償や安全対策の運動ではない。原発で郷土を奪われ、更に希釈で海洋まで侵されようとしている今日、私たちが喪失しかけている自我を再発見する手だてとなるのが原発という醜悪な他者なのだ。原発と対峙する運動は自分を回復する反希釈の運動でもあるのだ。             (了)

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以下は、前号第89号(5月29日配信)が届かなかった約160名の方のために再掲いたします。
怪しいメールと判断して受信を拒否されたようです。この回復にはいつもボランティアで助けていただいている友人の協力をいただきました。
配信が遅くなったことお詫びいたします。

広島で開催されたG7は好意的報道が多いようで岸田内閣の支持率はアップしています。原自連の協力メンバーであるピースボートの共同代表の畠山澄子さんに報告を伺いました。ピースボートではI CAN事務局(ノーベル平和賞受賞)として、G7に向けての政策提言に「核軍縮」の項目を入れるようロビー活動を続け、ようやく今年実現、4月に提言書をまとめました。G7ではメディア会場にスペースを確保し、各国からのインタビューに応え、情報発信に努めました。しかし、サーロー節子さんがメディアに答えたように、事務局が予め用意した文書にサインしただけ。原爆資料館を見学し、被爆者の証言を聞いたにも関わらず人間味が感じられるものとは程遠く、核の抑止力を認めた点でこれまでより後退した内容になってしまったと話されました。畠山澄子さんは、TBSのサンデーモーニングに毎月1回コメンテーターとして出席され、世界各国で市民交流を続けている視点で発言されています。
G7に肯定的なメディアの中で、市民団体が参加し、監視し、そして発信することを続けているピースボートなどの市民団体の重要性を痛感しました。ピースボートへのご支援もお願いします。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/251475
https://peaceboat.org

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「原発ゼロと人類」講演動画             中川秀直副会長
4月の幹事会の月例会で、中川秀直さんの講演を行いました。各地で、大学で講演されている内容を常に最新のデータを入れてブラッシュアップしていただいた50分の動画です。当連盟の賛同人であった坂本龍一さんへの追悼が冒頭に入っていましたが、著作権の関係で割愛させていただいています。拡散、ご活用ください。

http://genjiren.com/2023/05/18/nakagawahidenao_speech/

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事務所が移転しました。
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7装美ビル602
TEL03-6709  FAX 03-6709-8712(変更なし)

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「原発ゼロと人類」中川秀直元科学技術庁長官講演ビデオの拡散をお願いします

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原子力規制委員会への要請 「3.11福島原発事故を反省した設立の原点に立ち返れ」

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原子力規制委員会に要請書を提出
お知らせ 映画、イベント、書籍など

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ロシアがウクライナに侵攻してから1年が経ってしまいました。まだまだ化石燃料の依存度が高い欧州はじめ世界でエネルギー危機が叫ばれ、日本ではこれに乗じて原発回帰の動きが加速しています。

昨年末で原発ゼロを決めていたドイツが原発運転の延長を決めましたが、それも4月の半ばまでです。3.11の福島原発事故を受け、メルケル首相の英断で原発ゼロへの道を示したドイツの再生可能エネルギーは昨年末46.9%に達しました。この動きは誰にも止められません。

原自連の顧問小泉純一郎さんの口癖は「首相が決断すれば原発ゼロはできる」。日本も福島原発事故を反省し、原発ゼロを決定していれば、電気代高騰に脅されることはなかったのではないでしょうか?私が契約している新電力は再エネ率が8割。電気料金は7月の電力調達調整額が加わった際に上がっただけです。(300kWhで月額1320円)みなさまも原発や化石燃料に依存する電力会社から再エネ中心の電力会社に移行することで自然エネルギーの普及を促進させましょう。

この間の政府のGX実行会議、規制委員会の原発運転延長承認の流れを止めて行かなければなりません。                 (木村結)

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2023年3月2日
原子力規制委員会
委員長 山中 伸介 殿

 

原子力規制委員会への要請
「3.11福島原発事故を反省した設立の原点に立ち返って」

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会 長  吉原  毅
顧 問  小泉純一郎
副会長  中川 秀直
幹事長  河合 弘之
事務局次長 木村 結

