「ふるさとを返せ津島訴訟」報告

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メールマガジン第110号2025/9/24
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「ふるさとを返せ津島訴訟」高裁口頭弁論報告

    木村 結

原自連幹事の弁護士小野寺利孝さんは、「ふるさとを返せ福島原発津島訴訟」の弁護団の共同代表です。米国で9.11テロ以降全ての原発に義務付けられたB.5.bについて初めて法廷での証言が認められたので、口頭弁論を聴きにくるよう強く勧められましたので、9月19日仙台高裁で傍聴しました。

私は、個人のFacebookで傍聴記をアップしましたところ、大きな反響があり、120件もシェアされました。東京新聞とTBSしか報道がなかったため、このことを広く知っていただくために、木村結のFacebookを皆様に公開いたします。

6.17最高裁判決後、新しい争点が出された。

昨日19日、仙台高裁で開催された福島県津島地区の住民による口頭弁論に環境社会学の専門家長谷川公一盛岡大学学長が証人として出廷。

NRC(米国原子力規制委員会)から、2006年3月、2008年5月の2回にわたって原子力安全保障に関わる専門家に「原発のテロ対策について伝えたいことがある」として英文Faxが原子力安全・保安院長宛てに届いたため、青山伸原子力安全・保安院審議官ら7名が渡米しレクを受けた。

それは2009年の連邦規制として対策が義務付けられ、これに違反すると免許剥奪とされた。米国では、104基すべての原発でこのB5b対策が6ヶ月程度の期間で施された。

保安院は、テロ対策だから機密事項だとして、この対策そのものを原子力安全委員会にも伝えず、対策を指導しなければならない日本の電力会社にも伝えなかったという。

2011年10月24.25日に大阪で開かれた原子力工学国際会議で。B.5.b策定当時NRC委員長であったディアーズ氏は、「もし仮に、日本でb.5.b型の安全強化策を効果的かつタイムリーに実施していれば、福島第一原発発電所の運転員が直面した事態は軽減されていただろうし、とりわけ、SBO並びに炉心及び燃料プールの冷却への対処がなされていただろう」と発言した。

「米国では9.11以降にB.5.bに示された新たな対策が講じられたが、この情報は保安院にとどめられてしまった。

防衛にかかる機微情報に配慮しつつ、必要な部分を電気事業者に伝え、対策を要求していれば、今回の事故は防げた可能性がある」と国会事故調も結論づけている。

B.5.bの多くが地震と津波に襲われた福島第一・第二原発で必要であり、有効だったと記し、B.5.b対策として備えられておくべき装備として、可燃式発電機、消防車、可搬式ポンプ、バッテリー、ケーブル、用具、燃料、防火設備をあげている。(2014年8月米国アカデミーが刊行した『全米の原子力発電所の安全性向上のための福島原発事故の教訓』) 長谷川公一証人は、津波により、第一の砦が破られてしまったとしても、B.5.bを施していれば第二の砦を失うことはなかったと語気を強めた。

「米国でレクチャーを受けた審議官たちは人ごとのように考えていたのではないか、一切口外しないという決定は審議官レベルではできない組織決定で、悪質。機微情報であることを隠れ蓑にして外部に出さないことにした作為的なもの。シビアアクシデント、30分を超える全電源喪失対策をしないで良いという、これまでの方針を覆すことになり、電力会社の抵抗が大きいとの判断がなされたのではないか」

長谷川公一証人は、作為的たった、隠れ蓑にしたと何度も語った。何度も何度も弁護団と面談し、この日の証人尋問に備えた長谷川公一さんは、国側の作為的な尋問にものともせず、丁寧に説明をし、原告側代理人が異議を申し立てる場面も何度もあったが、真摯に対応していた。

国側代理人は、事故当時の細かな事象や時間的経過を質問し、長谷川証人が、原子力の専門家ではないことを印象付けようとしたが、長谷川証人は、冒頭で、社会学はスリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故を契機に、環境社会学が社会の要請で立ち上がり、その専門家であり、多くの文献を書いていると紹介しているのに、しつこく印象操作を行なっていた。また、テロ対策だけに限定するものであったとの主張も繰り返した。

1時間半の口頭弁論後、弁護士会館4階ホールで、報告集会&記者会見が開かれ多くのフリーランスの記者を含め活発な質問が出された。

最後に市民からの質問が許可され、宮城県で脱原発運動をされている方から スマトラ島沖地震(2004年)インドのマドラス原発では非常用海水ポンプが水没して運転不能となり、女川原発に反対するグループは何度も津波対策を取るよう働きかけていたこと、2006年には溢水勉強会も行われていたことなどを話した。とても良い指摘だったと駅までのタクシーをご一緒した樋口英明さんと話した。

この日は長谷川公一さんの証人尋問が目当てで私のように初めてこの訴訟の口頭弁論を傍聴する人が多かったため、多くの原告が傍聴できなかったことは申し訳なかった。その代わりできるだけこの日のことを書かなければと考えている。

帰路の新幹線の中で、 3.11以前は、保安院は原子力委員会と建物も隣、職員の交流も癒着状態にあったのに、このような貴重な情報を共有しなかったとは考えにくい。口頭説明だけだったと言うのもおかしい。二度も呼びつけておいて、ペーパー一枚渡さない訳がない。

東電のとやり取りでもテロ対策上とか機微情報とかの言葉を発するだけですべての情報にベールがされてしまう。対策を一切取らないと決定した際にすべての情報は闇に消されたのではないか。

日本は米国の言いなりに武器、弾薬、戦闘機などを買込むのに、米国から危険性を指摘された原発設備などにはお金を使わないのは何故なのか、国民の安全を守るのではなく、国民を危険に晒すことばかりしている自民党と官僚機構は何なのだろうと考え込んでしまった。

次回は結審、相互の最終弁論が行われる。2026年3月9日(月)14時

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