被災者置き去りの能登半島地震──即刻見直すべき「原子力災害対策指針」

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地震と共に2024年が始まりました。能登半島の先端珠洲市は最も被害が大きく、道路も分断され孤立した集落が多い地域でした。珠洲原発が建設されていなくて良かったと、真っ先に思いました。

身を寄せ合って暮らしていた地域の人びとを分断し、挨拶もし合えない憎しみを残した28年間の闘い。NNNドキュメントの映像をご覧ください。
https://www.dailymotion.com/video/x2e3fj8

全国には珠洲をはじめ、原発建設を拒否した、拒否し続けている町が64箇所もあります。原発は建設されても、建設が中止されても放射能の被害の前に地域の人びとの心を蝕んでしまうのです。「地域振興・地域発展・生活向上」という美辞麗句で。

3.11直後原発事故の被災地で闘った双葉郡の消防士たちを取材した書籍「孤塁」で日本ジャーナリスト会議賞を受賞した吉田千亜さんから記事
被災者置き去りの能登半島地震──即刻見直すべき「原子力災害対策指針」

をいただきましたので、お読みください。最後に吉田千亜さんの書籍もご紹介いたします。2月には子ども向けの書籍も出版されますので、是非お子さんやお孫さんへ手渡してください。

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被災者置き去りの能登半島地震──即刻見直すべき「原子力災害対策指針」

能登半島地震で亡くなられた被災者のご冥福をお祈りし、被災された方にお見舞いを申し上げたい。
2024年は悲しい災害からはじまったが、東日本大震災や熊本地震などと比べても、政府の災害対応が劣化している。災害や原発への危機感、被災者への共感力も乏しくなったように感じる。まず、時系列に見ていきたい。

致命的だった初動の遅れ
1月2日、自衛隊派遣は初動でわずか1000人。航空局が早々に能登半島全体を緊急用務区域に指定し、ドローンが飛ばせなくなった。3日からは関東圏ではテレビが報じなくなった。正月の番組編成のせいかL字テロップすら消えた。
4日頃から報道が少しずつ戻る。石川県と北陸地方整備局は被災地での人命救助や復旧作業を進めるため、能登地方への一般車両の移動を控えるよう協力を呼びかけ。この頃からSNSでは「ボランティアは能登半島に行くな」「迷惑だ」の嵐。一方、岸田首相は『BSフジLIVE プライムニュース』に出演し、総裁選について笑顔で語った。

5日、岸田首相は防災服にバラを付けて3つの新年会(経済3団体、連合、時事通信社)に参加。同日、馳浩石川県知事は県災害対策本部員会議後の取材に「親戚を見に行きたい、炊き出しに行きたい気持ちはわかるが、車で駆けつけることはやめてほしい」と強調。また「県道国道のひび割れで段差が10センチから1メートルくらいあって進めない」「自衛隊のヘリの、空の部隊で運ばざるを得ないということがよくわかりましたので」とテレビ金沢が報じると、「(把握が)遅すぎる」とSNSで批判された。

6日、自衛隊派遣人数は5400人。熊本地震では発災5日後には2万人を超えていた。自衛隊幹部は「一番起きてほしくない場所で起こった」と毎日新聞に語ったが、対応の遅れは、地形だけのせいではないように思えた。

7日、本来予算対応に動くべき与党・小泉進次郎衆議院議員が街頭募金活動のパフォーマンス。千葉県では、陸上自衛隊第1空挺団が8カ国合同で「降下訓練始め」を実施。まさに空からの支援こそが被災地で求められていたが、「貴重な訓練機会だから中止せず実施した」という。

8日には、なぜこれほど道路復旧が遅れているのかと問われた七尾市の建設業者が「行政から発注を受けないと工事ができない。公の道だから自分たちで勝手なことはできない」とNHKの取材に答え 、発注が後手に回っている可能性も示唆された。

9日、ようやく閣議で今年度の予備費から47億3790万円を支出することを決定(後に1000億円)。発災13日後になり岸田首相が被災地を視察、馳知事すら初の訪問だった。1月23日時点で死者233人、災害関連死は15人。安否不明者は19人と発表された。