 
原子力規制委員会は、政府が唐突に打ち出した「原発の運転延長」問題を話し合う中で、延長に反対した石渡明委員に誤解があるとして再審議をしました。しかし、議論を聴いている国民からすれば、石渡委員は決して「誤解」などしておらず、「原発推進にとって都合の悪いこと」であっても臆することなく、「勇気をもって正論をのべている」ことがよくわかります。

石渡委員は、地質学の専門家の立場から明確に危険性を増す運転延長には反対を貫きましたが、議論を尽くすことを旨としてきた委員会は、多数決で運転延長を承認しました。これは委員会が「委員会」の役割である議論を放棄して、「問答無用の正当化のための機関」に成り下がったことを示したものです。しかし、他の委員からも結論を出す期日が決まっていたのはおかしいなどの異論も出されました。この結果、結論を保留したのですが、その翌日、政府は、>運転延長を含む方針を閣議決定し、規制委員会の了承が後追いになるという、極めて異常な出来事が起こりました。

つまり、内閣総理大臣及び各大臣は科学の専門家でもないのに、専門家である規制委員会の結論を聞く前に、勝手に原発の運転延長を決定するという、民主主義国家として信じられない前代未聞の強硬手段をとったのです。

そもそも、12年前の3.11福島原発事故の反省から、原子力保安院が原発を推進する原子力安全委員会と同じ経産省の建物にあり、人的異動も行われていることが問題視され、原子力規制庁が発足し、霞ヶ関とは距離を置く六本木のビルに移転した経緯があります。このように場所まで移転して安全性に特化した審査を行うと独立したはずの規制委員会ですが、実態は経産省との人的関係が依然として濃密であり、2月初めには経産省エネルギー庁の職員と非公開で情報交換していた事実も発覚しており、またもや原子力推進の虜になってしまったと言わざるを得ません。

記者会見の場では記者から、過去の国会での専門家証人から出された配管の応力腐食の危険性や、定期点からわずか2ヶ月で緊急停止した高浜4号機のことなども議論する時間もなく結論を急いだのはおかしいのではないか、との指摘がされています。

福島原発事故の際、「安全神話」が嘘であったことを国民は知り、規制委員会に「国民の安全」を託しました。規制委員会こそ、原発推進の虜にはならない独立した機関として、国民を守ってくれるものと考え、信頼を寄せたのです。しかしながら、その実体は、国民の期待を大きく裏切るものです。今回の石渡委員の孤軍奮闘だけが、私たち国民にとっての希望の星です。

規制委員会(委員各位と事務局)は設立の原点に立ち返り、国民の期待と負託に応え、何よりも国民の安全を確保することを第一に考えて、環境に放射性物質を二度と拡散することのないよう、独立性を保ち、正しい議論を積み重ねて、危険な原発の稼働を厳しく規制する機関として存在していただきたい。それを、改めて強く切望します。
以上

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*映画『放送不可能。』が各地で上映されます。

https://www.youtube.com/watch?v=0BdCRJFX1q4
3月10日から福岡のキノシネマ天神
https://kinocinema.jp/tenjin/movie/movie-detail/1206
3月11日から横浜のシネマ ジャック&ベティ
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3137/
4月1日~7日、新宿のK’sシネマにて

みなさま、是非お近くの映画館に上映をリクエストしてください。

*月刊誌「世界4月号」に小泉純一郎さんのインタビューが掲載されます。

*「ピースオンアース2023」に小泉さん登壇
3月11日(土)14時頃 日比谷公園
311本の白い幟がはためく中、多くのアーティストと市民の交流の場でスピーチ
https://peaceonearth.jp

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原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)
事務局次長 木村結
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ウィランド・ワーグナーさんとの意見交換会報告

