大飯原発の行政訴訟で勝訴

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┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓     第63号 2020/12/27
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前回お送りした寿都町の現地からの声には多くの反響があり、メルマガ登録者も増えました。

今回は、大阪地裁の判決について会員の山崎久隆さんが「脱原発・東電株主運動ニュース」に書かれた原稿を転載させていただきます。山崎久隆さんは、30年以上前から脱原発運動をしておられ、原発の構造についても東電の動きについても詳しい市民運動家です。

来年は、東日本大震災から10年を迎えます。国や東電は一刻も早く人々の記憶から消し去り、新たな「安全神話」を創ろうとしています。原自連では福島原発事故を風化させないため、行動を企画中です。

みなさまがお迎えになられる2021年が佳き歳であるよう願っております。

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大阪地裁、規制委「看過し難い過誤、欠落がある」と指摘
判決からわかる原発の耐震性能欠落とは
大飯原発の行政訴訟で勝訴
山崎 久隆

20年12月4日、大阪地裁の森健一裁判長は、福島第一原発事故後の行政訴訟(国・行政機関が行った行為の違法性を問う裁判)としては初めて、原発の設置許可を取り消す判決を下した。

当日の判決公判、法廷で裁判長が「大飯発電所3号機及び4号機に係る発電用原子炉の設置変更許可を取り消す」と言い渡すと、傍聴席はどよめき、拍手がわき起こった。(毎日新聞より)

この裁判は、2012年に127人の市民により起こされた。
起訴状と原告側準備書面では、許可取り消しを求める要因は基準地震動以外にも、いくつも提起していたが、判決では「基準地震動を求める手法について瑕疵があり、その結果運転許可を取り消す」と判断され、他の訴因、基準津波の評価の誤りや制御棒挿入遅れなどについては残念ながら却下されている。

判決を一言で表せば「地震は過去の平均値では起こらない」。この当然のことが裁判により認められた。

過去の地震対策は無きに等しい存在
今まで、原子力施設の基準地震動は何処も何度も引き上げられてきた。それだけ最初の設定が大きく間違っていたことを意味する。

それを国(規制側)も事業者も認めざるを得なかったのが現実だ。
福島第一原発事故までに、2007年中越沖地震の柏崎刈羽原発など3原発で3度も基準地震動を超える地震に遭遇し、ついに2011年3月11日を迎えて
しまった。ここでも2原発で基準地震動を越える揺れを観測している。言い換えるならば原発近傍で発生したマグニチュード6.5を越える地震では、全部想定を大きく超えたのである。

2011年以前に、当時の原子力安全・保安院は「残余のリスク」として、基準地震動を越える地震による施設、設備の損傷への対策を指示していたが、法令による強制ではなく事業者の自主的取り組みに据え置かれていた。そのため、事業者の取り組みも対策手法もおざなりで、その結果についての審査も行われていなかった。

設置許可を揺るがす行政手続きになっていなければ巨額の費用を掛けて安全対策をする理由が事業者側に見いだせない。言い換えるならば株主、この場合は私たち株主運動のように、原発の危険性に警鐘を鳴らす立場ではなく、巨額の費用支出により経営状態が悪化する可能性があると懸念する機関投資家などの一部のことだが、株主も納得しないなどと、事業者は抵抗していた。

結果として耐震補強などの一定の対策はしたものの、巨額の費用が発生しない範囲で基準地震動を設定し、経営層による津波評価もほとんどゼロ査定だった。

東日本大震災までに有効な津波対策をした原発は一つもない。偶然、東海第二だけで、浸水深想定を引き上げたため追加設置した海水ポンプの防護壁が、3.11に間に合い、5.4mの津波に襲われたが、辛うじて3台中2台の非常用ディーゼル発電機冷却用ポンプは海水をかぶることなく動き続けることが出来、最悪の「メルトダウン」を回避できたが、外部電源設備4系統については地震で全部遮断され、受電が出来なかったことは耐震性能が不十分だったことを示している。

東日本大震災で破壊された原発の電源
東日本太平洋沖地震による福島原発震災は、津波で破壊されたと国や東電は言うが、その前に地震でも重要設備の多くが破壊されている。特に送電鉄塔をはじめ電源設備の多くは地震で破損し、外部からの電力を受け取れない状態になっていた。