ここまで被災地の人々が初動から見捨てられるとは思わなかった。これらを踏まえ、原発避難について考えたい。

不信つのる志賀原発の対応
東北大学災害国際研究所が9日、緊急開催した令和6年能登半島地震に関する速報会では、能登半島真下の活断層群が動き土地が4m隆起したことについて「3〜4千年に1度の大ごと」と発表された。今回の津波は陸地の近いところで発生し、珠洲市では、地震発生の1分後に第1波が押し寄せるなど、到達が早かった。津波は能登半島を回り込むように伝わり、弧を描く終着が志賀原発付近となるシミュレーションも披露された。

能登半島の大地震と聞き、人々は当然志賀原発を案じた。今回の震源はまさに志賀原発直近。地震から1時間半後に3メートルの津波が襲来も、9日まで「水位上昇」の言葉でごまかし、漏れた油は3500リットルから5倍強の約2万リットルと修正。10 日には新たな油漏れも報じられた。直後は計測不能のモニタリングポストも14ヶ所に上った。

幸い稼働していない原発であったため現時点で事故の報道はない。しかし放射能漏れを起こすような原発事故が起きた場合、避難は相当厳しい。

9日時点で22地区、3千人以上が孤立し、例えば石川県珠洲市大谷町では、携帯電話の通信状況の改善にはほど遠く、防災無線もラジオの電波も届かないと報じられた。情報もなく、道を寸断されている地域は、文字通りの「孤立」だ。

原発からの避難は不可能
避難はまず「情報」だ。携帯電話は、一部エリアでは復旧したところもあるが、発災9日後の10日午後になっても通信障害が継続している(ケータイWatch)。
次に「移動」だが、図に示した通り、道路の通行止め、しかも主要幹線道路の寸断が激しく、志賀原発だけでなく、柏崎刈羽原発も厳しい状況があった。

さらに避難計画では、UPZ(30キロ圏内)の住民は、PAZ(5キロ圏内)の住民が避難するまで、「屋内退避」で待て、とされている。いま能登半島で「屋内」を確保できている人がどれほどいるだろうか。

ちなみに、奥能登の高齢化率は高く、令和2年で48・9%。令和4年度のUPZの住民を調査したところ、避難時に福祉車両を要する避難行動要支援者数(推計値)は、車いす用で1236人、寝台用で340人とある。一般住民ですら避難が不可能なのに、避難行動要支援者の福祉車両がくるとは思えない。

また、地震直後はガソリンがないというSNSの投稿も多かった。10日時点で7割のガソリンスタンドが回復したというが、大型タンクローリーによる燃料の輸送が始まったのは5日からだ。

原子力規制委員会の山中伸介委員長は、10日、原発で重大な事故が起きた際の対応を定めた「原子力災害対策指針」を見直す必要があるか検討する、と記者の質問に答えた。悠長に「見直しの検討」などと言っている場合ではなく、根本から見直すべきだ。

そもそもこれほど災害の多い日本で原発の存在自体が無理だ。それは、13年前にすでに明らかになっていたのではなかったのか。
(『女のしんぶん』 2024年1月31日号より転載/ライター・吉田千亜)

吉田千亜さんの書籍
*『孤塁 双葉消防士たちの3.11』岩波書店、岩波現代文庫もあり
*『ルポ母子避難―消されゆく原発被害者』岩波新書
*『その後の福島:原発事故を生きる人びと』人文書院
*『原発事故、ひとりひとりの記憶―3.11から今に続くこと』岩波ジュニア文庫2/22発売

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前回ご案内しましたまんが紙芝居「日本の進べき道」に続き中川秀直さんの「人類と原発」は現在製作中です。近日中にお届けできると思います。

まんが紙芝居「日本の進むべき道」
2019年4月に行われた小泉純一郎元首相の「日本の歩むべき道」講演を元に構成しました。(データは2023年7月現在のものです)是非SNSなどで拡散してください。
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書籍ご紹介
*『なぜ日本は原発を止められないのか?:「安全神話」に加担した政・官・業・学そしてマスコミの大罪』青木美希著 文藝春秋
河合弘之さんが2回読んだと大絶賛しました。