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┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓     第87号 2022/11/29
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原自連では、毎月定例の幹事会を行っておりますが、講師をお招きして原発や自然エネルギーについての学習をすることがあります。
できるだけみなさまにも共有したいと考え、ホームページにアップしております。
10月は、飯田哲也さんに「自然エネルギーの現状:再生可能エネルギー100%は世界の科学者の主流」をレクチャーしていただきました。40分で世界全体や各国、地域で再生可能エネルギー100%が低コストで実現できる明るい未来に向かっている姿と、日本国内の自然エネルギーに立ち塞がる数々の規制と原発に固執する現状を明確に知ることができますので、是非ご覧ください。「講演:自然エネルギーの現状:再生可能エネルギー100%は世界の科学者の主流」

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11月は、ドイツシュピーゲル誌の元日本特派員のウィランド・ワーグナー氏が日本にいらしているとの情報を受け、幹事会にお招きして意見交換会を行いました。お話の内容をまとめたものを共有いたします。

<意見交換会>
ゲスト
ウィランド・ワーグナー氏 (Wieland Wagner)
ドイツ在住ジャーナリスト、シュピーゲル誌の日本特派員、中国特派員を、20年以上に渡り歴任

ドイツの事情
ウクライナ戦争は、経済戦争であり、産業基盤が崩れる危機を招くドイツはとても暗い雰囲気です。エネルギーの値段はとても上がって、昨年は毎月200ユーロだったのに、今年は倍以上支払っています。近くのパン屋さんが何軒も閉店し、ドイツトップのトイレットペーパーの会社も倒産しました。信号機連立(3党のテーマカラーが赤緑黄のため)は、ロシアのガスをあてにして再生可能エネルギーを促進していく予定でしたが、厳しい状況です。

ドイツは、物作りの国であり、GDPの18%を占めています。フランスは9%であり、アメリカは11%。物作りは多くの電力や熱を使用し、特に熱不足は大きな打撃となっています。その上、バイデン政権はインフレ抑制のために国内生産を優先し、水素社会を進めるために投資を集中させています。ドイツの基幹産業である自動車メーカーなどは、アメリカ国内に工場を移転する動きが加速されている。また水素社会への転換を促進するために欧州各国も投資を集めなければならなくなっているのです。

ドイツは今年末までに原発ゼロを決めていましたが、来年の4月半ばまで延長を決めました。ウクライナ情勢次第ということもあり、長期予想ができないので、更に延長される可能性はありますが、長い延長はできません。何故なら、かつてドイツには17機の原発があり、30%を賄っていましたが、福島の事故を受けて脱原発を決めて原発を減らし続け、今は3機になりました。動いている3機の原発の最後の安全審査は2009年に行われており、安全審査をする機関もなく、新たな燃料棒の手配もできないからです。原発会社も大手企業もコスト面からも延長には前向きでなく、既に会社の方針を脱原発に転換しているからです。

また、最終処分場については連邦議会の決定が必要ですが、候補地はまだ調査段階であり、まだまだ不確定です。更に旧東ドイツのバルト原発は30年前から解体作業が行われていますが、廃炉費用に1機10億ユーロ掛かると試算されており、脱原発は国民的DNAとなっています。更にこのエネルギー危機で自然エネルギーへの期待が高まったのも事実です。ドイツも官僚支配が強く様々な規制や手続きがあり、風力発電の認可は7年位掛かっていますが、それをスピードアップするよう指示が出ているので促進されるでしょう。

ドイツの電力構成は風力23.8%、太陽光12,2%、バイオマス7.3%、水力2.9%、再生可能エネルギーで46.2%に達しており、原発は5.8%。ウクライナ戦争による電力不安から自然エネルギーに転換する動きが加速しているのはプーチンのおかげです。

フランスの事情
フランスは大統領制であり、非常に強い権限が集まっています。ドイツの連邦制と異なり日本同様中央集権国家のため、何事もパリで決められているので日本同様強固な原子力ムラが存在します。今年は56機の原発のうち半分は地球温暖化のため、川が干からびて原発の冷却水を供給できないため停止しています。労働者のストライキもあり、技術者が集まらないこともあり、現在ドイツから電力供給を受けている状況があるのです。