女川原発は、震災時には外部電源5系統の内1回線のみが受電可能であったことに加え、津波到達13mで想定13.8mに辛うじて達しなかったことから主要な冷却システムは稼働できたため冷却が継続できた。

しかし地震により1号機タービン建屋で「高エネルギーアーク損傷火災」(*)が発生しており、電源設備の耐震性は他原発と同様、極めて脆弱だった。

中越沖地震の柏崎刈羽原発3号機で起きた起動変圧器火災と同種のものであり、過去の経験に基づき水平展開をしていれば防止できた可能性があるが、女川も他原発と同様に基準地震動を低く設定していたため、この種の損傷を考慮せず、耐震性能に重大な欠陥があるまま運転し続けた

高エネルギーアーク損傷火災対策の重要な点は、発火しても延焼しないよう不燃性ケーブルをつかうことだが、老朽原発、高浜1、2、美浜3、東海第二は不燃性ケーブルに交換していないことからも、根本的解決はされていない。

また、新規制基準適合性審査を通ったとされる柏崎刈羽原発も女川原発も東海第二原発も、基準地震動が過小に評価されている可能性が高く、その影響で「次の地震」に遭遇した場合には破壊されるリスクが大きい。

東海第二の耐震性評価をやり直せ
その中でも東海第二については、保安院時代に行われた「耐震バックチェック」でさえ「耐震性能がギリギリ」であることが分かっている。

クリフエッジと呼ばれる破壊限界点は「1038ガル」と評価されたのに対し、基準地震動は「1009ガル」と、97%を越えている。つまり「余裕」が僅か3%弱。「ばらつき」「不確かさ」を考慮すれば、明らかに失格であるにもかかわらず、規制庁は「基準地震動を越える地震は想定していない、する必要もない」「基準地震動を越えたとしても直ちに重大な損傷を引き起こす破壊は生じない。なぜなら余裕があるから」などと市民や議員に対して回答してきた。(数次にわたる院内集会や規制庁への行政不服審査口頭意見陳述に対する回答などで)

「規制側である」との立場も、規制値を定めた基本的立場も見いだせない。「基準を越えてもすぐには壊れない」が、規制側の言うべきことではないことは「速度を超過しても直ちに事故につながるわけではない」と警察が言うわけがないことでもわかるだろう。行政機関として絶対に言ってはならないことだ。これらのことから規制庁は「規制基準適合性審査を通過させること」を目的として審査していることが露骨に見いだされるのである。

今回の判決では直ちに原発は止まらない。国(規制委)は控訴することを検討している。控訴されれば許可取り消しの効力は停止する

しかし、行政訴訟において国の審査が違法、無効とされたことは極めて重要である。それは、規制委による調査審議の手法そのものを違法としたからだ。

これで他の原発において行われた耐震性評価も、全部失格だと主張も出来る。
規制委は大飯原発はもとより、総ての原発の耐震設計審査をやり直すまで、規制基準適合性審査の審査書(設置許可)を取り消すべきだ。

(*)高エネルギーアーク損傷火災 アーク溶接は溶接端子と母材の間に放電(アーク放電)する時に発生する5千度から2万度の高温状態を利用して、鋼鉄などの金属を溶かして繋ぐ溶接方法ですが、設備の故障や振動などで発生する端子やケーブルの短絡などにより発生した「アーク放電」により、温度や圧力が急激に上昇し、ケーブルや電気設備を破壊して火災を引き起こす事象です。

なお、判決の要旨は以下の通り。
『関西電力は,大飯原発3号機及び4号機の設置変更許可申請において,各原子炉の耐震性判断に必要な地震を想定する際,地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算した平均値としての地震規模をそのまま用いた。新規制基準は,経験式による想定を超える規模の地震が発生し得ることを考慮しなければならないとしていたから,新規制基準に基づき基準となる地震動を想定する際には,少なくとも経験式による想定を上乗せする要否を検討する必要があった。原子力規制委員会は,そのような要否自体を検討することなく,上記申請を許可した。原子力規制委員会の調査審議及び判断は,審査すべき点を審査していないので違法である。』

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