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書籍を販売しております。

*『なぜ日本は原発を止められないのか?:「安全神話」に加担した政・官・業・学そしてマスコミの大罪』青木美希著 文藝春秋 (送料含め1100円)
河合弘之さんが2回読んだと大絶賛しました。

*『原発と人類』:副会長の中川秀直元科学技術庁長官が5月に講演したものを映像と豊富な資料でまとめた冊子です。(送料含め1000円)

*『隠されたトモダチ作戦―ミナト/ヨコスカ/サンディエゴ』
ジャーナリストのエィミ・ツジモトさんの渾身のレポートです。書店では入手しにくいので販売します。(送料含め2500円)

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汚染水の海洋放出を中止し、汚染水を増やさない、流さない方法を!

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久々の配信になります。メルマガ配信のシステムが変更になり、前回配信されなかった方が大勢いたため、何度も配信するなどの不手際がありました。その後名簿の整備をしていただきました。ご心配をおかけしました。

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まんが紙芝居「日本の進むべき道」

関東大震災から100年。9月1日が「防災の日」になったのは関東大震災に起因すると知らない人が43%もいるという報道に驚きました。戦争も震災も、そして原発事故も風化させてはいけません。語り継いでいくのは体験した者たち、残された者たちの使命です。

原自連では、毎月幹事会を開催、専門家をお招きしての学習会や議論を行なっておりますが、わかりやすい発信をしていくために、「まんが紙芝居」を順次発表していくことにしました。

まずは、顧問である小泉純一郎元首相にとる2019年4月に行われた講演会「日本の歩むべき道」講演を元に構成しました。(データは2023年7月現在のものです)是非SNSなどで拡散してください。
https://genjiren.com/2023/09/02/anime_roadforward_japan/

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汚染水の海洋放出を中止し、汚染水を増やさない、流さない方法を

木村結

東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質は、気体状のものを除いて52京(京は1兆の1万倍)ベクレルと推定されている。風で陸側へ飛んだ放射性物質の約7割は、福島周辺の森林に降り注いだ。森林は大部分が「除染」されていない。放射性物質は自然に「崩壊」しつつも一部は樹木や土、水、動植物の間を循環しており、住民の生活にも影響を残している。

これは、読売新聞オンラインの2021年3月4日の記事ですが、私たちは常に「福島原発事故は続いている」という認識に立っていなければいけません。原子力非常事態宣言は発令されたままです。

東電は、40年で廃炉を完了するという工程表を見直していないため、「40年廃炉」が既成事実であるかのように報道されており、後30年で廃炉が完了すると信じている方もいるようです。「アルプス処理された処理水」を30年間海洋放出すると発表し、地元の住民や世界各国の市民の反対を無視して強行しました。

30年間で放出が終了する、海洋放出しか方法がない、トリチウムは基準値以下であるとメディアは報道していますが、地下水とデブリの接触を食い止めるために地下水バイパスを作ることもせず、アメリカの核施設で実績のあるモルタル固化などの方法も検討せず、安易にコストの安い海洋放出に固執しているのです。

また、直接核燃料と接触していますので、トリチウム以外の62種類の放射性物質も汚染水には含まれています。世界諸国から反対されているのに海洋放出を強行し、中国からの海産物の輸入禁止などの反発を想定していなかった政府。海洋放出なら34億円で最もコストが安いという計画でしたが、風評対策に既に200億、そして設備費も膨らんで437億(東電2021年)安易な方法は日本の孤立を招き、費用も膨大に膨らみます。

今からでも遅くありません。福島漁業関係者も訴訟に立ち上がります(9月8日予定)海洋放出を中止し、モルタル固化など、研究者や市民が提案している地球環境に配慮した解決策を検討すべきだと思います。メディアも海洋放出が前提のような報道ではなく、汚染水をこれ以上出さないための根本解決策も含め、世界の叡智を集めることに協力して欲しいと考えます。

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3.11で日本を救った大キリンを覚えてますか?

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*はじめに 3.11で日本を救った大キリンを覚えていらっしゃいますか?
*自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言
を発表し、各社に送付しました。
*「希釈」という汚染水処理の論理はいじめや差別と同じ悪の隠蔽手段だ
*「原発ゼロと人類」講演動画
前号89号(5月29日配信)が配信されなかった方が約160名いらっしゃいますので、その方々のために再掲いたします。

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3.11で日本を救った大キリンを覚えていらっしゃいますか?