しかしマクロンさんは、新規原発建設や、60年の運転延長を画策中です。ラ・アーグの再処理場には世界最大の中間所蔵施設もあり、強気です。ただ最終処分場が決まっていないのは他国と同じですが、ビュール近郊で調査などが行われていますが、そこは粘土岩で、フィンランドの花崗岩とは異なることが最近問題になっています。

フランスはトリチウムなどを含む処理水を2020年に2週間半にわたって福島で保管されているのとほぼ同量を太平洋に放出しました。テレビでも報道されたようですが、その際フランスで議論が起こっていないことも問題だと思います。運転中の排水も川に放出しており、下流の住民はその水で生活しているので、民間団体は調査しています。

フランスの電力構成は、水力13%、風力7.9%、太陽光2.5%、バイオマス1.9%と再エネ合計で25.3%しかなく、原子力は67.1%(2020年)フランスはイギリスなどで原発を建設していますが、膨大な建設費が掛かっており、投資を集めたいので、EUタクソノミーに原発を加えようとしたと思われますが、私は原発をグリーンエネルギーだとは思っていません。

EU全体でも2030年までに再エネ40%を目標にしていますので、原発回帰になるとは考えていません。EUが一致団結しなければ、アメリカに対抗できないので、とても重要な問題です。(文責 木村結)

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“届かない電報”が予見したもの
―加藤寛先生の原発反対の源流

小宮 武夫

昔、「渚にて」と云う洋画があった。核戦争で地球が滅びる話だが、戦争や破壊の場面は一切なく、放射能が徐々に地球を覆って静かに死を迎える人々の日常を“死者の目”で描いている。印象に残っているのは原子力潜水艦が海底で生き残り、乗組員が死の街サンフランシスコから発せられる正体不明の電波に望みをかけ上陸し、死を賭して発信元をつきとめる場面だ。しかし、そこは風がキイを動かしている無人の通信室だった。死に瀕してでも未知の人と出会うあこがれ、人間の持つ愛の本質が核によって見事に砕かれてしまう。“届かない電報”の悲劇がそこに見てとれる。

三十年前、私は邦銀の駐在先メキシコで大地震に遭遇した。唯一の通信手段だったテレックスが建物崩壊で途絶し、東京では私の死亡説も検討されていたようだ。

勤務が終わった数年後、大学の恩師加藤寛先生を訪ねたところ「あの時すぐ君に電報を打ったけれど返事がなかった。届いたのだろうか?」と、とても心配されておられたのだ。そのお気持ちに触れて私は絶句したままだった。それからは心の中に今も先生の“届かない電報”が漂っている。

その後、日本でも大震災が起こり、原発事故を招いた。そして日本経済も低迷し核を持つ普通の三等国へと転落途上である。加藤先生があえて“届かない電報”を打ち、原発を廃止するよう遺言されたのは単に核が危険だからと云う理由ではない。彼が信奉するイギリスの経済学者ピグーの政策理念“ウォームハートとクールヘッド”が核や原発でことごとく破壊されるからだ。人に対する温かい思いやりと冷静な頭脳こそ政策を実施する者に求められる。しかし核や原子力は地球の大気圏に持ち込めない異世界の制御不能な本性を持っている。その戦慄すべき暴力を文明の利器と偽って物の本質を考えずに、イマ、ココの快楽に関心を向けさせる権力者達。ひとたび核という欺瞞の虚構を組み立てれば欺瞞が欺瞞を呼び、財政も金融も権力者の利益のための方便となり、フェイクニュースとして大量に拡散される。元凶は原発と核だ。SNSにしても本当に相手の心にメッセージは届いているのだろうか。“届かない電報”は今やインターネットの隠された墓場で何百億の怒りに膨張し唸りをあげながら吐口を探しているのではないか。新しいファシズムの温床はそこにあるのかも知れない。

私達が原発に反対するのはそうした嘘に対抗し、まず思いやり(ウォームハート)を持った人間として自立するためだ。自然エネルギー(太陽光)を使って家族や地域で思いやりの世界をつくっていく。すると“届かなかった電報”も少しずつ届くようになる。“新しいファシズム”に対抗する新しい民主主義はこうして脱原発の運動から始まるのだ。

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