最近Netflixで配信されました福島原発事故をテーマにした8話のドラマ「THE DAYS」
ご覧になられた方はいらっしゃいますか?

劇映画として一作年公開された「フクシマ50」は吉田所長をヒーローとして描いておりましたが、今回脚本を書いた増本淳氏が単なるヒーローものにはしたくないと語っていたこともあり、期待して観ました。しかし、参考資料としてエンディングに流れたのは、「フクシマ50」と同じ門田隆將氏の著作と、東電福島原発の記録、吉田調書の3点のみでした。「真実の物語」と8話全ての導入にテロップが入るのに、この12年間で多くの書籍が出され、東電のテレビ会議も公開され、多くの裁判で学者や技師者が証言しているのに、それらをまったく読んでいないのです。

1話57分で8話ですから、作業員の動きなどはとても丁寧に描かれています。例えば燃料プールにあったため燃料棒が剥き出しになる危険性が高まった4号機に自衛隊のヘリコプターが上空から水をかけるシーンは、全く効果がなかったにもかかわらずかなり克明に描かれています。

しかし、事故状況を見ていた当時中国企業の日本代表であった龍潤生さんが、日本にあるアームの長さ54mのコンクリートポンプ車「大象」では足りないと感じ、ドイツに輸出されることになっていたコンクリートポンプ車(アームの長さ62m)が上海港にあったのを急遽日本に輸送し寄付しました。大活躍し「大キリン」と呼ばれ、ニュースでその姿を見た方も多かったと思います。ドラマでは、寄付の経緯などには一切触れず、突然吉田所長役の役所広司が「キリンはどうした」と叫び画面に登場するのです。

「大キリン」の経緯をツイートしましたら「大キリン」は知っていたが、中国企業が日本の窮地を救ってくれたことを全く知らなかったと拡散されました。ネットを見るとこの情報は以下の「華僑報網」たった一つしかないのです。それも2016年に小泉純一郎元総理が龍潤生さんと会食し、龍さんが会計をしようとすると小泉さんが、日本を救ってくださった方に払わせる訳にはいきませんと言ったことが記事になっています。つまり日本の報道機関は日本の半分の土地に人が住めなくなる、約5000万人が移住しなければならなくなる「最悪のシナリオ」を回避してくださったこの話をどこも報道していないのです。

もっとこの事実を多くの人々に知らせなければならないと、改めて思いました。
是非お読みください。

http://wap.jnocnews.co.jp/nshow.aspx?menuId=8&id=55459

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2023年6月8日

自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会長    吉原毅
顧問  小泉純一郎
副会長  中川秀直
幹事長  河合弘之
事務局次長 木村結

自然エネルギー(とくに太陽光発電と風力発電)への大転換は、気候危機、エネルギー自立と安全保障の切り札として、全世界で拡大がますます加速している。当連盟が目指す原発ゼロの実現にも大いに貢献する。

ところが今年に入って、九州電力を筆頭に、ほぼ全ての電力会社による自然エネルギーの出力抑制が一段と激しくなっている。九州電力の今年4〜5月の出力抑制は44回(昨年24回)・抑制率39%(昨年13%)に達した。中国電力の今年4〜5月の出力抑制は36回(昨年7回)・抑制率31%(昨年8%)に達した。6月4日には、ついに関西電力までも出力抑制を開始した。日本全体の自然エネルギー電力比率はまだ22%(2022年末。うち太陽光+風力は12%)に過ぎないのに、これほどの出力抑制は異常である。

この低い自然エネルギー比率の段階でこれほどの激しい出力抑制をしていては、「自然エネルギー100%」どころか、国が掲げる2030年の自然エネルギー導入目標(36〜38%)や「主力電源化」さえ、およそ実現できない。

以下、国と電力会社が自然エネルギー出力抑制の前にすべき7点を提言する。

その1:自然エネルギー(太陽光+風力)を最優先し、原発を停止すべし
自然エネルギー(太陽光+風力)は、原発と比べると、経済的にも限界費用が最も安く、エネルギー安全保障的にも純国産資源であり、環境的にも核廃棄物やCO2などの汚染がないなどから、エネルギーとして最優先されるべきである。事実、欧州や米国など日本以外のほとんどの国や地域で、自然エネルギーは最優先されている。
したがって、国が定める優先給電ルールを「自然エネルギー最優先」に見直すべきであるとともに、そもそも原発はテロや事故があれば国家滅亡の危険があるので、直ちに停止し、廃炉すべきである。

その2:出力抑制に対して経済的補償すること
現在、電力会社が行っている自然エネルギーの出力抑制は需給調整と系統安定化のためであるから、ドイツが行っているように、自然エネルギー発電事業者に対して託送料金を原資として経済的な補償を行うべきである。
なお、系統連系契約時の旧ルール・新ルール・無制限無補償などは、優越的地位を濫用した違法な契約条項であり、直ちに撤廃すべきである。

その3:完全な発送電(所有権)分離と電力市場の抜本的な見直しを行うこと
出力抑制を行っている一般送配電会社は旧一般電気事業者の「子会社」であるため、自然エネルギーの出力抑制をして、自社の火力発電や原発を優先することは、利益相反行為そのものであり、違法である。最近でも不正閲覧問題を起こすなどモラルハザード、違法行為を起こしており、直ちに完全な発送電(所有権)分離を行うことが不可欠である。加えて、卸電力取引所など電力市場に対して圧倒的に市場支配が大きい旧一般電気事業者の自社内取引が有利な構図を廃する電力市場の見直しを行い(内外無差別)、容量市場や需給調整市場も蓄電池による柔軟性向上が進むように見直しを行うこと。

その4:火力発電を出力抑制に使い、かつ最低出力まで落とすことを徹底すること
自然エネルギー(太陽光+風力)は、経済的にも、エネルギー安全保障的にも、環境的にも最優先すべきであり、これを出力抑制するのではなく、電気の需給調整には、火力発電を弾力的に運転し、出力抑制に使うべきである。
我々の調べでは、電力会社は自社の火力や購入契約火力の出力を充分に落としていない状況があると疑われる。電力会社は火力発電毎の運転状況の情報公開をするとともに、既存の優先給電ルールに従うとしても、火力発電はさらに大幅に削減できるはずであり、これを徹底すべきである。

その5:電力会社を超えた広域で自然エネルギーを利用すること
自然エネルギーの出力抑制は、各電力会社の需給調整の都合でしかなく、全国的に電気が不足していても、各電力会社では出力抑制が行われているなど、せっかくのエネルギーを無駄に捨てているのが我が国の実態である。こうした無駄を無くすため、すべての電力会社管内を越えて送電網を開放し、全国レベルで活用すべきである。火力発電の最低出力化や地域関連系線の最大活用、さらに抑制対象外となっていると推測される電源開発の石炭火力(長崎県松島・松浦火力、徳島県橘湾火力など)も抑制すべきである。

その6:系統蓄電池を急速かつ大幅に拡大すること
これから飛躍的に自然エネルギー(特に太陽光と風力)を拡大していくことが必要であることを考えると、本質的には、系統全体の柔軟性が欠けていることが最大の課題である。短期的に系統全体の柔軟性を増すには、系統蓄電池の急速かつ大幅な拡大をすべきである。現在、蓄電池は世界的に爆発的な拡大期に入っており、これは日本でも導入可能であるだけでなく、日本の蓄電池産業や市場を創出するためにも貢献しうる。
具体的には、現状、約10GWの系統蓄電池の計画が把握されているが、これを2030年までに最低でも5倍・約50GW・200GWhの目標を掲げ、普及拡大策を採るべきである。
この系統蓄電池拡大を補完するため、既存のFIT太陽光発電所やFIT風力発電所
に対しても、FIT価格を維持したまま、事後的な蓄電池設置を認めるべきである。
その7:需要側でも柔軟性を急速かつ大幅に拡大すること
系統全体の柔軟性を増すには、需要側でも対応することができる。需要応答(DR)も導入されているものの、未だに充分に進んでいない。需要側に蓄電池を設置拡大してこれをアグリゲーション(取りまとめ)して需要応答(DR)に活用することは、系統全体の柔軟性向上に加えて、乱高下する電力市場の安定化にも貢献し、需要家の収益機会にもなるため、ウィン・ウィン・ウィンとなる良策である。
容量市場などでの優遇策や需要側蓄電池の普及拡大策を含めて、需要も柔軟性を急速かつ大幅に拡大すべきである。                     (以上)

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「希釈」という汚染水処理の論理はいじめや差別と同じ悪の隠蔽手段だ

小宮武夫

希釈という言葉を辞書で引くと「溶液に水や溶媒を加えて薄めること」(岩波国語辞典)と書いてある。放出時には基準値をクリアーして安全と見せかけるが、子ども騙しに過ぎない。膨大な放射性物質が海洋に堆積されることは馬鹿でもわかる。

私たち老人世代は親に「たとえ一銭なりとも人の金をくすねれば盗人となって刑務所に入るんだよ!」と厳しく社会生活のモラルを躾られた。今度の汚染水の希釈は海という偉大な「他者」からコッソリ一銭くすねることではないか。もはや東北の大地は原発事故で大量にくすねられたのだから一銭ぐらいと希釈を大目に見る向きもあるが、最低限のモラル(一銭のゴマカシ)が崩れることで嘘が嘘を呼び、世界はとめどなくモラルの退廃が進むのだ。そもそも核という未完成の科学を人間の倫理のチェックなしに権力と富への欲望に利用をまかせたところから騙しが始まった。人を欺くのに「希釈」という子ども騙しを使うのも権力者の悪を隠蔽する常套手段のひとつだ。

一方、私たちの心の内にも騙されやすい誘因が芽生えている。本来人は他者と直に向き合うことで、ひとりの人間としてその存在を認められる。他者とは現存の人ではなくても死者でも身近な自然であっても良い。他者と向きあうことで相手から承認の反応が来る。ところが情報社会に入って膨大な情報が人々をとり囲む今日、もはやプライベートも仕事もインターネットの処理に忙殺される。本来人間が発するえもいえぬ臭いや背負っている影は消えない、誰かが使い古した情報に「いいね」のお世辞を交換し合う。やがて情報が溶解して希釈し、処理する個人の自我も失われ全体(システム)に埋没する。むしろそうなった方が安全無害で居心地が良いのだ。心の異分子を希釈して有害な放射性物質を海に隠蔽するのと同じプロセスだ。行き着くところは差別といじめ。異分子は仲間から汚物として冷たく扱われる。

世界の二極化構造も同じ希釈の論理で廻る。経済危機が起こるやドルをつぎ込み、底辺にマネーが届くように赤字財政もいとわない。まさに通貨の大量発行、価値の希釈であり、財政規律(モラル)の死滅である。

原発被災地の漁師たちが希釈に反対するのは「大切な海を汚されることに、変わりはないからです」(5月27日朝日新聞朝刊オピニオン)その海から希釈という取引で金銭をかすめとるのは大切な海に対する冒涜、ひいては漁師としての誇りと自我を失うことだ。

原発反対は単に補償や安全対策の運動ではない。原発で郷土を奪われ、更に希釈で海洋まで侵されようとしている今日、私たちが喪失しかけている自我を再発見する手だてとなるのが原発という醜悪な他者なのだ。原発と対峙する運動は自分を回復する反希釈の運動でもあるのだ。             (了)

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以下は、前号第89号(5月29日配信)が届かなかった約160名の方のために再掲いたします。
怪しいメールと判断して受信を拒否されたようです。この回復にはいつもボランティアで助けていただいている友人の協力をいただきました。
配信が遅くなったことお詫びいたします。

広島で開催されたG7は好意的報道が多いようで岸田内閣の支持率はアップしています。原自連の協力メンバーであるピースボートの共同代表の畠山澄子さんに報告を伺いました。ピースボートではI CAN事務局(ノーベル平和賞受賞)として、G7に向けての政策提言に「核軍縮」の項目を入れるようロビー活動を続け、ようやく今年実現、4月に提言書をまとめました。G7ではメディア会場にスペースを確保し、各国からのインタビューに応え、情報発信に努めました。しかし、サーロー節子さんがメディアに答えたように、事務局が予め用意した文書にサインしただけ。原爆資料館を見学し、被爆者の証言を聞いたにも関わらず人間味が感じられるものとは程遠く、核の抑止力を認めた点でこれまでより後退した内容になってしまったと話されました。畠山澄子さんは、TBSのサンデーモーニングに毎月1回コメンテーターとして出席され、世界各国で市民交流を続けている視点で発言されています。
G7に肯定的なメディアの中で、市民団体が参加し、監視し、そして発信することを続けているピースボートなどの市民団体の重要性を痛感しました。ピースボートへのご支援もお願いします。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/251475
https://peaceboat.org

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「原発ゼロと人類」講演動画             中川秀直副会長
4月の幹事会の月例会で、中川秀直さんの講演を行いました。各地で、大学で講演されている内容を常に最新のデータを入れてブラッシュアップしていただいた50分の動画です。当連盟の賛同人であった坂本龍一さんへの追悼が冒頭に入っていましたが、著作権の関係で割愛させていただいています。拡散、ご活用ください。

http://genjiren.com/2023/05/18/nakagawahidenao_speech/

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事務所が移転しました。
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7装美ビル602
TEL03-6709  FAX 03-6709-8712(変更なし)

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原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
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原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)
事務局次長 木村結
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自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言

自然エネルギー100%に向けて「出力抑制」の前に行うべき7の提言

2023年6月8日

原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟
会  長  吉原  毅
顧  問  小泉純一郎
副会長  中川  秀直
幹事長  河合  弘之
事務局次長 木村  結

自然エネルギー(とくに太陽光発電と風力発電)への大転換は、気候危機、エネルギー自立と安全保障の切り札として、全世界で拡大がますます加速している。当連盟が目指す原発ゼロの実現にも大いに貢献する。

ところが今年に入って、九州電力を筆頭に、ほぼ全ての電力会社による自然エネルギーの出力抑制が一段と激しくなっている。九州電力の今年4〜5月の出力抑制は44回(昨年24回)・抑制率39%(昨年13%)に達した。中国電力の今年4〜5月の出力抑制は36回(昨年7回)・抑制率31%(昨年8%)に達した。6月4日には、ついに関西電力までも出力抑制を開始した。日本全体の自然エネルギー電力比率はまだ22%(2022年末。うち太陽光+風力は12%)に過ぎないのに、これほどの出力抑制は異常である。

この低い自然エネルギー比率の段階でこれほどの激しい出力抑制をしていては、「自然エネルギー100%」どころか、国が掲げる2030年の自然エネルギー導入目標(36〜38%)や「主力電源化」さえ、およそ実現できない。

以下、国と電力会社が自然エネルギー出力抑制の前にすべき7点を提言する。

その1:自然エネルギー(太陽光+風力)を最優先し、原発を停止すべし

自然エネルギー(太陽光+風力)は、原発と比べると、経済的にも限界費用が最も安く、エネルギー安全保障的にも純国産資源であり、環境的にも核廃棄物やCO2などの汚染がないなどから、エネルギーとして最優先されるべきである。事実、欧州や米国など日本以外のほとんどの国や地域で、自然エネルギーは最優先されている。

したがって、国が定める優先給電ルールを「自然エネルギー最優先」に見直すべきであるとともに、そもそも原発はテロや事故があれば国家滅亡の危険があるので、直ちに停止し、廃炉すべきである。

その2:出力抑制に対して経済的補償すること

現在、電力会社が行っている自然エネルギーの出力抑制は需給調整と系統安定化のためであるから、ドイツが行っているように、自然エネルギー発電事業者に対して託送料金を原資として経済的な補償を行うべきである。

なお、系統連系契約時の旧ルール・新ルール・無制限無補償などは、優越的地位を濫用した違法な契約条項であり、直ちに撤廃すべきである。

その3:完全な発送電(所有権)分離と電力市場の抜本的な見直しを行うこと

出力抑制を行っている一般送配電会社は旧一般電気事業者の「子会社」であるため、自然エネルギーの出力抑制をして、自社の火力発電や原発を優先することは、利益相反行為そのものであり、違法である。最近でも不正閲覧問題を起こすなどモラルハザード、違法行為を起こしており、直ちに完全な発送電(所有権)分離を行うことが不可欠である。加えて、卸電力取引所など電力市場に対して圧倒的に市場支配が大きい旧一般電気事業者の自社内取引が有利な構図を廃する電力市場の見直しを行い(内外無差別)、容量市場や需給調整市場も蓄電池による柔軟性向上が進むように見直しを行うこと。

その4:火力発電を出力抑制に使い、かつ最低出力まで落とすことを徹底すること

自然エネルギー(太陽光+風力)は、経済的にも、エネルギー安全保障的にも、環境的にも最優先すべきであり、これを出力抑制するのではなく、電気の需給調整には、火力発電を弾力的に運転し、出力抑制に使うべきである。

我々の調べでは、電力会社は自社の火力や購入契約火力の出力を充分に落としていない状況があると疑われる。電力会社は火力発電毎の運転状況の情報公開をするとともに、既存の優先給電ルールに従うとしても、火力発電はさらに大幅に削減できるはずであり、これを徹底すべきである。

その5:電力会社を超えた広域で自然エネルギーを利用すること

自然エネルギーの出力抑制は、各電力会社の需給調整の都合でしかなく、全国的に電気が不足していても、各電力会社では出力抑制が行われているなど、せっかくのエネルギーを無駄に捨てているのが我が国の実態である。こうした無駄を無くすため、すべての電力会社管内を越えて送電網を開放し、全国レベルで活用すべきである。火力発電の最低出力化や地域関連系線の最大活用、さらに抑制対象外となっていると推測される電源開発の石炭火力(長崎県松島・松浦火力、徳島県橘湾火力など)も抑制すべきである。

その6:系統蓄電池を急速かつ大幅に拡大すること

これから飛躍的に自然エネルギー(特に太陽光と風力)を拡大していくことが必要であることを考えると、本質的には、系統全体の柔軟性が欠けていることが最大の課題である。短期的に系統全体の柔軟性を増すには、系統蓄電池の急速かつ大幅な拡大をすべきである。現在、蓄電池は世界的に爆発的な拡大期に入っており、これは日本でも導入可能であるだけでなく、日本の蓄電池産業や市場を創出するためにも貢献しうる。

具体的には、現状、約10GWの系統蓄電池の計画が把握されているが、これを2030年までに最低でも5倍・約50GW・200GWhの目標を掲げ、普及拡大策を採るべきである。

この系統蓄電池拡大を補完するため、既存のFIT太陽光発電所やFIT風力発電所に対しても、FIT価格を維持したまま、事後的な蓄電池設置を認めるべきである。

その7:需要側でも柔軟性を急速かつ大幅に拡大すること

系統全体の柔軟性を増すには、需要側でも対応することができる。需要応答(DR)も導入されているものの、未だに充分に進んでいない。需要側に蓄電池を設置拡大してこれをアグリゲーション(取りまとめ)して需要応答(DR)に活用することは、系統全体の柔軟性向上に加えて、乱高下する電力市場の安定化にも貢献し、需要家の収益機会にもなるため、ウィン・ウィン・ウィンとなる良策である。

容量市場などでの優遇策や需要側蓄電池の普及拡大策を含めて、需要側でも柔軟性を急速かつ大幅に拡大すべきである。

(以上)

「原発ゼロと人類」中川秀直元科学技術庁長官講演ビデオの拡散をお願いします

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G7に肯定的なメディアの中で、市民団体が参加し、監視し、そして発信することを続けているピースボートなどの市民団体の重要性を痛感しました。ピースボートへのご支援もお願いします。

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「原発ゼロと人類」講演動画             中川秀直副会長

4月の幹事会の月例会で、中川秀直さんの講演を行いました。各地で、大学で講演されている内容を常に最新のデータを入れてブラッシュアップしていただいた50分の動画です。当連盟の賛同人であった坂本龍一さんへの追悼が冒頭に入っていましたが、著作権の関係で割愛させていただいています。拡散、ご活用ください。
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